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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 9-9 「最初の観測者」

前書き

第九章「神殺し」。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

建国、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、観測。

ハザムは七人の勇者と一人の観測者から、多くの答えを受け取りました。

そして物語は、いよいよ最終局面へ入ります。

この章では、これまで語られなかった「世界の真実」と、「神」と「勇者」の本当の意味が明らかになります。

ここから先は、ハザムだけでなく、この物語そのものの答えへ向かう旅です。

最後まで見届けていただければ幸いです。


白い世界が。


静まり返る。


世界意思は。


初めて言葉を失っていた。


「寂しかっただろ」


ハザムの一言。


それだけで。


世界が震えている。


長い沈黙。


やがて。


世界意思が呟いた。


「……寂しい」


少年が息を呑む。


ナギも。


静かに目を閉じた。


「やっと」


「言えたな」


白い世界に。


小さな椅子が現れる。


誰も創っていない。


ただ。


そこにあった。


世界意思は。


玉座ではなく。


その椅子へ座った。


姿が変わる。


巨大な神ではない。


一人の少年。


ナギと同じくらいの年頃だった。


「俺……?」


少年が呟く。


世界意思は首を振る。


「違う」


「昔の私」


ハザムは何も言わない。


ただ。


歩みを止めた。


世界意思は。


自分の手を見つめる。


「私は」


「世界ではない」


ナギが頷く。


「知ってた」


「観測者だからな」


世界意思は続ける。


「私は」


「最初の観測者」


その瞬間。


白い世界に。


無数の景色が映る。


何もない宇宙。


生まれたばかりの星。


芽吹く命。


滅ぶ文明。


数え切れない世界。


「私は」


「全てを見届けた」


「何億年も」


「一人で」


少年が震える。


「ずっと……?」


「ずっと」


世界意思は笑わない。


泣きもしない。


ただ。


事実だけを語る。


「仲間は」


「必要ないと言われた」


「感情は」


「不要と言われた」


「観測だけを続けろ」


「そう命じられた」


ナギは苦く笑う。


「俺達と同じだ」


「違う」


世界意思が首を振る。


「お前達には」


「終わりがある」


「私は」


「終われない」


ハザムが尋ねる。


「誰に命じられた」


世界意思は。


初めて。


空を見上げた。


その視線の先には。


誰もいない。


「覚えていない」


「忘れた」


「消えた」


「最初の創造主」


ナギの瞳が揺れる。


「……上がいるのか」


「分からない」


世界意思は静かに言う。


「気付けば」


「私は一人だった」


長い。


長い年月。


世界を守るためだけに。


世界を管理するためだけに。


命を数え。


文明を数え。


勇者を送り。


神を滅ぼす。


それだけを。


永遠に繰り返した。


ハザムは。


静かに笑った。


「なら」


「もう終わりにしろ」


世界意思は顔を上げる。


「終われない」


「役目がある」


「役目なんか」


ハザムは首を振る。


「誰かが終わらせなきゃ」


「永遠に続くぞ」


世界意思は。


初めて迷った。


「……終わる」


その言葉を。


口にしたことがなかった。


「私は」


「終わっても」


「いいのか」


誰にも答えられなかった問い。


ナギが笑う。


「いいに決まってる」


「三百年前」


「俺も同じこと言われた」


世界意思は。


ナギを見る。


「友達がな」


ナギは。


ハザムを指差した。


「こいつに」


ハザムは苦笑する。


「勝手に人の台詞を使うな」


「細けぇことはいい」


三人の間に。


初めて。


静かな空気が流れる。


その時だった。


世界の果てから。


ゴゴゴゴゴ……


重い音が響く。


白い世界に。


巨大な亀裂が走る。


世界意思が立ち上がる。


「違う」


「これは」


ナギも振り向く。


「誰だ……?」


ハザムは目を細めた。


亀裂の向こう。


白よりも深い闇。


そこから。


一本の黒い腕が。


ゆっくりと伸びてきた。


世界意思の顔から。


初めて。


完全に余裕が消える。


「来た」


震える声。


「創造主だ」


黒い腕が。


世界を掴む。


その瞬間。


白い世界全体に。


無数の亀裂が走った。


最終章へ続く。

後書き

第九章が始まりました。

タイトルは「神殺し」。

ですが、この章は単純な「神を倒す物語」ではありません。

神とは何か。

勇者とは何か。

そして、人はなぜ誰かを救おうとするのか。

これまで積み重ねてきた全ての章が、この章へと繋がっています。

次章はいよいよ最終章です。

長い旅も、あと少し。

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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