Episode 10-6 「初めての友達」
前書き
ここまで『神になるには、遅すぎた』を読んでいただき、本当にありがとうございます。
この物語も、いよいよ最終章となりました。
何者でもなかった一人の男は、数え切れない出会いと別れを経験し、多くの勇者や仲間達と共に国を築いてきました。
正義、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、そして観測。
それぞれがハザムへ残した答えが、この最終章で一つになります。
最後まで、ハザム・ヴェルという一人の男の生き様を見届けていただければ幸いです。
白い光が。
静かに世界へ溶けていく。
創造主は消えた。
戦いは終わった。
誰も動かない。
白い世界には。
静かな風だけが吹いていた。
世界意思は。
その場へ立ち尽くしていた。
創造主がいた場所を。
ただ見つめている。
「終わった……」
初めて。
役目がなくなった。
何億年。
世界を管理し続けた存在。
初めて。
何をすればいいのか分からなくなった。
「私は……」
「何をすればいい」
誰にも命令されない。
誰にも指示されない。
その事実が。
世界意思を戸惑わせていた。
ナギは笑った。
「知らねぇよ」
世界意思は振り返る。
「え?」
「好きに生きろ」
「好き……」
その言葉は。
世界意思の辞書にはなかった。
「好きとは」
「何だ」
ナギは頭を掻く。
「難しいこと聞くな」
少し考え。
少年を見る。
「お前」
「腹減ってるか?」
少年は少し驚きながら頷いた。
「うん……」
ナギは笑う。
「俺もだ」
「だから飯食う」
「それだけだ」
世界意思は首を傾げる。
「それが」
「好き?」
「違うかもしれねぇ」
「でも」
「腹減ったから飯食う」
「眠いから寝る」
「会いたい奴がいるから会いに行く」
「理由なんて」
「そのくらいでいい」
世界意思は。
静かに考える。
「会いたい者……」
ナギは親指でハザムを指した。
「いるだろ」
世界意思は。
ハザムを見る。
ハザムは笑った。
「帝国へ来るか」
世界意思は驚く。
「……いいのか」
「駄目な理由があるか?」
「私は」
「敵だった」
ハザムは肩をすくめた。
「昨日まで敵だった奴なんて」
「山ほどいる」
ナギは吹き出した。
「確かにな」
ガロウ。
マリア。
ユリウス。
皆。
一度は敵だった。
それでも。
仲間になった。
世界意思は。
ゆっくり下を向く。
「私は」
「友達がいない」
ナギは笑う。
「知ってる」
「だから」
一歩前へ出る。
右手を差し出す。
「友達になるか?」
世界意思は。
その手を見る。
何億年。
誰にも差し出されなかった手。
震えながら。
ゆっくり。
その手を重ねる。
「……よろしく」
ナギは笑った。
「よろしく」
その瞬間。
白い世界に。
初めて。
色が生まれた。
青空。
緑の草原。
小さな花。
風の匂い。
世界意思は。
目を見開く。
「これは……」
ハザムが微笑む。
「世界だ」
「お前が」
「ずっと守ってきた世界だ」
世界意思は。
初めて涙を流した。
理由は分からない。
悲しくもない。
苦しくもない。
それでも。
涙だけが止まらなかった。
ナギは肩を叩く。
「泣き虫だな」
世界意思は笑う。
ぎこちなく。
少しだけ。
「……そうかもしれない」
青空の下。
四人は並んで歩き出す。
長い孤独は。
ようやく。
終わりを迎えた。
【前書き】
四字熟語が真名になる世界。
臨機応変、猪突猛進、医食同源の三人が、今日も腹を空かせて旅をします。
バトルあり、料理あり、ちょっとした言葉の物語あり。
よろしくお願いします。




