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廃人ゲーマーのダンジョン攻略記 ~やり込みすぎたら最強になっていた~  作者: 庵


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13/21

第13話 効率的なレベル上げ


 強くなるためには、経験値を稼ぐ必要がある。


 だが、ただ魔物を倒し続ければいいというわけではない。


 月曜日の放課後、一ノ瀬湊は自室の机で、これまでの戦闘記録を見返していた。


 昨日の探索では三匹のスライムを討伐し、第一階層の広間まで進むことができた。あの後は無理に戦闘を続けず、帰還手続きを済ませている。


「……一匹倒すのに、時間を使いすぎてるな」


 ノートには、戦闘ごとの気づきが記されていた。


 最初の一匹は、跳躍を避けてから一撃で討伐。


 二匹目は広間から誘導して討伐。


 しかし、相手の動きを観察する時間や、戦闘後に周囲を確認する時間を含めると、一匹あたりの所要時間は意外に長かった。


 もちろん、安全確認を省くつもりはない。


 湊が短縮したいのは、無駄な動きの方だった。


「……敵を探して歩き回るのも、結構疲れるんだよな」


 第一階層の地図を開き、昨日訪れた広間に印をつける。


 あそこには複数のスライムがいた。通路も広く、一匹ずつ誘導するための距離を確保できる。


 反対に、狭い通路では回避できる方向が限られ、足場にも注意しなければならない。


「……戦う場所を選ぶだけでも、かなり違いそうだ」


 湊はノートに次の方針を書き込んだ。


『広い場所で一対一に持ち込む』


『攻撃回数を減らす』


『疲れる前に休憩する』


 やること自体は単純だった。


 だが、その単純なことを徹底できるかどうかが、長時間の探索では重要になる。


「……よし。次はこれを試そう」


 湊はノートを閉じた。


 今週の目標が、一つ決まった。



     ◇



 次の土曜日。


 湊は《青葉洞窟》の第一階層を進んでいた。


 装備は以前と同じ初心者用の短槍と軽量防具。平日の練習では足運びを中心に鍛え、攻撃後にすぐ後退する動作を繰り返してきた。


「……まずは、あの広間だな」


 最初の分岐を左へ進み、以前発見した広い空間へ向かう。


 途中で一匹のスライムを見つけたが、周囲の足場が悪かったため、その場で戦うことは避けた。


 少し後退し、比較的平らな場所まで相手を誘導する。


 スライムが体を縮めた。


「来い!」


 跳躍を横へ避け、着地した相手へ槍を突き出す。


 穂先が内部の硬い部分を貫いた。


 一撃で討伐。


「……よし。一匹目」


 湊はすぐに周囲を確認した。


 敵の攻撃を待つ時間は変わらない。それでも、最初から戦いやすい場所を選んだおかげで、余計な後退や立て直しが必要なかった。


「……これなら、少し楽だな」


 湊は呼吸を整え、先へ進んだ。



     ◇



 広間には、今日も二匹のスライムがいた。


 片方は中央付近を移動し、もう片方は奥の壁際にいる。


「……ちょうどいいな」


 湊は入口近くの岩陰で様子をうかがった。


 まず、手前の一匹がこちらへ近づくのを待つ。


 十分に距離が開いたところで姿を見せ、相手の注意を引いた。


 スライムが向きを変える。


 湊は急がず、入口へ向かって後退した。


「……よし。そのまま」


 広間から少し離れた位置まで誘導できたところで、槍を構える。


 跳躍を回避。


 着地後の隙を狙って突く。


 硬い塊が砕け、二匹目の討伐に成功した。


「……順調だな」


 湊は短く息を吐いた。


 以前なら、魔物を見つけた瞬間に緊張していた。


 今でも怖さが消えたわけではない。だが、何を確認し、どの距離で戦うべきかが少しずつ分かってきている。


 湊は残る一匹の位置を確認し、再び誘導を試みた。


 ところが、今度は思いどおりにいかなかった。


 相手が予想より早く接近し、通路へ入る前に体を縮めたのだ。


「……っ!」


 湊は横へ跳んだ。


 スライムが岩の近くへ着地する。


 槍を突き出そうとしたが、足元に石が転がっていることに気づき、攻撃を中止した。


