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皇弟ガラント・ハーヴィー

あれ?ゴールが遠いぞ。


実況「さぁ最後の直線だ!全頭スパート!しかしサクシャの脚が伸びない!」


ロンシャンの直線より長い。

 夜明けと共に視界が晴れる。

 月明かりの下では感じ取れていなかった高さと速さにバレッタは硬直した。

 帝国領は平野が多く、小麦畑や野菜畑が各地に広がっている。

 空から見るこれらの光景はきっと美しいとは思うのだが、今のバレッタはギュッと目を瞑っているので何も見えていない。

 ミシェルも美しい光景には目もくれず、先程から前方を注視している。


「聖国との国境に軍を展開するなら、国境の街『エルネイア』を駐屯地とするはずなので、そろそろ軍が見えてもいいのですが・・・」


 似たような景色が続き、進んでいるのに迷子にでもなった気分だ。


「いたぞ」


 視力を強化していたアベルが一番に帝国軍の殿を見つけた。

 その報告にミシェルは『遠見』の魔法を展開。

 ゴマ粒程の小ささだった人の姿が大きくなる。

 アベルは飛竜の速度を落とし、通常運転に切り替えた。

 ミシェル達には聴こえないが、飛竜を労る言葉をかけていることだろう。


「かなり幅広く隊列を組んでいますね。大陸公路がほとんど見えません」


 帝国西方方面大陸公路『ウェール街道』

 その幅はおよそ30m。左右に一般道を併設しており、合わせると40mを超える。

 大陸の大動脈と言えるこの道に、綺麗な隊列を組んで進む様は圧巻の一言だ。

 その周囲に点在しているのは警戒任務に当たっている者達か。

 結構な範囲に50m間隔で広がり、一糸乱れずに隊列に追従する動きは練度の高さを伺わせる。


「確かにこれでは地上からは近づけませんね」

「おそらく、自身を中心に索敵魔法を使っているはずだ。隠蔽魔法をかけた飛竜でも近づけば気づかれるな」

「あの間隔が有効範囲ですか」

「そうだ。ただ、これだけ厳重な警戒をしながらの行軍は珍しい」


 全長約1kmの長い列だ。先頭はここからでは見えない。行軍速度も通常より速く感じる。

 さらに列に沿って進むと、真ん中となる辺りに他の兵とは違う装備をした兵に囲まれた馬車が見えた。

 軍用にしてもかなりの大きさで、そのまま戦車として使用すれば敵を蹂躙できそうだ。

 背面には4本の槍が備え付けられている


「アベルさん。あの馬車見えます?」

「大きいな。しかも6頭立てとは珍しい」


 6頭立ての馬車は各国でも最高位か、それに準ずる身分の者にのみ使用が許される仕様で、中々お見かけする機会はない。


「アベルさん!アベルさん!あの旗!」


 珍しく慌てた様子でミシェル馬車から少し先の軍旗を指さしていた。


「帝国で双頭竜の意匠を使えるのは皇族の方だけですよね?」


 アベルも旗の意匠に気がついて、脳裏に『まさか』という言葉が浮かぶ。


「地色に真紅が使えるのは皇帝陛下ただ一人・・・」

「ですよね!ですよね!マジかー!何で皇帝陛下が御親征してんだよ!」


 もう口調など気にしていられないのか、皇帝に対して随分と不敬な物言いになった。


「本人の前では言うなよ」

「言えませんよ!」


 指揮官が皇帝陛下となると、面会するのは至難の業である。

 下手をすればその場で処刑だ。


「とりあえず空から追うしかないですね。エルネイアで休憩中の皇帝陛下に近づけるといいのですが・・・」

「仕方あるまい。今までが順調過ぎたと思え」

「ですね」


 などと話し込んでいると、いきなり密度の濃い空気に飛び込んだ様な感覚がミシェル達を襲う。

 と、同時に強烈な悪寒を感じ、全身が粟立つ。

 

―――――――――


「ん?」


 兄である皇帝と向かい合って座っていたガラントが顔を上空に向ける。


「どうした?」

「何か索敵に引っかかりました。空?こちらに近づいています」


 そう言うと、コンコンと背後の小窓叩く。

 すると御者の1人が小窓を開いて顔を覗かせる。


「緊急停止。周囲に空の警戒を呼び掛けろ」

「御意」


 即座に馬車が止まり、ガラントは外へ出る。

 馬車の背後に回り、備え付けられていた槍を持ち投擲の構えをとる。

 空を睨み、僅かな歪みを見つけると躊躇いも無く槍を放った。


――――――――


「何だこの感覚は!?」


 先程、変な空気を感じてからミシェルは冷や汗が止まらない。


「馬車が止まったぞ」


 アベルも同じく異変を感じている様だ。声が僅かに震えている。

 バレッタなどガタガタと震え、青ざめている。

 馬車を中心に波紋が広がる様に行軍が止まってゆく。


「見つかった!?こんな距離で!?」


 ミシェルが驚くのも無理はない。馬車と飛竜の距離は少なくとも200m以上はある。

 

「誰か馬車から降りました!」


 ミシェルの声を聴きアベルがより強く視力を強化した。


「ま、まさか!あれはガラント・ハーヴィー殿下!?

