第14話 好き嫌い
午後からは他の匂いも再現出来るか確認のために、魔術の練習をすることにした。場所は午前と同じく空き地。ジプチとエルも付いてきた。
相変わらずエルはぶすくれているが、少しは懲りたのか嫌みは言わない。
何の匂いにしようか。お昼に食べた料理は薄味だったし。
「この世界の人たちってどんな匂いが好きなんだろう」
「うーん。急に言われても思いつきませんね」
『魔術結界 ほのかに香れカツオの匂い』
私はとりあえず食べ物から再現してみた。いろいろと試してみたが、満腹なので余り二人には魅力的ではないらしい。
食べ物の香りが再現出来るのはいいことだ。ホームシックになってもそれっぽい食感の食べ物に魔術で故郷の香りづけが出来る。私の好きな、松茸のお吸い物が飲み放題だ。
逆に嫌いな匂いは、と聞くと
「やっぱりみかんなどの柑橘類ですかね。人によって好き嫌いが分かれますが、ミントなどもよくききます。」
私の世界の猫と同じようだった。
『ほのかに香れはじけるレモンの香り』
『ほのかに香れミントの香り』
ジプチはレモン、ミントともに嫌な顔をしたが、エルはミントの方は平気そうだった。
「ジプチは子供だな」
「子供大人は関係ないですよ。私のペットの猫は子供の頃からミント好きだったし」
「猫と一緒にするな!」
エルに怒られてしまったけれど、私は猫又と猫はわりと近いように思う。
「そうは言ってもこれはどう?」
私はエルの喉元を撫でてみる。柔らかくふわふわの毛が心地良い。今まで触った毛のなかでも、かなり高ランクだと思う。
「ちょ、まっ」
普通の猫ならゴロゴロ喉を鳴らす場所だ。エルはとたんに目を細め、気持ち良さそうにしている。
「ゴロゴロ……」
どうだ、私のゴッドハンド!
近所の荒ぶるボス猫さえ手なずけた実績をもっている。相手が大きくたって自信がある。
エルはこれ以上撫でると、地面に寝転がっておねだりしてきそうだったので、私は手を止めた。ツンっとすまして嫌みを言って来るような奴が崩壊するのは、若干優越感を感じられるだろうが、私には不気味だったからだ。
もうやめるの?みたいな目を向けないで欲しい。
ジプチも苦笑いをしている。
「まあ、私もあなた方猫又と猫が近くて違う生き物だと言うのは理解してるつもりだけどね。でも近いからこそ必殺かもしれない匂い、思いついたかも」
私は自信をもって胸をはった。
あの匂いのことを伝えると二人は顔を赤くした。




