【第二章】第七部分
「いいところに気がついたでちゅ。まあくんには魔界に落ちた時、つまりジャッジメントされた時に、体のいちばん弱いところにキズがつくでちゅ。魔界、つまりこの警察署ではまあくんの弱点を知ることで、拘束状態を確保しているのでちゅ。」
「そんなことを、アタシに教えちゃっていいの?」
「弱点は目で見えません、戦いながら、探すのは不可能でちゅ。偶然を狙って攻撃してたら、この人数を倒す前に、猫柳たんが体力を失って倒れてしまうでちゅ。」
「なんとか、呪文を唱えられたら。」
凪河は口を開けようとすると、その都度、口を押さえられて、もごもごするだけである。
凪河とメイドたちとのバトルは果てしなく続いていた。凪河はすでに体力の大半を使い切り、さらに口を押さえられていることで、酸欠状態であり、今にも倒れる寸前であった。「もうこれで終わりでちゅね。」
余裕綽々のミニスカロリスであったが、表情が曇ってきた。
「不思議だけど、メイドの数が減ってきたわ。」
凪河が気づいた時、メイドはひとりになっていた。そのメイドも凪河に背中を突かれて、突っ伏した。
「魔法を使ってないのに、どうして、ゲームオーバーになっちゃったの?」
ミニスカロリスは、横たわるメイドたちの体を調べていた。
「ジャッジメントされた時のキズを突かれてるでちゅ。」
「アタシは魔法を使ってないわよ。」
「いや、猫柳たんは魔法の力でまあくんたちを倒してくれたでちゅ。」
「いったいどういうこと?」
「凪河たんは、確かに不確定性の声を出せてはなかったでちゅ。でも何度も呪文を小さく唱えていたでちゅ。断片的に声に出したものを全部足すと不確定性の原理!という言葉になっていたでちゅ。魔法はからだに作用して、オートモードで弱点を突いていたでちゅ!」
「ということはアタシが百人に勝ったということなの?」
「悔しいけど、そういうことでちゅ。」
「でもさっきの百人の中には鍵はいなかったわ。アタシは毎日、鍵の腕を引っ張ってるんだから、触れば本人かどうか、わかるわ。」
「あのバトルの中で、全員の体を触って確認するとは意外にも油断ならないでちゅ。でも鍵たんに、やってることは、ほとんどストーカー状態でちゅ。」
「べ、別に罪を犯してるという認識はないわよ。」
「わかったでちゅ。では、鍵たん本人のご登場でちゅ。」
部屋の暗い奥から、ゆっくりと出てきたのは、他のまあくんと違い、赤と白の囚人メイド服。
ミニスカロリスは鍵を全力で蹴飛ばした。しかし赤白メイドは何も言わない。
「鍵、鍵なの?女の子になってしまったの?」
やはり赤白メイドは沈黙したままである。
「どこから見ても女の子そのものだけど。特に大きな胸とか、ふくよかなお尻とか、見ごたえあるくびれとか。それにメイド服がよく似合ってるわ。悔しいけど、アタシより外見女子力が高そうだわ。とても鍵には見えない。でもアタシにはわかるわ。こうすればねっ!」
凪河は、赤白メイド服にダッシュして、いきなり抱きついた。
「本当は手を握るだけでわかるんだけど、今はこうしたいのよ。鍵は無言でも、こうされたいって言ってるわ。アタシにはわかるのよ。」
凪河はしばしハグしていた。
ミニスカロリスはふたりを呆然と眺めていた。




