操作パネルは開くのか
僕はどうにか落ち着きを取り戻すと、改めて周囲を見回す。
「操作パネルは開くのか」
目の前に開いた、見慣れたゲームのメニューをみて、少しだけ安堵感が増すのを感じた。
ということは、ゲームの中なのか?
でも、僕が降り立った惑星には、こんなに木がびっしりと生えている森はなかった。
「地図は無い、と」
アルケインステラでは、宇宙飛行士の位置を中心としたミニマップが表示される。
操作パネル上にミニマップの領域自体は存在しているのだけど、地図情報は表示されていない。ただ、ミニマップに相当する場所には、灰色に塗りつぶされた円があるだけだ。
アイテムリストを開いてみる。
そこには、アイテムが一つだけあった。
「ゲートだけかよ」
大量に作ったはずのアイテムや建築資材などは、きれいさっぱり消えている。
仕方なく、ゲートのメニューをひらいてみた。
すると、そこには「接続されたゲートがありません」と表示されていた。そして、パネルの中には「接続を追加」というボタンがある。
「押してみるしかないじゃないか」
何者かに誘導されているようで嫌な気はしたが、他に選択肢があるわけでもない。僕は「接続を追加」ボタンを押す。
すると、ずらりとリストが表示された。
「火炎放射器、瞬間冷却装置、高速移動ブースター、環境探査装置・・・」
出てきた項目は「アルケインステラでは機能しません」と書かれていた施設ばかりだった。
これは、魔石の入手方法を調べているときに、もしかしてと思って、実装されていた施設を一通り作成した施設だ。説明書通り、ゲーム内では何の機能も使えず、完全な観賞用オブジェとなっていた。それに、施設はアルケインステラの惑星の表面に設置されている。だから、今いる謎の森からでは操作することができない。
できないはずだけど・・・
こいつらが使えるってことか?
試しに「火炎放射器」に「接続」してみる。するとゲートの接続リストに「火炎放射器」が追加された。炎の温度、距離、縦横幅といった項目が細かく設定できるようになった。
よく分からないので、適当に設定してみる。
「む?」
設定している間に、右側に「ゲート解放」という小さいボタンがあることに気が付いた。
とりあえず押してみる。
「ゲートの位置と方向を指定してください」
エラーメッセージが表示された。
位置と方向?
設定できる項目の中には、そんな項目はなかったような・・・
しばらく試行錯誤した結果、操作パネルのミニマップ上で、ゲートの位置と方向を設定できることがわかった。ひとまず、ゲートの位置を自分から少し離れた場所に設定してみる。
ふたたび「ゲート解放」を押す。
ブオオオオオッ
「うわ!?」
突如として、目の前に炎が吹き出した。その炎が周囲の草や木に燃え移り、たちまち燃え広がる。
これはヤバイ!
あわててゲートのリストを開く。
「瞬間冷却装置」のゲートを配置して「解放」する。
シュワーーーーッ!
冷気が広がって、火はまたたく間に消えた。
「これは・・・」
僕はリストを見直した。
試しに「環境探査装置」のゲートを目の前に配置して「解放」する。。
「思った通りだ」
ミニマップに地図が表示されるようになった。おおまかな地形と障害物が表示されただけだったが、それでも何も表示されないよりずっと良い。
「環境探査装置」は、ゲーム内で複数作っておいたせいか、火炎放射器とは違って、ゲートを複数開くこともできた。二個目のゲートを「解放」すると、思った通り地図の表示される範囲が広がった。
・・・これは使えるな
しかし、「環境探査装置」のゲートをあるだけ開こうとしたとき、エラーが表示された。
「同時に開くことができるゲート数の上限に達しました」
なんだとー!
上限とかあるのか。
解放できるゲートの数は、その修理に関係なく最大で四つということが分かった。
ただし、設置の操作自体はできるようになっていた。おそらく、何らかの方法で上限を増やせるのだろう。
「ん?」
ミニマップに、赤い点の表示が現れた。僕の前方、およそ20mといったところか。ゆっくりではあったが、少しずつこちらへ進んでいる。
僕は環境探査装置の表示を、マップから映像に切り替えた。
「これは・・・モンスター?」
表示されたのは、二本の曲がった角が生えた兎だった。大きさも、大人のイノシシくらいはある。どう見ても、地球にいる生物ではない。
・・・どうする?
火炎放射器で攻撃してみるか?
いや、森の中で火を使うのはリスクが大きい。
じゃあ、瞬間冷凍装置を使うか?
使ってみた感じでは、冷気で覆える範囲が狭かった。十分な効果を出すためには、近づく必要がありそうだ。
こちらの防御力は、限りなくゼロに近い。接近戦はリスクが高すぎる。できれば、銃器で遠くから狙い撃ちにしたいところだ。
大量の施設リストをすばやくチェックする。
「これはどうだ」
僕はリストから「岩石射出機」を選び、ゲートを設置した。威力を調整して、試しに「解放」してみる。
ズガン!!
大きな音がして、木の幹に大穴があいた。
・・・これは期待できそうだ
僕は、モンスターらしき生物から死角になる位置へとすばやく移動する。環境探査装置をモンスターを追尾するモードに設定して、岩石射出機のゲートの位置と方向を微調整する。岩石射出機にも環境探査装置のゲートを貼り付けて、カメラを通して狙いを付けられるようにしてみた。
さながら、プレイヤー同士で銃で打ち合うFPSゲームのようだ。
ズガン!
角付き兎の東部に、こぶし大の岩がかなりの速度で命中した。兎はそのままバタリと倒れ、動かなくなった。
「倒せたのか?」
施設リストから「物体解析装置」を選んでゲートを設置する。兎を対象に指定して「解放」する。
何も起こらない。
次に「生物解析装置」を使ってみる。すると「ディアラビット」という名前と、体重、体長などの情報に加え、「気絶」というステータスが表示された。
さらにその下に、気になる表記が見える。
「属性:魔獣。人間を見境なく襲う」
・・・ヤバイ!
僕はすばやくメニュ-から「杭打機」を選んだ。
ズガン!!
兎の心臓付近を撃ち抜く。
「・・・」
ステータスが「死亡」になったことを確認した。
僕は額の汗を拭う。
自覚はしていなかったが、どうやら僕は緊張していたらしい。
ディアラビットが死亡の状態になった直後、「物体解析装置」のモニタにも上表が表示されるようになった。そこには、さきほど生体解析装置で表示されていた情報に加えて、解体によって取得できるアイテムの一覧が表示されていた。
「これは!」
僕はそのリストの中に、ひとつのアイテムを見つけた。
「魔石」
・・・よっしゃ!
そうか、そういうことか。
僕は小躍りした。
ゲームクリアへの道が、見えてきたからだ。