 皇帝だけでなく皇弟まで出てきたと言うのか!?」


 皇帝の親征軍に皇位継承第1位の者が付き添うなどあり得ない。

 皇帝にはミハエル皇子をはじめ、3人の皇子がいるがまだ誰も立太子していない。

 皇帝と皇弟に何かあれば帝国が乱れるどころの話ではない。

 飛竜の上でミシェル達が混乱極まる中、ガラントが槍を構える姿が視界に映る。

 ガラントの視線は空に向けられていた。

 確実に飛竜(こちら)の位置を把握している。


「マズイ!」


 帝国最強と名高いガラントが放った槍は唸りを上げて飛竜へと迫る。

 即座にミシェルは右手を上に向ける。

 掌から物凄い勢いで風が吹き出し、一瞬で飛竜の位置を1m程下げた。

 刹那。元いた場所を槍が通過していく。

 掠っただけで、そこから肉が弾けそうな衝撃がミシェル達の脳を揺さぶる。


「躱された?」


 投げた槍に手応えがなかったのを感じてガラントは空を見据えたまま次の槍に手を伸ばす。

 その瞬間。空に飛竜の姿が現れた。

 衝撃でアベルの意識が一瞬飛んでしまい、隠蔽魔法が途切れたのだ。


「王国の飛竜騎士だと!?」


 予想外の相手の出現に、ガラントは1秒ほど槍を掴むのが遅れた。

 その極々僅かな隙を縫って、飛竜の背から何かが落ちた。


「人?飛竜騎士か?」


 逆光でハッキリと見えないが、手に何か光るモノを持っている。

 距離があって流石のガラントもあれを狙い撃つのは不可能に近い。

 下手をすれば味方を巻き込んでしまう。

 落ちた人らしきものは兵の中に消えていった。

 槍から手を離し、腰の剣に手をかける。


「お待ちください!我々は王国のブライブラン家の者です!」


 先程飛竜から落ちた者の声だろうか?

 拡声魔法とでもいうのか、聞こえるはずのない距離からの声がガラントの耳に届いた。


「ブライブラン家だと?」


 それから少しして、近衛に連行されてきたのは金髪の少年であった。

 あの高さから落ちて怪我ひとつ見当たらない。

 ブライブラン家の関係者にしては革の胸当てといい、革の小手といいらしくない装備である。

 ただ、その手には見覚えのある紋章が握られていた。


「皇弟ガラント・ハーヴィー殿下の御前である。跪け」


 近衛の言葉に金髪の少年は素直に従った。


「直答を許す。何者か」


 威厳のある声に金髪の少年は顔を上げる。

 その目には強い意志が感じられた。

 少年は両手で紋章を差し出す。


「クレタミラ王国ブライブラン家より、パトリック・ブライブランの名代として参上いたしました飛竜騎士アベル・ブライブランの使いでございます。

 我が主は飛竜に騎乗中故、直接お目通り叶わぬこと何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます」


 差し出された紋章を近衛が受け取り、すぐに紋章官が呼び出され、紋章を鑑定することとなった。


「間違いありません。ほ、本物です」


 紋章官は恭しくガラントに紋章を差し出した。

 ガラントは受け取った紋章を撫でたり裏返したり、指でつついてみたりと一通り弄んだ後。


「なるほどな。では乗れ」


 背後の馬車にサムズアップした親指を向けた。


「はい?」


 訳が分からない金髪の少年ミシェルは、ガラントからアイアンクローをされ、引きずられてゆく。


「いっだっだだだ」

「で、殿下!?」


 ガラントの行動に近衛達が慌てるが、ガラントは無視して馬車の中にミシェルを投げ入れた。

 首が曲がってはいけない角度になった気がしたが、受け身をとって何とか無事に馬車の床にへたり込む。


「少年?誰だ?」


 混乱した様子で赤髪の紳士がミシェルを見下ろしていた。

 ガラント以外にこの馬車に乗ることができる御仁はただ一人。

 ミシェルは姿勢を正し、跪く。


「デュラン帝国皇帝リハルト・ハーヴィー陛下とお見受けいたします。

 お目にかかれて光栄です。

 クレタミラ王国ブライブラン家当主パトリック・ブライブランの名代として参上いたしましたアベル・ブライブランの使いでございます」


 ガラントへの挨拶と同じ自己紹介をリハルト皇帝へ行う。


「そんな嘘はもういいぜ少年」


 ミシェルを投げ込んだガラントが馬車に乗り込んで扉を閉める。

 即座に小窓を叩き、御者へ全軍前進を伝えると、馬車はゆっくりと動き出した。


「嘘とは?」


 ミシェルのこめかみを冷たい汗が撫でていく。

 ダレスの圧も相当であったが、目の前の皇弟殿下からの圧もダレスと遜色ない。


「兄上。コレを」


 ガラントはブライブラン家の紋章をリハルトへ渡す。


「ブライブラン家の紋章?だが」


 リハルトは首を捻り、表面を撫でたり、裏面に指を当てたりしている。


「はい。これはブライブラン家の次期当主であるマチルダ・ブライブランが所持している第二紋章かと」


 ミシェルが聞いたことのない言葉がガラントから出た。


「本人しか持ち得ない第二紋章。どうやって手に入れた?」


 ガラントの質問の答えは本人から預かりました。としか言えない。

 言って信じてもらえるだろうか?


