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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 9-8 「世界意思」

前書き

第九章「神殺し」。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

建国、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、観測。

ハザムは七人の勇者と一人の観測者から、多くの答えを受け取りました。

そして物語は、いよいよ最終局面へ入ります。

この章では、これまで語られなかった「世界の真実」と、「神」と「勇者」の本当の意味が明らかになります。

ここから先は、ハザムだけでなく、この物語そのものの答えへ向かう旅です。

最後まで見届けていただければ幸いです。


白い魂が。


震えた。


世界意思は。


初めて沈黙する。


長い。


静寂。


やがて。


ゆっくりと口を開いた。


「理解不能」


「忠誠」


「友情」


「愛」


「信仰」


「死」


「全て」


「不要な概念」


ハザムは笑う。


「だから」


「お前は独りなんだ」


その言葉で。


白い世界が止まる。


世界意思は。


何も答えない。


ナギが小さく息を吐いた。


「……効いたな」


少年が尋ねる。


「え?」


「こいつ」


「生まれてから一度も」


「誰かと並んだことがねぇ」


世界意思が否定する。


「不要」


「世界は一つ」


「意思も一つ」


「複数は混乱を生む」


ハザムは首を振る。


「違う」


「一人じゃ」


「世界は作れない」


その瞬間。


ハザムの背後に。


無数の人影が現れた。


ユリア。


レオン。


クメル。


シエル。


セイジ。


ノリア。


ガロウ。


リノア。


ユリウス。


マリア。


ジュリア。


アベル。


エリス。


生きている者。


死んだ者。


皆。


幻のように。


ハザムの後ろへ並ぶ。


世界意思。


「幻影」


「否定」


ハザムは静かに笑う。


「幻じゃない」


胸へ手を当てる。


「ここにいる」


「俺は」


「一人で神になったんじゃない」


一歩。


前へ出る。


「みんなに」


「神にされた」


ナギは笑った。


「それでいい」


世界意思。


「理解不能」


「他者へ依存」


「欠陥」


「違う」


ハザムは即答する。


「信頼だ」


その一言で。


背後の幻影達が。


一斉に光り始めた。


レオンが笑う。


シエルが本を閉じる。


ノリアが鈴を鳴らす。


ガロウが煙草を咥える。


マリアが祈る。


ジュリアが微笑む。


アベルが剣を肩へ担ぐ。


そして。


ユリアが。


ハザムの背中を押した。


「行ってらっしゃい」


優しい声。


ハザムは。


振り返らない。


「行ってくる」


幻影は。


静かに消えた。


世界意思は。


その光景を見つめている。


「記録に存在しない」


「当然だ」


ナギが笑う。


「思い出だからな」


世界意思。


「思い出」


「記録との差異を確認」


「定義不能」


ハザムは歩き出す。


一歩。


また一歩。


玉座との距離が縮まる。


世界意思は。


初めて。


後ろへ一歩下がった。


少年が目を見開く。


「逃げた……」


ナギは首を振る。


「違う」


「怖がったんだ」


世界意思。


「恐怖」


「否定」


だが。


声が僅かに乱れる。


「恐怖という感情は」


「存在しない」


ハザムは。


もう目の前まで来ていた。


玉座まで。


あと数歩。


「世界」


静かな声。


「お前」


「寂しかっただろ」


その一言で。


世界意思の瞳が。


初めて。


大きく揺れた。


白い世界全体が。


ドクン――


まるで。


巨大な心臓の鼓動のように。


脈打った。


ナギは目を細める。


「そういうことか……」


世界意思。


それは。


全てを支配する神ではない。


誰にも理解されず。


誰にも寄り添われず。


永遠に一人で世界を見続けてきた、


最初の孤独だった。

後書き

第九章が始まりました。

タイトルは「神殺し」。

ですが、この章は単純な「神を倒す物語」ではありません。

神とは何か。

勇者とは何か。

そして、人はなぜ誰かを救おうとするのか。

これまで積み重ねてきた全ての章が、この章へと繋がっています。

次章はいよいよ最終章です。

長い旅も、あと少し。

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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