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第35話 マタタビの加工

「いやあ、和美はすごく強いね」


 しびれ薬をなんとかうがいで流したホウカンが戻ってきた。カメレオンの魔物や、ソックスの戦いについてべた褒めしてくれる。

 照れるなあ。


「まだまだだと思うぞ、カメレオンの魔物は姿が見えなくなる以外はトカゲよりも弱いしな」


 アカトラが言う。


「確かに、手ごたえはあんまなかったけど、四体もいたんだよ! ソックスは殺しちゃいけなかったし!」

「うん、まあよくやったんじゃあないかな」


 私の勢いにアカトラはたじろいで、うんうんと適当に頷いた。


「マタタビ減ったけどな」


 エルがまた余計なことを言っている。もう。



 無事、マタタビを入手したので、私は小屋の裏で幾度となくマタタビを嗅いだ。

 なんか悪いことしているような気分になるなあ。しかし、小屋の中には猫又が四人もいるのだから仕方がない。

 う~ん。複雑な匂いだな。

 とりあえず誰かに実験してみるかな?


「誰か、マタタビの香り魔法に協力して欲しいんだけど」


 四人とも嫌そうな微妙な顔をした。なんだよ、もう。


「じゃあ、私、ナシルサの町に行って、危険な兵士さん連れてきますよ?」

 言うと渋々エルが

「お前のためじゃあないからな。国のためだ」

とツンツンしながら言った。



「じゃあ行くよ」

「あ……ああ」


 エルは不安そうな顔をしている。


『魔術結界 範囲はエルの顔周辺五センチ 香れマタタビ』


 なんとなく魔力が減らない感じがする。


「う~ん、特に体調は変化なしだ」

「そっか。私もなんか失敗かなって思った」

「魔術はイメージだからなあ」


 ひたすら嗅ぐしかないのだろうか?二人難しい顔をしているとキズヴァン先生が寄ってきた。


「あの僕、これからマタタビを保存できるように加工しようと思うんだけど、勇者様も来るかい。イメージするのに役に立つかもしれない」


 私はキズヴァン先生の好意に甘えることにした。


「わるいんだけど、ホウカン、三人を預かっておいてくれないかな」

「おうよ」


 しかし、とエルが反対した。


「門番はほとんど正気に戻ったとはいえ、他の兵に見つかったらどうする」

「とりあえず薪でも背負って薬草採りのふりでもすれば良い。フードさえかぶっていればあんまり不審がられなかったしな」


 私はホウカンの助言に従って上着のフードをしっかりかぶり、薪や、そのうちでいいと思っていたらしい薬草を何種類も持って、ナシルサのキズヴァン先生の薬屋を訪ねた。

 途中何人かの兵とすれ違ったが不審には思われなかったようだ。

 もし、見つかったら、ピンポイントでミカンの魔術を放って逃げるしかないのだけれど、あれは疲れるからあまりしたくない。

 ナシルサの町の中はあまり清潔ではなく、どことなく空気が淀んでいる気がする。

 キズヴァン先生のお店はその中にあって比較的明るい印象がする。


「なんか、町がこうなったのは魔王が復活してからなんだよね」


 キズヴァン先生が布のマスクをしながら言った。



 マタタビの加工はまず茹でるところから始まる。


「勇者様お願い」

と言われ、瓶をあけマタタビの虫こぶをよく洗い、鍋に投入。数分茹でる。取り出し、次は水のない鍋の中へ。


「じゃあ、僕の出番だね」


 キズヴァン先生はマスクを軽くなでた。


『風よ、乾かせ』


 鍋の中のマタタビが鍋の熱気と先生の風で見る見るうちに乾燥していく。

 先生は


「魔術はこの威力の風魔術しか使えないけど薬術にはピッタリだろう?」

と得意げに言った。


 先ほどよりマタタビの香りが強くなってきた気がする。


「あとは鉢ですり潰すんだけど、これが大変でさ」


 私が代わりにすり潰すこととなった。


「しょうしょう。しょんなかんずうぃ~」


 覗き込む先生の呂律が回らなくなってきている。


「先生酔ってない?」

「そうなんよねえ、酔っちゃうんだあよ。この辺で減っちゃうのさ~」


 私は先生が良しというまでひたすらマタタビをすり潰した。


「ありがとお、あとは瓶に入れて頂戴、あ、きみの分もわけわけね」


 こうしてマタタビの加工が完了した。



「あ~、今日はだいぶん楽ができたよ。ありがとうね」

「いえこちらこそ」

「イメージは出来たかい?」

「ええ、まあまあかな、ってくらいには」


 自信が無い声で私は答えた。


「せっかくだから、僕に魔術かけてみない?」


 瞳をらんらんと輝かせるキズヴァン先生は、なかなかのチャレンジャーのようだ。


「でも」

「はやくはやく~」

「じゃあ『香れ、マタタビの香り』」


 せかされて、甘いような、アルコールのような、科学の実験のような香りが部屋に充満する。


「やば、範囲指定忘れた!」

「はふ~ん、いいにゃああ~」


 先生はほろ酔いになっていた。普段から吸っているので多少耐性があるらしく、なんとか立てているようだ。


「らいじょうぶよん、お家にはぼくだけだし」


 しかし数秒後、外が騒がしくなった。


「ふにゃ~いいきもちいいい」

「あむあむしたいにゃあ」

「もっともっとだあああ」


 ひょっとして、ひょっとして……

 外に出ると周辺の道路に猫又たちが転がり転がり、うねうねしている。


「うわあああ『消臭!』」


 き、消えない!

 消臭魔術は薬屋周辺のみ効果を発揮し、マタタビの香りは今だ町の半分ほどに広がっているようだ。


「マタタビの魔術、コストパフォーマンス良すぎ!」

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