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廃人ゲーマーのダンジョン攻略記 ~やり込みすぎたら最強になっていた~  作者: 庵


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第17話 第一階層突破

ご覧いただき、ありがとうございます!


少しずつ積み重ねていく成長と、やり込みならではの攻略の面白さを楽しんでいただければ幸いです。


今回もよろしくお願いします!


 《青葉洞窟》第一階層。


 一ノ瀬湊は、第二階層へ続く下り坂の前に立っていた。


「……よし。今日はここを突破するぞ」


 現在のレベルは4。


 これまでに二十六匹の魔物を討伐し、スライムだけでなく、動きの速い岩鼠にも対応できるようになってきた。


 とはいえ、まだ初心者であることに変わりはない。


 湊は短槍を握り直し、慎重に坂を下り始めた。


 足元には細かな石が散らばっている。無理に走れば、転倒する危険があった。


「……戦うなら、平らな場所に誘導したいな」


 そう呟いた直後だった。


 カリッ。


 坂の下から、聞き覚えのある音が響いた。


 湊は足を止める。


 薄暗い通路の先に、小さな赤い光が二つ見えた。


「……岩鼠か」


 灰色の魔物が一匹、地面を這っている。


 だが、湊が注目したのは、そのさらに奥だった。


 もう一匹いる。


「……二匹同時か。嫌な場所にいるな」


 岩鼠は一匹でも厄介な相手だ。


 まして、足場の悪い坂道で二匹を相手にすれば、回避する余裕がなくなる。


 湊は岩陰へ身を寄せ、二匹の動きを観察した。


 手前の岩鼠は通路を行き来しているが、奥の個体はほとんど動かない。


「……だったら、手前の一匹を引っ張るか」


 湊は小石を拾い、近くの地面へ軽く投げた。


 乾いた音が響く。


 手前の岩鼠が顔を上げた。


 しかし、奥の個体も同時にこちらを向いた。


「……あ」


 二匹の赤い目が、湊を捉える。


 次の瞬間、手前の岩鼠が走り出した。


「……失敗した!」


 湊はすぐに坂を駆け上がった。


 予定していた誘導とは違う。


 だが、ここで慌てて戦う方が危険だった。



     ◇



 坂の上まで戻ると、湊は振り返った。


 一匹目の岩鼠が追ってきている。


 その後ろには、二匹目の姿もあった。


「……両方来たか!」


 湊は短槍を構えた。


 戦うか、撤退するか。


 一瞬だけ迷ったが、背後には来た道が続いている。距離を取りながら逃げることはできそうだった。


 湊は無理に踏み込まず、後退を続けた。


 すると、二匹の距離が少しずつ開き始めた。


「……ん?」


 先頭の岩鼠は素早く接近してくるが、後ろの個体は途中で立ち止まり、辺りを警戒している。


 湊はその違いを見逃さなかった。


「……これなら!」


 先頭の岩鼠が飛びかかってきた。


 湊は槍を低く構え、相手の進路を塞ぐ。


 岩鼠は右側へ回り込もうとした。


 その瞬間、湊は半歩だけ横へ移動する。


 岩鼠の進路には、壁から突き出した大きな岩があった。


 急停止した魔物の横腹へ、短槍を突き出す。


「……そこだ!」


 硬い手応え。


 岩鼠が甲高い声を上げ、地面へ転がった。


 しかし、まだ動いている。


 湊は槍を引き戻し、追撃を狙った。


 そのとき。


 カリッ!


