Episode 1-6 「再構築」
いつも読んでいただきありがとうございます。
『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。
主人公は決して善人ではありません。
ですが、悪人とも少し違います。
長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。
そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
夜だった。
昼間の騒ぎが嘘みたいに、集落は静かだった。
だが静かなだけだ。
誰も眠れてはいない。
西門近くには、まだ血の匂いが残っている。
リナの遺体は、布をかけられ、集落の中央に安置されていた。
泣いている者もいる。
黙って座り込んでいる者もいる。
誰も、ハヤマへ近づこうとはしなかった。
怖かったのだ。
昼間の“あれ”を見てしまったから。
あれは戦いじゃない。
災害だった。
ハヤマは、一人で西門跡に座っていた。
壊れた柵。
血。
肉片。
そして。
カズキの死体。
正確には、“死体だったもの”。
腕も脚も潰れている。
顔も半分原型を失っていた。
なのに。
ハヤマの頭の中では、ずっと声が響いていた。
> 《再構築可能》
《生命因子保存中》
《高位個体生成を推奨》
気持ち悪かった。
だが同時に。
理解してしまう。
この能力は、死を終わりとして認識していない。
材料。
組み換え。
再利用。
そんな風に捉えている。
「……ハヤマ」
後ろから声がした。
ユリアだった。
昼間から、ずっと黙っている。
ハヤマは振り返らない。
「皆、怯えてる」
「……そうか」
「私も」
ハヤマの肩が、わずかに揺れる。
ユリアは少し近づいた。
「昼のハヤマ、怖かった」
その言葉が、妙に刺さる。
ハヤマはしばらく黙っていた。
それから、低く言う。
「……しょうがねぇだろ」
「しょうがない?」
「殺されたんだぞ」
声が荒くなる。
「目の前で」
「やっと作った場所だったんだ」
「なのに、あいつ……っ」
そこで言葉が止まる。
怒りが戻ってくる。
だが。
その怒りの奥に、別の感覚が混ざっていた。
もっと冷たい何か。
ハヤマは視線を落とす。
カズキの死体を見る。
すると。
また理解してしまう。
骨格。
筋肉。
魔力の流れ。
適合率。
どう組み換えれば、もっと強くなるか。
全部、“分かる”。
「……やめろ」
思わず呟く。
だが止まらない。
頭の奥で、能力が囁いてくる。
使え。
作れ。
もっと強い命を。
ハヤマは頭を押さえる。
「クソ……!」
ユリアが静かに近づく。
「……使うの?」
ハヤマは答えない。
答えられない。
使えば、多分もっと強い存在が生まれる。
この世界は危険だ。
また敵が来る。
守るためには力がいる。
理屈は分かる。
だが。
「これじゃ……」
ハヤマの喉が震える。
「人じゃねぇだろ……」
ユリアは少し黙る。
夜風が吹く。
銀髪が揺れる。
その時。
視界に文字が浮かんだ。
> 《感情同期率:74%》
《精神接続 安定化》
次の瞬間。
ハヤマの中へ、ユリアの感情が流れ込んできた。
不安。
恐怖。
でも。
それ以上に。
“置いていかれたくない”という感情。
ハヤマが目を見開く。
ユリアも驚いた顔をしていた。
どうやら向こうにも、こちらが流れている。
怒り。
喪失。
そして。
ほんの少しの、孤独。
ユリアは小さく息を吐く。
「……ハヤマ」
「なんだ」
「一人にならないで」
その言葉に。
ハヤマの中の何かが、一瞬だけ人間へ戻る。
だが。
同時に。
地面の死体へ視線が落ちる。
使える。
その感覚が、消えない。
ハヤマはゆっくり立ち上がった。
そして。
カズキの亡骸へ手を伸ばす。
空間が、歪む。
黒い光が滲み出す。
ユリアが息を呑む。
ハヤマは低く呟いた。
「……これが最後だ」
その言葉が。
誰に向けたものだったのか。
ハヤマ自身にも、もう分からなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。
この作品は、戦いや能力だけではなく、
「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」
を描いていけたらと思っています。
よければ感想などいただけると励みになります。
次回もよろしくお願いします。




