お荷物な荷物
まだゴールが遠い。
スパートするには早かったか?と思うこの頃。
いくら月の光が明るい紫光の夜とはいえ、隠蔽魔法で姿を消した飛竜の姿を捉えることは非常に困難である。
ましてや、木々の枝葉が視界を遮り、空が斑にしか見えない状態となればより難しい。
そんな中、最初の矢を額に受けた時計持ちの1人は紫に光る星空を見たまま地面に倒れた。
初めて見る人が死ぬ瞬間。
ミシェルはしっかりと記憶に焼き付けた。
これは自分がアベル達をここに導いた事で起こった出来事であるからと。
仲間が撃たれた事に気がついた時計持ち達は周囲や木の上を警戒しているが、まさか空からの狙撃だとは思うまい。
次々と矢が刺さって、まるでスローモーションがかかったかの様に倒れていく時計持ち達の姿を見ながら、ミシェルは何度も聞いた祖父の言葉を思い出していた。
『良いかミシェル。
隠蔽魔法の使い手のほとんどは姿を隠す。
だが生き物ならば呼吸をする。相対した敵が隠蔽魔法を使ったと思ったら呼吸の音を聴くのじゃ。
もし、呼吸の音が聴こえないのならば、音まで隠蔽されているか遠くにいるということじゃ。
しかし、姿が見えず音が聴こえずとも、生き物であれば身体がある。重さがある。
地面の足跡、草木を踏んだ跡、枝葉の揺れ、空気が避ける場所。ありとあらゆる痕跡を探るのじゃ。
その全てが見つからない時の可能性は2つ。
1つは対象が既にその場にいない可能性。
1つは対象の力量が自身を大きく上回っている可能性。
後者だと判断したらすぐに逃げよ。
ただし、他に行動を共にする者がいる場合は、その時の状況で変わってくるのじゃが、コレばっかりは経験の積み重ねが必要じゃろう。
一番悪いのはパニックになることじゃ。
常に冷静に、状況を把握することが最優先。
どんな時も自身の糧となるよう考え続けるのを怠るでないぞ』
敵の姿が見えず、1人また1人とバレッタの矢に撃たれ倒れてゆく仲間の姿に、精鋭のはずの時計持ち達がパニックに陥っている。
いくらなんでも彼等の力量がこちらを大きく下回っているということは無いだろう。
飛竜の背から見るその光景は、祖父が言っていた隠蔽魔法の使い手と対峙した際に起こり得る最悪のパターンの1つと重なっていた。
「お祖父様の言った通りですね。どんなに優れた兵であっても理外からの攻撃には弱い。
攻撃される事よりも、敵の姿が見えない事の方が、より奴等の恐怖を増幅させている」
バレッタの射撃は思っていた以上に正確で、どの敵もほぼ1撃で貫いていた。
このまま攻撃を続けていれば、矢が尽きる前に全員を倒しきるだろう。
ただ、ミシェルの視界から少し離れた場所に人影が見えた。
人数は3人。見た感じは親子に見える。彼等は腰が抜けたのか、抱き合いながら座り込み、母親らしき者が子供の目を手で覆い怯えた様子で惨劇を見ていた。
おそらく生贄に選ばれた者だろう。
本当に親子であれば、彼等は互いが人質となって見えない鎖で繋がれた状態となる。
子供だけでもと逃がしたところで、すぐ捕まるか魔獣に襲われて命を落とすだけだ。
つまり、彼等は逃げるに逃げられない。
「ここまでするか・・・公国のクズ共は!」
怒りが湧き、珍しくミシェルが声を荒らげた。
その声にアベルが親子の存在を知る。
