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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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74/80

Episode 10-2 「価値」

前書き

ここまで『神になるには、遅すぎた』を読んでいただき、本当にありがとうございます。

この物語も、いよいよ最終章となりました。

何者でもなかった一人の男は、数え切れない出会いと別れを経験し、多くの勇者や仲間達と共に国を築いてきました。

正義、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、そして観測。

それぞれがハザムへ残した答えが、この最終章で一つになります。

最後まで、ハザム・ヴェルという一人の男の生き様を見届けていただければ幸いです。


白い世界。


静寂。


創造主は。


足元を見ていた。


そこには。


魔物の死骸。


観測者。


砕けた白い大地。


全てが転がっている。


創造主は小さく呟く。


「失敗作だ」


その一言だった。


ハザムの眉が動く。


「何?」


創造主は続ける。


「壊れたなら」


「作り直せばいい」


「世界も」


「命も」


「神も」


「全て同じ」


ハザムは黙っていた。


創造主はゆっくり歩く。


倒れた観測者へ近付く。


指先で触れる。


次の瞬間。


消えていた観測者が。


何事もなかったように立ち上がった。


少年が息を呑む。


「生き返った……」


創造主は首を振る。


「違う」


「作り直しただけだ」


ナギが苦笑する。


「だから嫌いなんだよ」


「お前のその考え方」


創造主は理解できない。


「違いは?」


「同じ存在だ」


ナギは笑わない。


「違う」


「そいつは」


「さっきまでいた奴じゃない」


創造主は沈黙する。


理解できない。


「記憶」


「能力」


「人格」


「全て同一」


「なら同じだ」


ハザムが歩き出す。


倒れていた一体のゴブリン。


まだ息がある。


ハザムはしゃがみ込む。


「すまなかった」


そっと頭へ手を置く。


灰色の光が包む。


傷だけが癒える。


死は戻らない。


ゴブリンはゆっくり起き上がる。


王を見る。


深く頭を下げた。


ハザムは笑う。


「もう戦わなくていい」


ゴブリンは。


静かに仲間の方へ歩いていく。


創造主は見ていた。


「何故」


「再創造しない」


ハザムは立ち上がる。


「生きてるからだ」


「死ねば」


「作り直せる」


「違う」


ハザムは首を振る。


「代わりなんか」


「いない」


その言葉で。


ナギが笑った。


「やっと言えたな」


ハザムも少し笑う。


「三百年かかった」


創造主は。


二人を見る。


理解できない。


「命は」


「交換可能」


「個体差は誤差」


少年が前へ出る。


「違う!」


初めてだった。


少年が叫んだ。


「僕のお母さんは!」


「一人しかいない!」


静寂。


創造主は少年を見る。


「死んだ」


少年は頷く。


涙を浮かべながら。


「だから!」


「もう会えない!」


「代わりなんて!」


「いないんだ!」


創造主は。


何も答えられなかった。


世界意思が。


静かに呟く。


「代わり……」


その言葉を。


何度も繰り返す。


「代わりは」


「いない……」


ハザムは創造主を見つめる。


「お前は」


「世界を創れた」


「でも」


「命は創れなかった」


創造主の瞳が揺れる。


初めて。


否定された。


神として。


初めて。


「命とは」


ハザムは答える。


「誰かが覚えている限り」


「生き続けるものだ」


「だから」


「作り直せない」


その一言で。


創造主の世界が。


初めて音を立てて。


揺らぎ始めた。

後書き

『神になるには、遅すぎた』、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

この物語は、最強の神が世界を救う物語ではありません。

誰にも必要とされなかった一人の男が、人との出会いを通して「生きる意味」を見つける物語でした。

主人公だけでなく、レオン、クメル、シエル、ガロウ、リノア、ユリウス、マリア、アベル、ナギ──そして名もなき人々一人ひとりが、この世界を作ってくれました。

タイトルの『神になるには、遅すぎた』には、二つの意味を込めています。

神になろうとした時には、もう人を愛しすぎていたこと。

そして、人を愛したからこそ、本当の神にはなれなかったこと。

もしこの作品で、誰か一人でも心に残る人物がいたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

長い旅に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

また、次の物語でお会いしましょう。

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