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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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79/80

Episode 10-7 「帰ろう」

前書き

ここまで『神になるには、遅すぎた』を読んでいただき、本当にありがとうございます。

この物語も、いよいよ最終章となりました。

何者でもなかった一人の男は、数え切れない出会いと別れを経験し、多くの勇者や仲間達と共に国を築いてきました。

正義、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、そして観測。

それぞれがハザムへ残した答えが、この最終章で一つになります。

最後まで、ハザム・ヴェルという一人の男の生き様を見届けていただければ幸いです。


青空。


風が吹く。


白い世界は。


もう白くなかった。


草木が芽吹き。


鳥が飛び。


川が流れている。


ハザムは静かに空を見上げた。


「終わったな」


ナギが隣へ来る。


「ああ」


「長かった」


二人は笑う。


その時。


世界意思が歩いてきた。


手には。


一つの光。


小さな。


優しい光だった。


「ハザム」


「これは」


「創造主の核」


ハザムは光を見る。


「これを継げば」


「お前は」


「新しい創造主になれる」


静寂。


少年が息を呑む。


ナギも。


何も言わない。


世界意思は続ける。


「世界は」


「管理者を必要とする」


「資格があるのは」


「お前だけ」


光は。


ゆっくりハザムの前へ浮かぶ。


手を伸ばせば。


届く。


創造神。


永遠。


無限。


世界そのものになれる。


レオンも。


シエルも。


マリアも。


もう二度と失わない力。


誰も死なない世界。


誰も悲しまない世界。


手を伸ばせば。


叶う。


ハザムは。


静かに光を見つめた。


長い沈黙。


やがて。


小さく笑う。


「悪い」


光を。


そっと押し返した。


世界意思が目を見開く。


「何故」


ハザムは空を見る。


青い空。


雲が流れる。


風が吹く。


「疲れた」


ナギが吹き出した。


「ははは!」


「それがお前の答えか!」


ハザムも笑う。


「ああ」


「もう十分だ」


「これ以上」


「神様なんて」


「やりたくない」


世界意思は困惑する。


「しかし」


「世界は」


ハザムは首を振る。


「世界は」


「俺がいなくても回る」


帝国を思い出す。


エリス。


地方を治めるマリアの子孫。


白騎士。


黒騎士。


多くの仲間。


皆がいる。


「俺が守ったんじゃない」


「皆が守ったんだ」


ナギは頷く。


「そうだな」


ハザムは世界意思へ笑いかける。


「お前も」


「休め」


世界意思は。


その言葉を聞いて。


静かに涙を流した。


「休む……」


「はい」


「少しだけ」


「休みます」


ハザムは頷く。


「それでいい」


世界意思は。


創造主の核を見る。


そして。


自らの胸へ。


静かに取り込んだ。


眩い光が。


世界中へ広がる。


空は青く。


海は輝き。


花が咲く。


命が芽吹く。


世界意思は微笑んだ。


「今度は」


「管理ではなく」


「見守ります」


ナギが肩を叩く。


「それで十分だ」


ハザムは振り返る。


「帰るか」


「帝国へ」


ナギは笑う。


「ああ」


「腹も減ったしな」


少年も笑う。


世界意思も。


初めて自然に笑った。


四人は歩き出す。


帰る場所へ。


それぞれの。


大切な場所へ。


長い旅は。


終わった。


いや。


新しい日常が。


ようやく始まろうとしていた。

後書き

『神になるには、遅すぎた』、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

この物語は、最強の神が世界を救う物語ではありません。

誰にも必要とされなかった一人の男が、人との出会いを通して「生きる意味」を見つける物語でした。

主人公だけでなく、レオン、クメル、シエル、ガロウ、リノア、ユリウス、マリア、アベル、ナギ──そして名もなき人々一人ひとりが、この世界を作ってくれました。

タイトルの『神になるには、遅すぎた』には、二つの意味を込めています。

神になろうとした時には、もう人を愛しすぎていたこと。

そして、人を愛したからこそ、本当の神にはなれなかったこと。

もしこの作品で、誰か一人でも心に残る人物がいたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

長い旅に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

また、次の物語でお会いしましょう。

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