混乱の最中にいる時計持ち達は親子の存在が頭から抜け落ちている様だが、追い詰められた時に盾にされたり、竜種召喚を強行されたりすると非常にマズイ。
「バレッタさん!あの3人は撃たないでくださいね!アベルさん。ちょっと行ってきます!」
「待っ!」
アベルが『待て』と言い終わるより早く、ミシェルは約10mの高さから地上へと飛び降りていた。
着地の瞬間に足元から一瞬つむじ風が吹き、その衝撃を和らげる。
迎撃の態勢を取ろうと腰の剣に手をかけ、時計持ち達の方に視線を向けると、最後の1人の脳天に矢が生えていた。
「お見事です」
バレッタに聞こえぬ賛辞を送って、ミシェルは家族らしき3人へと近づく。
隠蔽魔法の範囲外に出たことで魔法が解けた。
「ひぃぃっ!」
それまで誰もいなかった場所に突如現れたミシェルの姿に母親らしき女性が悲鳴を上げた。
母子を守るべく背を向けて2人を抱きしめていた父親らしき男性は、女性の悲鳴を聞き、女性の視線の先へ顔を向ける。
そこにいるはずのない少年の姿を見て、男性の両腕に力がこもる。
「あーご心配なく。少なくとも貴方達の敵では無いと思います」
混乱している彼等の耳に、紫光に照らされた怪しい少年の声が届くのか不安ではあったが、
「誰?」
女性に抱かれていた、見た目6歳位の男の子がミシェルの声に反応して問いかけてきた。
男性と女性は男の子がいきなり尋ねたことに驚いた様子だったが、同じ疑問を抱いていたのでミシェルの返答を待った。
「誰。という問いに今はお答えできません。先に貴方達が誰なのかを教えていただけないと、僕が『誰』になるのか決まらないので」
現時点でミシェルは彼等の味方では無い。
今のところ選択肢は『敵』か『敵ではない』かの2択だ。
正体不明の相手からの質問に、怯えながらも女性は声を振り絞る。
「私達はフライアラ聖国で暮らしている者です。
もうすぐ訪れる紫凰の満月に合わせて、聖地へ祈りを捧げる為に来ました。
貴方が殺したのは、私達が安全に巡礼出来るように聖国の司祭様が手配してくださった護衛の者です」
『貴方が殺した』
まぁ、未だにアベル達の姿が見えないのだから、時計持ちを殺したのは目の前に現れた少年だと思い込んでも仕方が無い。
ただ、彼等の答えはミシェルの想定と少し違っていた。
「聖地巡礼ですか?子供を連れてこんな場所まで?」
『もうすぐ訪れる36に年一度と言われる紫凰の満月は、聖地を巡礼する絶好の機会である』
「聖女メイリー・フライアラ様の宣言により、各地にある聖地への巡礼が決まったのです」
余計な事を言わぬようにと、子供の口を震える手で塞ぎながら、女性は睨むような表情になって答える。
「このテレイア川の源流となるレイア池は、精霊道に繋がる聖地のひとつであり、紫凰の満月の時に祈りを捧げ、その水を口にする事で精霊道を通って神が顕現され、加護が得られると司祭様から伺いました」
(顕現・・・ねぇ)
「ですが、あまりに巡礼を希望する者が多かった為に、巡礼は司祭様によって選ばれた者だけが許されることとなりました。
幸運にも私達親子はレイア池の巡礼者として選ばれてここにいます」
(メイリー・フライアラが聖地巡礼を推奨した?
それは本人の意思か?誰かの入れ知恵か?)
