第13話 事実とお昼
「わ、わわわ、言います、言いますよう!」
ジプチはあわてている。みかんの匂いの魔術はまだ解除しない。
嘘を言わないとも限らないからだ。
「和美さんがもし魔王封印を放棄したら、もう戦う術はほとんどないのです。そして勇者は世界に一人しか存在出来ないです」
ほう、私はジプチの方をジッと見た。
「私を殺せば、また勇者をよべるの?」
「わかりません。過去二回の勇者様は協力していただき無事に帰還した例しかないですから」
目は怯えているが私の方をしっかり見ている。
答えも自分たちの都合の良いようには言っていない。もし脅すなら殺せば召喚できると言うはずだ。嘘の場合のメリットが思い付かない。
「僕としては協力いただきたいのですけどね」
「わかった。私だって自分の世界が恋しいからね。とりあえずは協力するけど、ひどい扱いをしたらわからないけど」
ちらりとエルの方を見る。もう懲りただろうか。ずいぶんぐったりしている。
「かっ和美さん! にっ匂いが……」
「あ、ゴメン」
『結界解除』
私は二人の結界を消し匂いを開放した。みかんの良い香りに刺激され、腹時計が昼時を主張した。
幸いにもメェオ王国にもお昼ご飯の習慣があり、無事に食事にありつく事ができた。デリック師弟の研究施設に戻りデリバリーだった。
朝よりは軽い感じだったので、もともと昼と夜を重視していた私には、少々物足りなかった。
エルはみかんの匂いの嗅ぎすぎで食欲がなく、ジプチの部屋に行って休んでいるらしい。
「ミケ兄のあんなに弱っている姿は初めて見ました。ひょっとしたらあの術、魔王や操られた人にも有効かもしれませんね」
それは大袈裟だろう、と私は思ったが、怒りに任せて使ったけれど他の匂いでも使う事が出来れば、面白いかも知れないなと思った。