「それから、お前はアベル・ブライブランの使いと名乗っていたな。あの飛竜騎士、本人か?」


 前の質問に答える前に、次の質問をしないで頂きたい!

 そう声に出して言いたいが、斬られそうなのでやめておく。

 まぁ正直に話すしかない。


「紋章はマチルダ・ブライブラン様ご本人より託されました。

 先程の飛竜騎士はアベル・ブライブラン様ご本人です。

 飛竜にはもう一人、冒険者バレッタ・ヘインが同乗しております」


 開き直ってミシェルが答えると、ガラントはリハルト皇帝の隣に座って腕を組んだ。


「だそうです。兄上」


 まさか、あれで信じたのか?

 ミシェルはガラントの次の言葉を待つ。


「ガラント。少年に説明せよ」


 リハルトも呆れた表情で、背もたれに身体を預け紋章をガラントへ渡す。


「いいか少年。この第二紋章には仕掛けがあってな」


 そう言ってガラントは紋章の裏側をミシェルに見せる。


「ここの窪みに指を添えるとマチルダの声が聞こえる」


 ガラントはそう言って指を添えるが、マチルダの声は全く聞こえない。


「ただし、指を添えた者だけにだ」


 ガラントはミシェルへ紋章を渡す。

 ミシェルは紋章の窪みに指を添える。

 凛としたマチルダの声がミシェルの脳内に響いた。


『我が名はブライブラン家当主名代マチルダ・ブライブラン。

 この紋章を所持している少年に全権を委ねる。  

 この少年は我が夫ダレス・ブライブランと双璧を成す者なり。

 この声を聞きし者よ。この少年が語る言葉はダレス・ブライブランが語る言葉である。

 真実を知りたくば少年の話に耳を傾けよ』


「少年よ。マチルダ・ブライブランはこう言っている。紋章を持ってきた少年の話を聞くようにと…な」


 リハルトは真剣な眼差しでミシェルを見据える。

 隣のガラントはイタズラが成功したかの様な笑顔を見せていて、ミシェルはちょっとだけイラッとした。


 皇帝と皇弟。

 皇帝リハルトはヴァン・ダイク髭を蓄えていて、座っているだけでも威厳が感じられる。

 体躯に関しては、程よく鍛えられてはいるものの、やや線が細くスラッとしている。

 逆に皇弟ガラントは如何にも武人といった筋肉隆々の体躯をしている。

 あのとんでもない槍の投擲も頷ける。

 髭は無く、先程見せた笑顔も含めて見た目だけならダレスと変わらぬ歳に見えるが、今年で齢37になる。


(閣下の方が年上に見えるな)


 こうして両者が並ぶと、何も知らない者にどちらが皇帝と思うかと尋ねれば、ガラントの方だと答える者が多そうだとミシェルは思う。


(それにしても、閣下と双璧を成す者とか嬉しいけれど重いです。マチルダさん)


 こうして無理難題と思われた皇帝陛下との謁見。

 しかも直接言葉を交わすことができるというのは出来過ぎもいいところだ。

 だが、何かひとつ言葉を間違えると、ダレスやマチルダ。ブライブラン家の者まで責任を問われる可能性がある。

 ミシェルの心配を読み取ったか、ガラントはミシェルの肩を叩いて馬車の空間結界魔法を発動させた。


「これで中の声は漏れない。楽にしていいぜ」


 皇族専用の馬車だ。当然備わっていなければおかしい機能である。

 しかし、楽にしていいとは言われたものの、宴会でお偉いさんの言う無礼講並に信用ならない。


「少年。ガラントの言う通りだ。直答とか口調とかは忘れていい」


 一番偉い人の言質が取れた。


「まずは、どうやって飛竜で国境を越えられたか聞こうか」


 笑顔だったガラントは笑顔のままだが、目だけ笑顔のものではなくなっていた。 

 

エースコンバット7のVRモードをやった事がありますが、3D酔いで5分でギブアップしました。

発艦シーンはメチャクチャ迫力があって良かったんですけどね。

エースコンバット8はグラフィックが凄くて、モニターに近づいていると疑似VRみたいな感じですが酔いません。

 コックピット視点でプレイしているのが良いのかな。

 とりあえず。

 地上戦はやっぱA−10ですわ。安心安定。

 艦載機ミッションが多めなのでF14を極限まで強化できたらなー。

 基本ラストミッションはF14でやってますが毎回ラスボスの機動が鬼なんすよ。

 現代改修したF14は中東で現役らしいので強化限界上げて欲しいわぁ。

 ラプターとか視界から消えるし。速度差エグくて追いつけないし。

 以上、早期購入特典のF14に釣られた狂猫豚でしたとさ。

 


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