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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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75/80

Episode 10-3 「あの日の夢」

前書き

ここまで『神になるには、遅すぎた』を読んでいただき、本当にありがとうございます。

この物語も、いよいよ最終章となりました。

何者でもなかった一人の男は、数え切れない出会いと別れを経験し、多くの勇者や仲間達と共に国を築いてきました。

正義、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、そして観測。

それぞれがハザムへ残した答えが、この最終章で一つになります。

最後まで、ハザム・ヴェルという一人の男の生き様を見届けていただければ幸いです。


創造主が。


ゆっくり手を上げる。


「なら」


「証明しろ」


世界が反転した。


白い世界が消える。


ハザムの意識は。


ゆっくり闇へ沈む。


・・・


「……お客様?」


優しい声。


目を開ける。


見覚えのある天井。


狭い部屋。


柔らかな照明。


古びたソファ。


甘い香り。


「ここは……」


扉が開く。


一人の女性が入ってくる。


転生する前。


人生最後の日。


あの日。


初めて。


自分の心を見てくれた女性だった。


何も変わっていない。


優しく笑っている。


「久しぶり」


ハザムは苦笑した。


「そうだな」


女性は隣へ座る。


静かな時間。


何も話さない。


それだけで心地良かった。


やがて。


女性が微笑む。


「どうだった?」


「向こうの世界」


ハザムは天井を見上げる。


少し考えて。


笑った。


「大変だった」


「毎日」


「事件ばっかりだ」


女性も笑う。


「でも」


「楽しかった?」


ハザムは迷わない。


「ああ」


「最高だった」


レオン。


クメル。


シエル。


ノリア。


ガロウ。


リノア。


ユリウス。


マリア。


ジュリア。


アベル。


エリス。


ナギ。


一人ずつ。


笑顔が浮かぶ。


「友達ができた」


「家族もできた」


「泣いた」


「笑った」


「怒った」


「いっぱい後悔もした」


少しだけ照れ臭そうに笑う。


「でも」


「生きてて良かった」


女性は。


静かに頷いた。


「良かったね」


その一言で。


胸が熱くなる。


転生した意味。


神になった意味。


ようやく。


分かった気がした。


女性が立ち上がる。


「もう時間」


ハザムも立ち上がる。


「名前」


「結局」


「聞けなかったな」


女性は少し笑う。


「知らないままでいいよ」


「どうして?」


「その方が」


「思い出は綺麗だから」


少しだけ。


目を潤ませながら。


笑う。


「あなた」


「すごく良い顔になったね」


ハザムは驚く。


転生前。


誰にも言われたことがない言葉だった。


女性は扉へ向かう。


開ける前に。


一度だけ振り返る。


「行ってらっしゃい」


「最後のお仕事」


ハザムは笑う。


「ああ」


「行ってくる」


扉が閉まる。


景色が崩れる。


部屋も。


光も。


全部消えていく。


最後に。


女性の声だけが聞こえた。


「ありがとう」


・・・


ハザムは。


ゆっくり目を開ける。


白い世界。


創造主。


ナギ。


世界意思。


全部。


そこにあった。


ナギが笑う。


「長い夢だったな」


ハザムも笑う。


「ああ」


「いい夢だった」


灰色の炎が。


今までで一番。


優しく燃え上がる。


ハザムは創造主を見る。


「もう迷わない」


「俺は」


「この世界を守る」


その言葉は。


神の宣言ではなかった。


一人の男が。


自分の人生を肯定した。


ただ。


それだけの言葉だった。

後書き

『神になるには、遅すぎた』、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

この物語は、最強の神が世界を救う物語ではありません。

誰にも必要とされなかった一人の男が、人との出会いを通して「生きる意味」を見つける物語でした。

主人公だけでなく、レオン、クメル、シエル、ガロウ、リノア、ユリウス、マリア、アベル、ナギ──そして名もなき人々一人ひとりが、この世界を作ってくれました。

タイトルの『神になるには、遅すぎた』には、二つの意味を込めています。

神になろうとした時には、もう人を愛しすぎていたこと。

そして、人を愛したからこそ、本当の神にはなれなかったこと。

もしこの作品で、誰か一人でも心に残る人物がいたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

長い旅に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

また、次の物語でお会いしましょう。

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