第12話 実験と結果
『水の玉よ』
マイナスイオンっぽいにおいがする。
『土の塊よ』
畑のにおいだ。おなかすいてきた。
『鉄の小槍よ』
鉄のにおいが……
『小さな木よ』
癒されるなあ。
『光の玉よ』
お日様のにおい。
『闇の玉よ』
湿っぽいにおい……
空き地の結界の中で基本の攻撃魔術を一通り試してみたところ、ほとんどの場合においのみ、再現された。
一部、これはにおいなのか? と疑問を抱くものもあったが、他がにおいなのだからたぶんにおいなのだろう。
回数を重ねるごとにジプチとエルの表情があきらめに近くなっていった。私だってがっかりさせたくって、やってるわけじゃない。
身体の強化魔術と魔術結界は一応成功した。とはいっても、初心者レベルでしかないけど。
もしかしたら、どれかひとつの属性だけが特化して強いかしれないと思って、すべての基本的魔法を見せてもらって、試してみたのだけど、結果は惨敗だった。
「役に立つのは全然無いじゃないか。本当に勇者様というには才能に問題ありだし、勇敢でもないし、秀でたものが無くてがっかりだ」
一通り終わるとエルはきつい言葉を投げつけてきた。どれだけ偉いのか知らないが、ここまで言われると、さすがにいらいらする。
私はやらなければならないから勇者になるだけで、好きでやっているわけではない。
召還さえなければ、普通の大学生として普通に日本で暮らしていたのに。
頭に血が上るというのはこういうことだろうか。私はエルを鋭い目つきで睨みながら術を唱えた。
『魔術結界 範囲はエルの周囲50センチ みかんの匂いよ充満しろ』
仕返しだ。若干は八つ当たりだが私は正当な怒りだと思っている。
猫は柑橘類の匂いが苦手だ。猫又が苦手かどうかは知らないが、嫌がらせにはなるだろう。
この術が成功するかはわからないが、なんとなく、うまくいく予感がした。
「私だって、好きでできないわけじゃないんだ! あんたはそんなこともわかんないの? もし私が魔王退治をやらないって言ったらどうなるのかな? ねえジプチ知ってる?」
「ええっとあの、その……」
ジプチが口ごもっている間に結界内に匂いが充満したらしく、エルが苦しそうにしている。ジプチの丸焼けの危機から救った時の様に結界を解除すればいいのに、パニックになっているのだろうか。むかつくので、しばらくそのままにしておこう。
「正直に言わないと同じ目にあわせるよ」
何かと親切にしてくれていたジプチだったが、それはやはり私が勇者だからなのだろう。
「そんな……」
『魔術結界 範囲はジプチの周囲50センチ みかんの匂いよゆっくり充満しろ』
私は以前からの疑問を明確にするため術を唱えた。




