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第43話 鎮魂の巫女

 鎮魂の巫女、それは名の通り「魂」を「鎮」める巫女。

 対象は「魔王」だそうだ。


「そしてそれは、俗に封印とも言う」


 ツキノが言うには、巫女は密かに選ばれ、巫女によって魔王は悪さをしなくなる。きっと周囲の人にしてみれば、犠牲になって封印したのだろうという印象を受けたのだろうと。


「なるほどな、ここに勇者一行が来たのは必然かもしれんな」


 デリックが言った。

 今、私達は鎮魂の巫女選定の儀式を行う場所に案内されている。

 ここから出る手立てがないため仕方がない。


「魔王が復活するのはどうしてなんですの?」


 ユキちゃんが質問した。

 ツキノは良い質問ですねえ。と言わんばかりの顔で答えた。


「我々巫女たちの寿命だ。私はすでに魔王に干渉できるほどの魔力を失っている。」

「え? 猫又族ってそんなに長生きなの?」


 確か、周期は百八年だったと思う。巫女になるまでに十数年はかかるだろうし、百二十年も生きるのだろうか? 今までそんなに高齢の猫又には出会ったことがないけれど。


「普通は生きて百歳程度だと思うが……」


 百でも結構長いよ?


「巫女になることで多少巫女の先輩から魔力を受け継いでな、それで少し長生きできるのだ」


 ちなみにツキノはもともとミツマタだったのだが、巫女になることでヨツマタになったらしい。


 どうやってなるんだろうにょきにょき? それとも変身的な?

 まあ、いいか。


「鎮魂の巫女は歴代の巫女に認められた存在しかなれないのだ」


 彼女は先代の巫女より、次の巫女が来たらわかるとだけ、伝えられたらしい。

 ツキノは私達を部屋の奥へと導いた。


 なんだかよくわからないけれど、誰かが巫女になるしかないのか?


「巫女が女ってのは決定なの?」

「いや。歴代が女だったというだけで、別に男でもなれるようではあるけど」


 その場合は神官? それとも神子とかいうのか?

 しかし、女の確立が高いのか……。


「ひょっとして、この城を離れることは……」

「ああ、出来なくなる」


 ツキノの言葉に私は不安になった。



 そこは暗いようでも明るいようでもあった。うす暗がりの中にオーロラのようなものが淡い虹色の光を放ち煙っていた。

 四体の猫又の像があり、そのどれもが美しい。一様に陶器のようなつるりとした表面、それでいて植物を切り出して作ったような生命力で溢れている。人工物だと思えないような出来だ。

 ツキノは珍しそうに像を見る私達を「見世物ではないぞ」とたしなめた。


「一体これは……?」

「いいから静かにしておれ」


 ツキノは私達四人を横並びに像の前に立たせた。


「彼女たちは過去に魔王の魂を鎮めた者達、私達の先輩なのだ……」


 言ってツキノは静かに目を閉じた。


「魔王は決して倒すものではない、癒し、鎮めるのだ」

「そのようなことを言われても……一体」


 あんな凶悪な魔術? 能力? をどうしたらいいのやら。

 私はすでにケンカをうってしまったようだし。


「皆の者、目を閉じよ。巫女の選択が始まる」


 目を閉じた。

 光がまぶたの外を行ったり来たりしている。

 暖かくなったり、元に戻ったり。

 ときどきツキノの「ほう」というため息が聞こえる。

 ふと光が強くなり、なにかが直接心に語り掛けてくる。


『あの子はかわいそうな子なの。親に疎まれ、その容姿と魔力ゆえにこの城へ幽閉された』


 だけど、この世の人には関係のないことだ。逆恨みもいいところだ。

 もっというと私には全然関係ない。


『子供なのよ。彼は。生まれてすぐに冷たくされたら悲しいでしょう?』


 確かにね。

 でも、魔王はいくつなのだろうか。ずっと同一の存在ならば八百は超えているはずだ。

 いつまで子供でいていいのだろうか。

 それは私にも言えることだけれど。


『彼には子供の時がなかった。子供でいては生きていけなかった』


 魔王はかわいそうだけど、そのために沢山の人が犠牲になるのはおかしいよ。


『おかしい?』


 うん。

 語り掛けてくるあなたはその一人いやあなたは一人ではないのか。


『ええ、私は私達。鎮魂の巫女の思念の集合体』


 あなたたちは魔王に優しくしてきたのでしょう。


『ええ』


 お疲れ様。

 でも、いつまでもかわいそうかわいそうではすまない。


 いつだったか、母が言っていた。


「あなたもいつかわかるだろけれど、いつまでも親べったりでは本当の成長はできないの。生き物として生を繋ぐためだけの成長ではなくって、自分のための成長が」


 自分のための成長。

 あの時はさっぱりわからなかったけれど、今これからの時がその成長に当たる気がする。

 親元を離れ、あまり優しくない世界にもまれ、だけど私は私でしかない。

 だけど毎日ちょっとずつ違う。

 今ならわかる気がする。

 優しいだけの世界では成長できない。


 ひょっとしてあなたたちも何かやりたかったことがあったんじゃないの?


『……』


 巫女の思念はうなずいた気がする。


 

「あなたたちはもう、解散してもいいよ。そのかわり私が焼きいれてやるから、力を根こそぎ寄こしなさい!」


 さあ、魔王よ。一緒に成長しようじゃないか! 

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