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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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73/80

最終章 Episode 10-1

前書き

ここまで『神になるには、遅すぎた』を読んでいただき、本当にありがとうございます。

この物語も、いよいよ最終章となりました。

何者でもなかった一人の男は、数え切れない出会いと別れを経験し、多くの勇者や仲間達と共に国を築いてきました。

正義、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、そして観測。

それぞれがハザムへ残した答えが、この最終章で一つになります。

最後まで、ハザム・ヴェルという一人の男の生き様を見届けていただければ幸いです。


「創造主」



---


白い世界。


黒い腕が。


ゆっくりと裂け目から伸びる。


誰も動けない。


世界意思ですら。


その腕を見た瞬間。


膝をついた。


「創造主……」


震える声だった。


ハザムは眉をひそめる。


「お前が恐れる相手か」


返事はない。


黒い腕は。


静かに世界を掴む。


握る。


ミシッ……


白い世界全体が軋んだ。


観測者達が。


一斉に消えていく。


悲鳴もない。


抵抗もない。


ただ。


存在そのものが消滅していく。


少年は震えた。


「な……何が起きてるの……」


ナギは剣を握る。


その表情から。


いつもの笑みは消えていた。


「ハザム」


「逃げろ」


ハザムは笑う。


「断る」


「相手が悪い」


「俺よりか?」


ナギは言葉を失う。


少しだけ笑う。


「……違ぇな」


黒い裂け目が。


さらに広がる。


腕。


肩。


胸。


ゆっくりと。


巨大な影が姿を現す。


だが。


顔だけは見えない。


黒い霧が覆っていた。


声だけが響く。


「久しいな」


その声は。


男とも。


女とも。


老人とも。


子供とも違う。


聞いた者それぞれに。


違う声で聞こえる。


創造主は。


世界意思を見下ろす。


「よく管理した」


「役目は終わりだ」


世界意思は震えていた。


「申し訳……ありません」


「対象世界の管理に失敗しました」


創造主は答えない。


ただ。


右手を軽く振る。


その瞬間。


世界意思の左腕が。


音もなく消えた。


少年が叫ぶ。


「やめろ!」


世界意思は動かない。


抵抗もしない。


「これが」


「罰」


ハザムが前へ出る。


「おい」


創造主の視線が。


初めてハザムへ向く。


「誰だ」


静かな一言。


ハザムは答える。


「ハザム・ヴェル」


「灰神皇だ」


創造主は。


少しだけ首を傾げた。


「知らぬ」


その一言だけだった。


ハザムは笑う。


「だろうな」


「なら覚えろ」


灰色の炎が。


静かに燃え上がる。


創造主は。


炎を一瞥する。


興味もなく。


「小さいな」


たった四文字。


その言葉だけで。


灰色の炎が。


一瞬だけ。


消えかけた。


ナギの顔色が変わる。


「まずい!」


創造主は。


何もしていない。


ただ。


存在しただけ。


それだけで。


世界法則そのものが。


塗り替えられていた。


「お前が」


創造主はハザムを見る。


「新しい神か」


ハザムは答える。


「違う」


少しだけ笑う。


「人間だ」


創造主は。


初めて。


笑った。


嘲笑だった。


「人間」


「その程度が」


「神を名乗るか」


ハザムは首を振る。


「誰も」


「神になりたくてなったわけじゃない」


創造主は黙る。


ハザムは一歩踏み出した。


「俺は」


「守りたかっただけだ」


「仲間を」


「国を」


「世界を」


創造主は静かに答える。


「壊せば」


「また作ればいい」


その一言で。


ハザムの表情から笑みが消えた。


ナギも。


世界意思も。


少年も。


誰一人として言葉を発しない。


長い沈黙。


やがて。


ハザムは静かに呟いた。


「……そうか」


灰色の炎が。


ゆっくりと。


世界全体へ広がっていく。


その瞳には。


怒りはなかった。


ただ。


決意だけが宿っていた。


「なら」


「お前とは」


「最後まで分かり合えない」


創造主は。


初めて。


ハザムを敵として認識した。


白い世界と。


灰色の世界。


二つの世界が。


静かにぶつかり合う。


長い旅の終着点。


最後の戦いが。


今、始まろうとしていた。

後書き

『神になるには、遅すぎた』、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

この物語は、最強の神が世界を救う物語ではありません。

誰にも必要とされなかった一人の男が、人との出会いを通して「生きる意味」を見つける物語でした。

主人公だけでなく、レオン、クメル、シエル、ガロウ、リノア、ユリウス、マリア、アベル、ナギ──そして名もなき人々一人ひとりが、この世界を作ってくれました。

タイトルの『神になるには、遅すぎた』には、二つの意味を込めています。

神になろうとした時には、もう人を愛しすぎていたこと。

そして、人を愛したからこそ、本当の神にはなれなかったこと。

もしこの作品で、誰か一人でも心に残る人物がいたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

長い旅に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

また、次の物語でお会いしましょう。

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