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廃人ゲーマーのダンジョン攻略記 ~やり込みすぎたら最強になっていた~  作者: 庵


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第16話 積み重なる経験値

ご覧いただき、ありがとうございます!


少しずつ積み重ねていく成長と、やり込みならではの攻略の面白さを楽しんでいただければ幸いです。


今回もよろしくお願いします!


 同じ敵を何度も倒す。


 ゲームなら、それだけでレベルは上がっていく。


 だが、現実のダンジョンでは少し事情が違った。


「……まずは、怪我をしないことだな」


 土曜日の朝。


 一ノ瀬湊は《青葉洞窟》の第一階層で、短槍の穂先を確認していた。


 現在のレベルは3。


 これまでに討伐した魔物は、合計二十匹。そのほとんどがスライムで、岩鼠との戦闘経験はまだ三回しかない。


 先週見つけた狩り場なら、両方の魔物と戦える。


 今日はそこで経験を積み、レベル4を目指すつもりだった。


「……さて、何匹で上がるかな」


 湊はノートを閉じ、奥へ歩き始めた。



     ◇



 最初に遭遇したのは、いつものスライムだった。


 湊は周囲を確認すると、足場の平らな場所まで相手を誘導した。


 スライムの体が沈み込む。


 跳躍。


 湊は半歩だけ横へ移動した。


 着地した瞬間、短槍を突き出す。


 硬い塊を砕き、一匹目の討伐に成功した。


「……よし」


 以前のような大きな回避は必要なかった。


 相手の跳躍距離を見て、必要な分だけ動く。踏み込みも最小限に抑えれば、攻撃後の姿勢を保ちやすい。


 湊は討伐にかかった時間を記録した。


 続く二匹目も、一度の攻撃で倒せた。


「……いい感じだな」


 だが、三匹目では少し手間取った。


 狙った硬い塊が体内で動き、最初の突きが外れたのだ。


 湊は慌てず距離を取り直し、二度目の跳躍を避けてから討伐した。


「……油断すると、こうなるか」


 慣れてきたからこそ、雑になってはいけない。


 湊は槍を引き戻し、周囲を見渡した。


 目標は討伐数を増やすことだが、それ以上に重要なのは、次も戦える状態を保つことだった。



     ◇



 広間の奥で、岩鼠を一匹発見した。


 湊はすぐに近づかず、相手の動きを観察した。


 灰色の体が岩の上を走り回っている。


 前回は突進を槍で迎え撃ったが、個体によって回り込む方向が異なり、何度も危険な場面があった。


「……今日は、そこを改善したいな」


 湊は通路へ続く場所まで移動した。


 左右には岩壁があり、広間よりも回り込まれにくい。


 ただし、背後には十分な退路を残してある。


 岩鼠がこちらに気づいた。


 赤い目が湊を捉え、地面を蹴る。


「……来い!」


 湊は槍を低く構えた。


 岩鼠は穂先を避けようと、左へ動く。


 その進路に合わせ、湊は槍をわずかに向け直した。


 岩鼠が急停止する。


「……今!」


 湊は突き出そうとして、踏みとどまった。


 相手は止まっただけだ。


 攻撃すれば、そこから再び方向を変えるかもしれない。


 次の瞬間、岩鼠は右へ跳んだ。


 湊はそれを確認してから、短槍を突き出した。


 穂先が胴体を捉える。


 岩鼠が甲高い声を上げ、地面へ落ちた。


 それでも、まだ動いている。


「……倒し切れてない!」


 湊は無理に追撃せず、一歩後退した。


 岩鼠は体勢を立て直そうとするが、先ほどより動きが鈍い。


 湊は間合いを確認し、再び槍を突き込んだ。


 今度こそ、岩鼠は動かなくなった。


「……ふうっ」


 湊は大きく息を吐いた。


 これで今日四匹目。


 岩鼠との戦闘にも、少しずつ余裕が生まれている。


「……前より、相手をよく見られるようになったな」


 以前は突進してくるだけで精いっぱいだった。


 だが今は、攻撃の途中で無理に仕掛けず、相手の動きを待つ判断ができる。


 その変化が、何より嬉しかった。



     ◇



 休憩を終えた湊は、再び探索を始めた。


 十分に水分を取り、腕や脚の状態も確認している。


 今日はまだ【疲労回復】を使っていない。