考えたい所ではあるが今は後回しにする。
それよりもさっきの話だと、ミシェルの推測通り、他にも聖地とされる場所へ向った者がいるということだ。
「巡礼者が向った場所はいくつありますか?」
「言えば助けてくれるのか?」
男性が震える声で問う。
「いくつありますか?」
男性の声を無視して再度同じ質問をする。
ここで優しさを見せてしまうと適当な答えではぐらかされる可能性があるからだ。
勘違いとはいえ怖がってくれているのだ。
家族の命が脅かされていると思っていてくれた方がきちんと質問に答えてくれるだろう。
取引が出来ないと悟ったのか、男性は諦めたように答えた。
「全部で5箇所だ」
「5箇所か・・・場所を教えてください」
「ここ、レイア池。
帝国と公国の境にあるヘラルド湖。
王国北部のカレイラ池。
連合国南部のハーマリーヤ湿地。
聖国の東部、帝国との国境沿にあるアークミラ湖。以上だ」
「はい。ありがとうございます」
感謝の言葉を贈られるとは思わず、男性は目を丸くする。
やはりと言うべきか、堕天共から聞いた実験場所と見事に合致していた。
聖地。つまり、竜種召喚が可能な水地に生贄を巡礼者という形で送り込み、同時多発に竜種召喚を行うつもりだろう。
わずかな時間の顕現だとしても竜種が周囲に与える損害はかなりのものになる。
混乱に乗じて秘密裏に侵入する事も、攻め入る事も可能だ。
(いつから準備していたのか聞きたいところですね)
ここまで用意周到な計画を考えたのはアルベルト・フライアラだろう。
これまで聞いた人物像からもそれは明らかだ。
そして、5つの聖地の中に三国国境にあるという『名も無き池』は無い。
『名も無き池』と言うが、正式名称では無いというだけで呼び名はある。
『精霊門の池』
勇者物語に出てくる池の名だ。
本物であると証明出来ていないから皆『名も無き池』と呼ぶ。
(聖地として選ばれていないと言う事は、向かっていたのはバレッタさん達だけと言う事になる。
単純に聖国から遠いからなのか、位置的に見ても複数の巡礼者を連れて行くには難しい場所だからなのか理由は分からない。
別働隊の可能性も捨てきれないが、僕等に捕まった人数からみて可能性はかなり低い。
だとすれば、生贄はバレッタさんだけということになる。いくらなんでも1人は少な過ぎる。
これまでの経緯や、捕まえた連中の証言から竜種召喚を主導していたのは、やはり堕天であるのは間違いない。
一緒に行動していたことから時計持ちとの共同作戦と思っていたけど・・・)
ここでミシェルは気づいた。
(あー。そっか。
堕天にとって時計持ちも生贄だったんだ)
この親子を生贄に竜種を召喚する。
顕現した竜種と相まみえた時計持ちは、その時どうするつもりだったのか?
(普通は召喚が成功した段階で逃げるけど、もしかすると堕天からは顕現した竜種は使役が可能だとでも聞かされていたんじゃないか?)
召喚術によって呼ばれた竜種は使役が可能なのか?
答えは『否』である。
実験を繰り返していた堕天の証言からもそれは事実だろう。
召喚した悪魔や竜種といった存在と契約を結んで使役するというのはおとぎ話の中だけの話だ。
暫定の竜種ではあるが、使役できているという点では飛竜騎士が該当する。だが、過程が全く違う。
飛竜を使役している飛竜騎士の場合は卵の時から行動を共にする。
そして産まれた時に名を与えるという行為で契約を結んだ後で、成竜となるまで訓練という形で飼育をしてはじめて使役する事が可能となる。
同様に獣や魔獣を使役する獣使いという存在がいる。
魔力持たない獣であれば大型の熊であろうと使役魔法によって簡単に使役する事ができるが、魔力を持った魔獣となると小型であっても使役魔法は効かず、契約書のない簡易的な契約魔法で縛り、一時的に使役する事しか出来ない。
獣使いは竜種を使役できるのか?と問われれば、当然『否』である。
竜種どころか、大型魔獣を使役する者すら数十年に1人くらいのレベルの極々稀な存在である。
大型魔獣は人より内包している魔力が大きいからなのか、契約魔法をかけてもすぐに解けてしまうか、全く効かないからだ。
その数少ない大型魔獣を使役する獣使いの記録によれば、飛竜騎士と同じく産まれた時から世話をして、長い時間をかけて関係を築いた上で契約を結び、ようやく使役が可能になるという内容で飛竜騎士がしている事と大差ない。
そして、飛竜と魔獣。どちらも使役するまでの過程において、召喚術は全く関係がない。
そもそも、召喚術と魔法は魔力を行使するという点は同じだが、全く別系統の術式だ。
召喚術は儀式を伴う為に使用場所が限られ、発動までの時間が長く、召喚する対象によっては膨大な魔力を必要とする。
過去に使用された記録がある召喚術として、
隕石を喚び落とす『隕石落下』
地面に溶岩を喚ぶ『溶岩池』
など、自然現象を利用する事で威力や効果が並外れた術が多い。
そもそも召喚術で喚べるのは生物だけとは限らないのだ。
一方、魔法は使用者本人の魔力を運用する。
特定のキーワードで魔力を火、水、土、風などの属性に変質させて、直接的な効果を発揮させる攻撃魔法タイプ。
契約書を介して行動を束縛する契約魔法の様な、相手の体内に魔力で制約などを書き込む束縛タイプ。
既にある物質を魔力で変質させるタイプ
他にも使用者の創意工夫により新たな魔力の運用方法が生まれている。
召喚術に比べるとかなり身軽な術式であるが、使用者の魔力量が足枷となる場合がある。
あくまでも召喚術は魔力を用いて何かを喚ぶ術式であり、魔法は魔力を変換して用いる術式である。
契約魔法が効かない竜種を使役するには、飛竜騎士や獣使いと同じ方法で竜種を1から育てる必要がある。
竜種を使役する為に、飛竜の様に竜種を育てるにしても、竜種が卵生だとして、どうやってその卵を手に入れるのか?