「……っ!」


 二匹目の岩鼠が迫っていた。


 湊は攻撃を中断し、大きく後退した。


 直後、灰色の影が目の前を横切る。


「危なっ……!」


 あと少し反応が遅れていれば、脚を噛まれていただろう。


 湊は二匹の位置を確認した。


 一匹目は負傷して動きが鈍い。


 だが、二匹目は無傷だった。


「……やっぱり、二匹同時はきついな」


 湊は歯を食いしばった。


 今までの戦闘では、一対一に持ち込むことを徹底してきた。


 しかし、これから先も毎回うまく誘導できるとは限らない。


 複数の敵に遭遇したとき、どうやって生き残るか。


 それも、身につけなければならない技術だった。



     ◇



 湊は後退しながら、二匹の動きを見続けた。


 無傷の岩鼠が先に突進してくる。


 負傷した個体は、少し遅れて動き始めた。


「……よし」


 湊は無傷の岩鼠を引きつけ、横へ回避した。


 すぐに槍を突き出したくなる。


 だが、今は我慢する。


 もう一匹が近づいていたからだ。


 負傷した岩鼠が、低い姿勢で飛び込んでくる。


「……こっちだ!」


 湊は槍の柄を下げ、相手の進路を塞いだ。


 岩鼠が柄にぶつかり、一瞬だけ動きを止める。


 その隙に湊は槍を引き、胴体へ突き込んだ。


 岩鼠が地面に倒れ、動かなくなる。


「……一匹!」


 湊はすぐに振り返った。


 残る岩鼠は、すでにこちらへ向かっている。


 今度は一対一。


 それなら、落ち着いて対処できる。


 湊は槍を構え、相手が近づくのを待った。


 岩鼠が地面を蹴る。


 穂先を避けるため、左へ跳ぶ。


「……読めてる!」


 湊は踏み込みを抑え、相手が着地する位置へ槍を向けた。


 岩鼠が着地する。


 その瞬間、湊は短槍を突き出した。


 穂先が胴体を捉える。


 岩鼠は激しく身をよじったが、やがて動かなくなった。


「……はあっ、はあっ……」


 湊はその場で呼吸を整えた。


 腕が重い。


 背中には、冷たい汗が流れていた。


「……勝てた」


 二匹同時の戦闘。


 決して余裕のある勝利ではなかった。


 むしろ、最初の誘導に失敗した時点で、素直に撤退する方が安全だったかもしれない。


「……反省点だらけだな」


 それでも、最後まで周囲を見て戦えた。


 一匹を倒すことだけに集中せず、もう一匹の動きを警戒できた。


 今までの経験が、確実に役立っている。


 湊は小さく笑った。


「……よし。次はもっと上手くやろう」



     ◇



 十分に休憩を取った後、湊は再び下り坂へ向かった。


 坂の先には、先ほどの二匹以外に魔物の姿はない。


 湊は慎重に足を進めた。


 やがて、通路の先が大きく開ける。


「……おお」


 そこには、円形の小さな広間があった。


 中央には下へ続く石造りの階段があり、壁には青白い鉱物が並んでいる。


 湊はスマートフォンの地図を確認した。


 表示されているのは、第一階層の終端。


 第二階層への連絡地点だった。


「……ついに着いたか」


 湊は階段の手前まで歩き、下を覗き込んだ。


 奥は暗く、どこまで続いているのか分からない。


 階段の向こうには、まだ戦ったことのない魔物や、新しい地形が待っているのだろう。


「……行ってみたいな」


 湊は思わず一歩踏み出しかけた。


 だが、そこで足を止める。


 先ほどの戦闘で、体には疲労が残っている。


 【疲労回復】を使えば多少は楽になるだろうが、万全の状態に戻るわけではない。


 何より、第二階層の敵が今の自分に通用するか分からなかった。


「……今日は確認だけだな」


 湊は階段の位置を記録し、引き返すことにした。


 帰り道でも魔物と遭遇する可能性がある以上、体力は残しておかなければならない。


 階段の手前で、もう一度だけ振り返る。


「……次は、あそこからだ」


 湊は楽しそうに笑った。



     ◇



 無事に地上へ戻った湊は、管理施設で帰還手続きを済ませた。


 近くのベンチに腰を下ろし、今日の戦闘記録をまとめる。


『岩鼠二匹討伐』


『複数戦闘では、攻撃よりも敵の位置確認を優先』


『第一階層終端・第二階層への階段を確認』


 続けてステータスを開いた。


【個人情報】


名前:一ノ瀬 湊

レベル:4


保有スキル

【疲労回復】Lv.1


「……まだレベル4か」


 今日の討伐数は二匹。


 レベルアップには届かなかったが、新しい経験を得られた。


 それだけでも十分な成果だ。


 湊はノートを閉じ、空を見上げた。


 第一階層の正規ルートは、ひとまず終端まで確認できた。


 ただし、これですべてを攻略したわけではない。


 最初の分岐にある不思議な岩壁。


 まだ調べていない細かな通路。


 そして、倒していない魔物もいるかもしれない。


「……まあ、全部回収するのはこれからだな」


 湊は立ち上がった。


 目の前には、第二階層という新しい目標がある。


 今の実力でどこまで通用するのか。


 次はどんな敵と戦えるのか。


 考えるだけで、胸が高鳴る。


「……まずは、もっと強くならないとな」


 湊は短槍を肩に担ぎ、小さく笑った。


 第一階層の突破は、あくまで通過点。


 五階層ある《青葉洞窟》の攻略は、まだ始まったばかりだった。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!


皆さまに楽しんでいただける物語を目指して、これからも丁寧に書き続けていきます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!


次回もぜひよろしくお願いします!

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