 スキルを使うのは、もう少し疲労が溜まってからにするつもりだった。


「……いたな」


 通路の先に、岩鼠がもう一匹いた。


 ただし、今度は足場が悪い。


 地面には小石が散らばり、右側には段差もある。


「……ここで戦うのは嫌だな」


 湊は慎重に後退し、平らな場所まで誘導しようとした。


 しかし、岩鼠は途中で立ち止まった。


 鼻先を地面へ近づけ、何かを警戒するように動いている。


「……追ってこないのか?」


 湊は無理に接近しなかった。


 しばらく待ったが、岩鼠はその場を離れない。


「……じゃあ、今回は見送りだな」


 湊は引き返した。


 経験値が欲しくても、危険な場所で戦う必要はない。


 安全に倒せる相手を探す。


 それも、効率的なレベル上げの一つだった。


 別の通路へ移動すると、スライムを二匹発見した。


 まず一匹だけを誘導して討伐。


 もう一匹も距離を取って戦い、着地後の隙を狙って倒した。


 その瞬間だった。


【レベルアップ】


レベル:3 → 4


「……おおっ!」


 湊は思わず声を上げた。


「……よし! レベル4!」


 今日の討伐数は六匹。


 累計では二十六匹となった。


 湊は嬉しそうにステータスを開いた。


【個人情報】


名前:一ノ瀬 湊

レベル:4


保有スキル

【疲労回復】Lv.1


 確かに、レベルが一つ上がっている。


「……順調、順調!」


 湊は満足そうに頷いた。


 強くなった実感は、まだそれほど大きくない。


 だが、何度も戦闘を繰り返すうちに、以前なら慌てていた場面でも落ち着いて対応できるようになっていた。


 レベルと技術。


 その両方が、少しずつ積み重なっている。



     ◇



 帰還する前に、湊は広間の奥へ続く通路を確認することにした。


 まだ探索予定の時刻までは余裕があり、体調にも大きな問題はない。


 もちろん、未知の敵と無理に戦うつもりはなかった。


 短槍を構え、慎重に進む。


 しばらくすると、通路が下り坂へ変わった。


「……ん?」


 湊は足を止め、公式地図を確認した。


 この先には、第一階層の終端へ向かう通路があるらしい。


 さらに進めば、第二階層への階段にたどり着く。


「……なるほど。もうそこまで来てるのか」


 湊は少しだけ目を輝かせた。


 ただし、階段までの途中には、まだ確認していない区間が残っている。


 そこで、奥から小さな物音が響いた。


 カリ、カリッ。


 岩鼠のものによく似た音だった。


 しかし、一匹だけとは限らない。


「……今日はここまでだな」


 湊は引き返すことにした。


 レベルも上がった。


 戦闘経験も積めた。


 そして、次に進むべき場所も確認できた。


 これ以上欲張る理由はなかった。


 安全な通路まで戻ったところで、湊は【疲労回復】を発動した。


 脚に残っていた重さが、少しだけ和らぐ。


「……よし。帰ろう」


 湊はノートを開き、今日の成果を書き込んだ。


『討伐数:六匹』


『レベル:4』


『新たな目標:第一階層の終端を確認する』


 書き終えると、自然と笑みが浮かんだ。


 まだ第一階層すら突破していない。


 それでも、最初の頃とは比べものにならないほど、多くのことができるようになっている。


「……次は、第二階層を目指すか」


 湊は短槍を握り直した。


 もちろん、すぐに進めるとは限らない。


 今の自分では勝てない敵がいるかもしれないし、装備を見直す必要もあるだろう。


 それなら、また鍛えればいい。


 一匹ずつ倒し、経験を積み、足りないものを埋めていく。


 湊にとって、その繰り返しこそが何より楽しかった。


「……まだまだ、やり込み足りないな」


 誰もいない通路に、楽しそうな声が響いた。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!


皆さまに楽しんでいただける物語を目指して、これからも丁寧に書き続けていきます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!


次回もぜひよろしくお願いします!

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