【第一章】第三十一部分
「わかりました。質量保存の法則!」
「こんなところで魔法使うの?」
「はい。私の魔法は万能なのです。記憶を映像化もできるのです。」
壊れた公民館の壁に映像が投影された。
ゾウさん滑り台の公園が映った。映像は憂果莉目線である。音声はないが、その目線には鍵しか映っていない。憂果莉の腕らしきものが映って、その先の鍵が消えていった。
「ま、まさか、本当に会長がやっただなんて。」
凪河は膝から崩れて、四つん這いで暗い地面を見つめている。
(ナギナギ、大丈夫か?ソイツが犯人ならば、今ここで始末してもよいのじゃぞ。)
凪河はお人形の問いかけに答えず、沈黙したままである。
「会長、自分の背中のキズを見せた以上、そこをどう攻めても文句を言わせないわよ!」
「他人の自由を奪う権利はないです。」
「罪の重さは地球よりは軽いけど、夏休みの宿題よりは重いわよ。」
「でもそれだと、ちょっと軽過ぎないですか。」
「た、助けてくれたから三割引きよ。」
「地球、ずいぶん軽いです。」
「今日は遅いからテントで寝るわよ。」
こうしてふたりで一緒に泊まることになった。
「べ、別に助けてほしいとかお願いしてないから、お礼なんて言わないんだから。そもそも会長の『鍵魔界落とし疑惑の積乱雲』はもうもうとしているんだから。で、でも暑くて熱中症になったら恨みを晴らせないから、これを飲んで延命しておいてね。」
凪河はぬるくなったジュースを憂果莉に渡した。
テントを張って、その中で向かい合っているふたり。しかし、目を合わせてはおらず、狭い空間に、重たい空気が淀んでいた。ふたりとも学校のエンジのジャージ姿である。
「今夜、一緒でいいんです?」
「いいわよ。でもアタシが寝首をかいても知らないわよ。」
「どうぞ。大いびきもかいて結構です。犯人の首ですから、好きになさってください。遅刻摘発の恨みを晴らすのもいいです。」
「なによ、それ。会長、アタシにウソついてるんじゃないの。」
「画像を見た通りです。」
「もういいわ。寝るわよ。」
テント内に、寝袋がふたつ並んだ。眠っている凪河を見つめる憂果莉。その目は血走っている。憂果莉は少し震えながら、両手を凪河の首に近づけて、ゆっくりと掴み、力を込めた。




