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第34話 出口の戦闘

 魔に魅入られた兵士は大きな動作で私に斬りつけてきた。


「ソックスどうしたんだ!?」


 ホウカンの顔見知りだったらしい。

 私は一太刀目を避け、反撃に出る。


「和美、やめてくれ、ソックスはきっと幻覚か何かを見ているだけだ」

「殺しはしません。ただ、動けないようにしないと」


 すがりくるホウカンを蹴倒し、私は剣を構えた。


「あわわ。睡眠薬……は家か! あれでもない、これでもない。あった。しびれ薬!!」


 ホウカンは鞄の中身をまき散らす。

 しびれ薬は出てきたものの、手を滑らせて周囲に散らばってしまった。

 私は上着の袖を口に当てた。ソックスは風上にいたので効果はない。ホウカン一人が吸ってしまい、むせている。



 ソックスの剣技を右へ左へ交わしつつ、目つぶしの機会をうかがう。

 しかし隙が無い。

 避ける際に蹴りを入れてみたけれど、脛が痛いだけだった。

 彼の動きを見るに剣で受け止めた場合、力のない私は腕がしびれるのが落ちだろう。

 下手をしたら跳ね返される。

 もう少し動かせて体力を削るか、何か秘策を考えないと。


「なんで襲ってくるわけっ」

「マタタビやラない。マタタビ、俺たチのモノ」


 マタタビへの執念に魔に魅入られる要素があるのだろうか?マタタビかぁ。

 いや、考えるのは後だ。


 どうすれば……

 次の動作のときには左へ抜けようか……いや、あれは!


 私はソックスの左に避け、前転をして瓶を取った。

 ソックスは好機とみて突進してくる。


「食らえ!」


 瓶の中身をソックスに投げつける。


「うッ、うまま~ふわああ~」


 ソックスはマタタビの実をガッチリと持って食べ始め、地面に背中をこすり付けてゴロゴロ転がった。


「効いて良かった」


 私は残りのマタタビとホウカンの鞄を回収し、酔っぱらいのソックスの周囲に結界を張ってミカンの香りを充満させた。

 ソックスは恍惚の表情を一瞬苦痛に歪め、再び恍惚へと戻った。


「大丈夫だといいな」


 苦しそうなホウカンを放っては置けないので、重い彼の体を背負い小屋へと急ぎ戻った。



「ただいま、ユキちゃん、キズヴァン先生、ホウカンさんがしびれ薬吸っちゃったんだけど、どうしたらいい!?」


 バン、と戸を開けると、ユキちゃんがなにやらアカトラとエルを叱っていた。

 喧嘩でもしたのだろうか?

 それを横目にキズヴァン先生は私たちの方へやって来て、しびれ薬を見分し


「それ、火であぶって使うやつだから、とりあえずうがいして来たら?」

と冷静に言った。


 なんてことだ。

 慌てていて、うまく対処できなかっただけらしい。人騒がせな。



 ホウカンに水を渡し、ホウカンの奥さんの様子を聞いた。キズヴァン先生の薬が効いたらしく結構落ち着いたらしい。


「そしてそこの二人はどうしたの?」


 ユキちゃんに聞くと少し赤くなって、


「なんでもないの」

と言う。


 ほほう、なんでもないのか。


「ユキ様を侮辱するのはゆるせない!」

「私はただユキ様が心配で!」

「オレだって心配はしてるんだっ」


 アカトラとエルが何か蒸し返したらしく、再び口論になっていた。


「アカ……もういいから。和美ちゃんも帰ってきたし」

「ユキ様! なんでオレばっかり」


 エルはフフンと勝ち誇った顔をした。


「ユキちゃんモテモテじゃない」


 ハッ、思わず口に出してしまった。

 ユキちゃんはモジモジとうつむいた。


「和美、失礼だろうが」

「そうだそうだ」

「ハイハイ。すみませんね」


 焦る二人は息ぴったりだ。

 やっぱり君たちユキちゃんが好きだよね?


 私の恋愛は元の世界に帰らないとスタートラインにも立てないと言うのに、なに青春しちゃってるの? しかも面倒くさい感じに。

 爆発すればいいのに。

 ……いや、今は忍耐の時だ。

 ユキちゃんがいないと帰れないもの。


 お茶でも飲んで、過熱した思考をクールダウンさせよう。

 あ、これもまずい奴だ。うわぁ。

 私は大量の水で甘味を胃に流し込んだ。

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