推論通りであれば竜種は精霊国で暮らしている。誰も行き方を知らない精霊国にだ。
では、幼生の竜種を召喚して育てるのか?
仮に幼生の竜種が召喚できたとして、使役出来るまで育てるのに何年かかるのか?
その間、顕現させ続けるにはどれほどの魔力が必要なのか?
あまりにもハードルが高すぎる為の『否』なのだ。
つまり、堕天のシナリオはこうだ。
親子を生贄に召喚された竜種は、使役出来ると思ってその場にいる時計持ちの魔力を得て顕現時間を延ばす。
(つまり、三国国境に帝国と共和国の兵が集まる様に画策したのは同じ目的か)
召喚された竜種は周囲の兵を襲い顕現時間を延ばすだろう。
(ただ、顕現してからどの位の時間餌となる魔力を吸収することができるのか?
無制限と言う事は無いだろう。
それならば、ガラネアを襲った装甲竜が消えるはずがない。
紫凰の満月の時はそうなのか?
いや、その事は確認できていないはず。
これまでの数多くの召喚実験でも証明できなかったと捕まえた堕天のリーダーが証言している。
過去の例も見つけられなかったとも言っていた。
そもそも、36年に1度という稀有な日を狙って、ピンポイントで竜種召喚を試す様な真似を意図してやった者がいるのなら、そいつは超天才のイカれた奇人だ。
精々、召喚に必要な魔力が減るか顕現時間が延びる位だろうと奴等も結論づけていた。
そうであってほしいけど、確かめようがないのが歯痒いな)
いくらなんでも、14歳の少年が36年前の出来事を経験することは出来ない。
(もしも召喚時の魔力量よって召喚される竜種の大きさや質が左右されると言うなら、より強大な竜種を喚ぶ為に多くの生贄を用意するだろう。
もしくは魔力量多い者を集めるか)
そこでひとつ疑問が生まれる。
(生贄というか、召喚に必要な魔力は生物のものではないといけないのか?
違うな。過去の例にもあるじゃないか)
ガラネアを壊滅させた装甲竜はどうやって喚び出されたのか。
もしも、生贄を捧げての召喚しか出来ないのであれば、あの大きさの竜ならかなりの人数が必要だったはずである。
だが、装甲竜が現れた場所とされる『名も無き池』にそれらしき集団が向ったという情報は無い。
共和国の裏組織が動いたとしても、大量の人間が移動したという痕跡を完全に隠すなど不可能だ。
そんな事が出来るなら、回りくどい事などせずに帝国なり王国に直接派兵すればいい。
ダレスが共和国の従兄弟とやらから聞いた話によれば、装甲竜が現れてからガラネアを壊滅させて消えるまでの時間は約半日程。
過去に聖国を襲った兜竜は、丸1日暴れていたと記録にあるので妥当な長さではあるが、実験で顕現させた竜種が数分で消えたのに比べると随分と長い。
であれば答えは1つだ。
壊滅したガラネアには装甲竜のものらしき鱗がいくつか落ちていたという。
また、ダレスが討ち取ったという小竜種。
塵となって消えた跡に遺された2本の牙は1本は国王陛下に献上され、もうー本はダレスの双剣に加工されたが、不思議なことが1つ。
小竜種は確かに生物としては大きい部類であるが、成長した飛竜とほぼ同じくらいの大きさである。
その牙は一番大きいものでも50cmほど。
しかし、その小竜種が遺した牙はどちらも1mを超えていたという。
(遺された鱗や牙は召喚に使われた触媒。
つまり、魔力を内包したものを触媒として使用すれば、別に生贄がいなくても召喚出来るということだ。
堕天は聖国の裏組織。ということは、触媒となった鱗と牙は過去に聖国で暴れた兜竜のモノだな。
顕現中に剥がれたり折れたりしたから消えずに残ったのか?
