【第二章】第八部分
「いつまでそんなことをやってるんでちゅ?」
「あ~、この体の湯加減、生き返るわ~!」
「温泉じゃないんでちゅ!みみは魔界に落ちた鍵たんをたくさん苦しめたかったでちゅが、美味しいものはとっておくという考えたちゅ。だから鍵たんをそのままにしておいたでちゅ。てか、こき使うために、みみの専属メイドにして、身の回りの世話をさせていたでちゅ。お世話してもらうのに、男ならこわいけど、男の娘なら大丈夫なのでちゅ。」
そこまでは穏やかだったミニスカロリスの表情に黒い雲が差してきた。
「鍵たんは女子にしただけでは全然足りなくて、その精神を滅ぼしたでちゅ。」
「精神を滅ぼしたですって⁉冗談じゃないわよ。元に戻しなさいよ。どうしてそんなひどいことをしたのよ?」
「それを言わせたいのでちゅか。いいでちゅ。別に話したかと言って減るものじゃなし。むしろ、みみの怒りを蘇らせて増幅させるだけでちゅから。真の悪にみみの両親は殺されたでちゅ。殺したのは警察官だったでちゅ。親は夫婦で刑務官でしたでちゅ。みみという名前は、パパの『ミツル』とママの『つぼみ』から取ったでちゅ。両親は、犯罪者に対しても、性善説を取っていたでちゅ。元犯罪者の男は、両親が更生を手伝い、警察官にしてやったでちゅ。その頃、まあくんと普通の悪の区別はなく、その男は両親に感謝していたが、まあくんが発現し、両親を殺したでちゅ。その事件は警察官がやったということで迷宮入りという揉み消し工作が行われて、その男は助かり、その後反省して義賊やくざ黒霧組を作ったでちゅ。それが鍵たんの父親でちゅ。その父親はとある巨大やくざに殺されたでちゅ。人を殺してしまい、まあくんとしての魔界ではなく、地獄行きとなったのでちゅ。だからみみは両親の敵の息子、今は性別上娘でちゅが、鍵たんを憎んでいるでちゅ。みみの心はひび割れて深い傷の道となり、そこに苦しみの砂利が撒かれて、歩くたびに、痛みが走るのでちゅ。」
「なんですって。鍵とミニスカロリスにそんな過去があっただなんて、にわかには信じがたいわ。でも鍵のお父さんが本当に、ミニスカロリスの両親を殺めたとしても、鍵に罪はないわ。それに鍵の父親は巨大やくざに殺されたのよ。まあくん制裁をやくざがやるって、おかしいんじゃないの?」
「おかしくはないでちゅ。でもそれ以上の説明は不要でちゅ。なぜなら、凪河たんは、ここから人間界に戻る可能性はゼロだからでちゅ。みみは、すごい恨みパワーを持っていて、それを魔法に変えることができるのでちゅ。法則魔法をあるお姉さんに授けてもらったんでちゅ。その法則とは、『インフレーション理論』でちゅ!」
その言葉が発せられた途端に、ミニスカロリスが急激に膨張し、Tの字のような形となっていった。
「こ、これは巨大ピストル?人間が入れそうな大きさだわ。」
「これに当たればひとたまりもないでちゅ!」
「ミニスカロリスの声は聞こえるけど、姿が見えなくなったわ!」
『ダ~ン!』
ピストルから轟音が唸り、黒い物体が壁に大きな穴を開けた。
「危ないわ。アレに撃たれたら激ヤバだわ。ねえ、お人形!さっきから黙ってるけど、アタシはどうしたらいいの?ねえ、ねえったら!」
「どなたと話してるのか、わかりまちぇんけど、外界とは通信が遮断されてるでちゅ。ここは魔界。しかもまあくんを閉じ込めている場所でちゅ。外部からの通信など、到底できませんでちゅ。」
姿はないが、声だけがだだっ広い空間に通っている。




