レシピ追加しておくんだったなぁ
それから僕は、慎重に森の中を探索した。
魔石は、森の中にいる「魔獣」という属性をもつ生物からだけ取得できることが分かった。魔石をもっている生物は、決まって赤い目をしていたので、見分けるのは容易だった。
さらに幸運なことに、これまで見つけた「魔獣」は、僕の手持ちの施設群だけで倒すことができた。空を飛んでいる魔獣は少し手こずったが、獣の肉を使った罠でおびき寄せる方法で、あっさり倒すことができた。
戦いの中で、僕は様々な装置を試した。
まず、防御に関しては「選択式透過型フィルタ」が役に立つことが分かった。
範囲を指定すると、その場所に青白い膜のようなものが出現する。その膜は、指定した物体しか通過できなくなる。つまり、通過できる物体を「空気」だけにしておくと、それ以外のあらゆる物体の侵入を防いでくれる。
僕はこれを「結界」と名付けた。まさしく、結界のイメージそのものだし。
ただし結界は、衝突のダメージを防ぐことができても、衝突したものを跳ね返す力がない。イノシシ型の魔物にぶつかられたときは、その衝撃でふっとばされてしまった。
それに、衝撃が大きすぎると、結界自体が変形してしまうこともわかった。もし、大木が倒れてきたら、結界を張っていても、そのまま押しつぶされてしまうだろう。
結界はそこまで過信はできないものの、森にいる魔獣の攻撃を防ぐには十分だった。これが使えるようになってからは、僕はかなり安全に森の中を勧めるようになった。
食料と水については、すぐに解決した。
「万能調理装置」のゲートを開くことで、ゲートから調理済みの食料を取り出すことができた。水も同様に「水タンク」からいくらでも取り出せた。
ただ、残念なことに「万能調理装置」で取り出せる食事は「味のないパン、味のないスープ、味のないドリンク」だった。
これって・・・
・・・あのとき、料理のレシピ追加しておくんだったなぁ
僕は本気で後悔した。
寝る場所の確保のために、土壁と木の屋根で作った、粗末な小屋も作った。
最初の夜は、特に何も建物を作ることなく、結界に頼ってちょっとした洞窟の中で寝た。すると、翌日に目が覚めたとき、たくさんの虫にたかられていた。
結界の内側に入ってこないものの、大量の虫にわらわらと囲まれるのは、精神衛生上よくない。
というわけで、気休め程度に壁と屋根を作ってみた。小屋の建設自体は、土木作業用の設備をいくつか使うことで、それほど時間をかけずにできた。
ベッドや椅子といった家具は、「家具製作装置」で出すことができた。非常にシンプルかつ種類の選択はほぼできなかったものの、自分でゼロから作ることを考えれば、かなりありがたい。
風呂については、「自動洗浄装置」を自分に使えば、服を着たままで体を綺麗にすることができることが分かった。
最初は風呂桶を作って、水を出して、湯を沸かして・・・なんてことを考えていたのだけど、洗浄装置で一括洗浄できるなら、それでいいやという気分になってしまった。
そんなこんなで、快適とはいえないまでも、安全な住居と食事を確保することができた。魔石集めについても、時間こそかかりそうではあったが、終わりは見えていた。
日を追うごとに、ゲートの使い方にも慣れてきた。四つ使えるゲートを駆使して、効率的に魔獣を狩ることができるようになってきた。
工夫すればするほど、効率が上昇していくという状況は、むしろ最適化ゲーマーとしては非常に楽しい状況でもある。
僕は楽観的になっていた。
ただひとつの点を除いて。
「・・・ここからどうやって帰るんだ?」
◆
魔獣がうろつく森へとやってきて、五日目の朝を迎えた。
僕は、味のないパンをかじりながら、魔石の数を確認する。
手持ちの魔石は45個あった。宇宙船の建造に必要な魔石は100個だ。
このペースなら、遅くとも一週間以内には必要個数が集まるだろう。
それは問題ない。
問題なのは、帰還する方法が分からないことだ。
個々へ来るときは、ゲートを「使用開始」した。ならば、帰るときはゲートを「使用停止」すれば良さそうなものなのだけど、ゲートのメニューにはそんな項目がない。
全部の装置のゲートをすべて閉じてもみた。しかし、宇宙船建造工場のある惑星に戻ることはできなかった。
もともと、ここへ来た時点ですべてのゲートは「閉じた」状態だったのだから、ダメだろうことは予想はしていた。しかし、他に思い当たる方法がない。
「どうしたものか」
僕は思案した。
食事のことを除けば、この世界もそう悪くはない。
ゲートを使ってプチ無双しながら、魔獣を狩るのはむしろ楽しい。
「けどなあ」
突然、行方不明になったら、親が大騒ぎするだろう。
親戚の大家さんにも迷惑をかけそうだ。
あの納屋の状態も気になる。
何も知らない人が、「こちら」へ入り込んでしまったら、どうなるだろう。僕のようにうまく生き延びることができない可能性が高い。
僕の脳裏には、僕のことをちゃん付けで呼ぶ「はとこ」の姿が浮かんでいた。
もし、あいつが迷い込んでしまったら・・・
僕はブンブンと頭を振る。
やっぱり、あちらの世界に戻る必要がある。彼女がうっかり入ってこないようにするためにも。
「山の向こうへ行ってみるか」
今日は、少し遠くに見えている山へいってみることにした。
この森は、起伏が少なく見通しが悪い。山に登って遠くを見ることができれば、新たな手掛かりが得られる可能性がある。
空を飛ぶ方法でもあればいいのだけど、残念ながら手持ちの「施設」の中に、そんな機能をもつものはなかった。
環境探査機を使えば、離れた場所の情報を得ることができる。しかし、その方法で探査できるのは、自分を中心に100m程度の範囲で、それ以上遠くには「ゲート」を設置できなかった。
「はあ」
・・・移動速度アップの装置とかあればなぁ
アルケインステラの惑星上では、移動用の車両やドローンが使えた。しかし、ゲートを通しtえその手の装備を呼び出すことはできない。
結局、遠い場所の情報を得るためには、地道に歩いて移動していくしかない。僕は、足場の悪い森の中を、山を目指して進んでいった。