それとも召喚術とは別の方法で喚ばれたからなのか?
情報が無いから分からないな)
これまで集めた情報の中で積み上げた推論の塔。
だが、根本にある大事な情報をまだ入手出来ていないので土台がグラグラである。
これまで何度崩壊して積み上げ直しただろうか。
ヒントは召喚術の中にある気がした。
ミシェルは腰の片手薬入れに手をかける。
(バレッタさんから預かったこの水晶。中にとんでもない量の魔力が内包されていた。
しかも、物凄く不安定な状態なんだよね。
周囲を巻き込んで爆発しそうだと言ったけど、冗談抜きで少しでもヒビが入ったら爆発するんじゃない?)
普通にバレッタを捕縛しに行っていたら、抵抗されて割れていたかもしれない。
そうすればベルリナが半壊していた可能性もある。
麻痺薬で動けなくしておいて良かったとミシェルは心からそう思って、ちょっと震えた。
(これが触媒であるのは間違いない。
堕天がコレをバレッタさんに渡す時に、特に隠さずに時計持ちにも見せていた理由は時計持ちの連中に生贄である事を悟らせない為だろうな。
さて、今回はどうだろう?)
「ちょっとお聞きしますが、巡礼前に肌見放さず持っているように渡されたモノはありませんか?」
急に黙り込んで何か考えていた謎の少年からの質問に、女性身体が硬直した。
ミシェルが思考していたのは僅かな時間だったが、親子にとってはミシェルの無言はかなりの重圧で、精神が削られていく永遠にも感じる時間だった。
疲弊した女性は思考力が低下しているらしく、泣きそう表情を見せるだけ。
男性の方も近い状態ではあるが、何かを思い出そうと考えている様子。
ミシェルの質問答えたのは意外にも子供であった。
もぞもぞと、肩にかけていた小さなポーチから見たことのある小さな水晶玉を取り出した。
「司祭様がお守りだよってくれたー」
持っている方が危険という、随分と皮肉の効いたお守りである。
「そのお守り。僕のお守りと交換してくれるかい?」
そう言ってミシェルは背負っていた小さな革鞄を降ろし、中からアメ玉が入った袋を取り出して子供に差し出す。
中身を見せると、子供は喜んで水晶玉と交換してくれた。
司祭様から預かったお守りと聞いて、両親が抵抗するかと思ったミシェルだったが、子供が持っていたとは知らなかったのか、両親は驚いた表情で固まっていた。
受け取った水晶玉を鑑定すると、やはり中には魔力が内包されていた。
ただ、バレッタが持っていたものに比べると、水晶の質、内包している魔力量、共に低い。
「コレを使って召喚しても、閣下が倒した小竜種級かな」
だとしても、真っ直ぐ王都に向かおうものならどれほどの損害になっていたか想像できない。
実際は堕天にいいように利用されていた訳だが、公国の企みを阻止できて良かったとミシェルは手にした水晶玉を片手薬のケースへとしまう。
ただ、衝撃吸収材があるとはいえ、いつ爆発してもおかしくないモノを携帯しているというのは精神的によろしくない。
(とっとと誰かに投げつけたい。出来ればアルベルト・フライアラだと嬉しいんだけど・・・)
困った荷物が増え、苦笑するミシェルであった。
右旋回すると右に傾く。
左旋回すると左に傾く。
誰かに見られたら恥ずかしいエースコンバットプレイ中のワイ。