「……危ないな」


 無理に踏み込めば、転倒したかもしれない。


 湊は安全な位置へ移動し、相手が追ってくるのを待った。


 次の跳躍を避けてから、落ち着いて槍を突き込む。


 三匹目のスライムが崩れ落ちた。


「……ふう。全部予定どおりとはいかないか」


 湊は額の汗を拭った。


 効率を意識するあまり、安全確認がおろそかになっては意味がない。


 そのことを、改めて実感した戦闘だった。



     ◇



 湊は一度、安全を確認した場所へ戻って休憩を取った。


 水を飲み、呼吸を整える。


 腕には少し疲労が溜まっていたが、まだ動けないほどではない。


「……今日は、まだいけそうだな」


 湊は【疲労回復】を発動した。


 体に残っていた重さが、少しだけ和らぐ。


 ただし、これ以上の連続使用は期待できない。昨日までの検証でも、すぐに二回目を発動することはできなかった。


 湊はスキルに頼りすぎないよう注意しながら、探索を再開した。


 その後、別の通路で二匹のスライムを発見する。


 一匹ずつ距離を取って戦い、どちらも討伐できた。


 四匹目は一撃。


 五匹目は最初の突きが浅く、二度目の攻撃で倒した。


「……五匹か」


 湊はステータスを確認した。


【個人情報】


名前:一ノ瀬 湊

レベル:2


保有スキル

【疲労回復】Lv.1


「……まだ上がらないな」


 今日だけで五匹。


 レベル2になってからの討伐数は、前回の三匹と合わせて八匹になった。


 だが、レベルは変わっていない。


 湊は少し考えた。


 今のところ、必要な討伐数は分からない。魔物の強さによって得られる経験も違うかもしれない。


 単純に何匹倒せばレベルアップする、と決めることはできなかった。


「……まあ、焦っても仕方ないか」


 湊は短槍を握り直した。


 体力には、まだ少し余裕がある。


 帰還予定の時刻までにも時間が残っていた。


 そこで、近くの安全な通路を確認してから、もう一匹だけ戦うことにした。


 見つけたのは、これまでより少し小柄なスライムだった。


 湊は距離を測り、構えを取る。


 相手の体が沈み込む。


 跳躍。


 横へ回避。


 そして、着地後の隙へ一突き。


 内部の硬い塊を砕いた瞬間、目の前に半透明の表示が現れた。


【レベルアップ】


レベル:2 → 3


「……おっ!」


 湊は思わず笑みを浮かべた。


「……よし! レベル3!」


 ついに、二度目のレベルアップだ。


 今日の討伐数は六匹。


 これまでの累計討伐数は十四匹となった。


「……いいね。ちゃんと積み重なってるな」


 湊は嬉しそうに頷いた。


 レベル1から2になったときも嬉しかった。


 だが、今回は少し違う。


 自分で戦う場所を選び、魔物を一匹ずつ誘導し、無駄な動きを減らす工夫をした。


 その結果としてレベルが上がったことが、何より嬉しかった。


 湊は短槍を下ろし、時計を確認した。


「……よし。今日は帰ろう」


 まだ戦いたい気持ちはある。


 しかし、腕には疲労が残り、集中力も少し落ちてきていた。


 レベルが上がったからといって、無理をする必要はない。


 湊はノートに今日の討伐数を記録し、入口へ向かって歩き始めた。


 レベル3。


 まだまだ弱い。


 それでも、確実に前へ進んでいる。


「……次は、もっと強い敵とも戦えるようになりたいな」


 湊は小さく笑った。


 同じ魔物を何度も倒し、動きを覚え、戦い方を改善する。


 その繰り返しが、少しずつ自分を強くしていく。


 ただ数をこなすのではない。


 どうすれば安全に、より効率よく戦えるのかを考え続ける。


 それこそが、湊の望むレベル上げだった。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!


皆さまに楽しんでいただける物語を目指して、これからも丁寧に書き続けていきます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!


次回もぜひよろしくお願いします!

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