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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 9-5 「世界の兵士」

前書き

第九章「神殺し」。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

建国、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、観測。

ハザムは七人の勇者と一人の観測者から、多くの答えを受け取りました。

そして物語は、いよいよ最終局面へ入ります。

この章では、これまで語られなかった「世界の真実」と、「神」と「勇者」の本当の意味が明らかになります。

ここから先は、ハザムだけでなく、この物語そのものの答えへ向かう旅です。

最後まで見届けていただければ幸いです。


白い世界が。


揺れた。


魔物の大軍が。


観測者達へ雪崩れ込む。


骸骨兵の剣が。


白い衣を斬り裂く。


ゴブリンが飛びかかり。


オークが叩き潰す。


空では。


ワイバーンの群れが旋回する。


炎。


毒。


雷。


無数の攻撃が。


白い世界を染めていく。


観測者達は。


次々に消えていった。


一人。


十人。


百人。


それでも。


魔物達は止まらない。


「押してる……」


少年が呟く。


ナギは剣を肩へ乗せた。


「そりゃそうだ」


「こいつらは」


「何百年も生き残ってきた連中だからな」


先頭では。


白騎士が剣を振るう。


一閃。


十人の観測者が。


同時に両断される。


その隣。


黒騎士の姿が消えた。


次の瞬間。


観測者達の背後へ現れる。


漆黒の剣が。


静かに振り抜かれた。


白い光が。


一斉に崩れる。


二人は。


言葉を交わさない。


目も合わせない。


それでも。


互いの動きを理解していた。


白が前を砕き。


黒が後ろを断つ。


かつて。


生きていた頃と同じように。


ナギは小さく笑う。


「相変わらず」


「息だけは合ってんな」


ハザムは。


玉座だけを見ていた。


世界意思は動かない。


観測者達が。


どれだけ消えても。


ただ。


戦況を見つめている。


「敵性戦力」


「二万四千消失」


「侵食率七十一%」


ハザムが告げる。


「降伏しろ」


「拒否」


「なら」


「全部奪う」


灰色の炎が広がる。


さらに大地が生まれる。


森林。


山脈。


海。


灰神圏の領土が。


白い世界を塗り替えていく。


「侵食率七十九%」


「侵食率八十三%」


少年が目を見開く。


「勝てる……」


「このままなら」


「違う」


ナギが答えた。


笑っていない。


「まだ」


「何も始まってねぇ」


少年が振り向く。


その瞬間。


世界意思が。


右手を上げた。


「記録完了」


白い世界が。


静止した。


魔物達の咆哮。


飛び散る炎。


振り下ろされた剣。


全てが。


止まる。


ハザムだけが。


僅かに眉を動かした。


「解析対象」


「灰神皇の世界」


「構成情報を取得」


空間に。


無数の文字が浮かぶ。


骸骨兵。


ゴブリン。


オーク。


ワイバーン。


巨人。


地竜。


一体ずつ。


名前が記されていく。


少年が震える。


「何を……」


ナギは舌打ちした。


「観測だ」


「奴らは戦ってたんじゃねぇ」


「記録してた」


世界意思が。


静かに告げる。


「再現を開始する」


白い大地から。


腕が伸びた。


骨の腕。


肉のない指。


骸骨兵が現れる。


だが。


ハザムの兵ではない。


白い骨。


白い剣。


感情のない眼。


一体。


十体。


千体。


万体。


さらに。


白いゴブリン。


白いオーク。


白いワイバーン。


白い巨人。


ハザムが生み出した魔物達と。


全く同じ姿。


全く同じ能力。


違うのは。


そこに命がないことだけ。


「模倣兵……」


少年が呟く。


「違う」


ハザムの声が低くなる。


「偽物だ」


時間が再び動き出す。


白い魔物達が。


一斉に襲いかかる。


骸骨と骸骨。


ゴブリンとゴブリン。


竜と竜。


同じ姿。


同じ力。


同じ攻撃。


白い世界の至る所で。


同じ存在同士が激突する。


観測者達も。


再び現れ始めた。


先ほど消えた者達が。


何事もなかったように。


白い光から再生する。


「敵性戦力」


「完全復元」


ナギが顔をしかめる。


「厄介だな」


「倒した分だけ」


「記録から戻ってくる」


ハザムは答えない。


目の前では。


一体のゴブリンが。


白い自分と戦っていた。


同じ剣。


同じ動き。


同じ速さ。


何度斬っても。


白いゴブリンは再生する。


やがて。


本物の胸を。


白い剣が貫いた。


ゴブリンが倒れる。


白い偽物は。


何の感情も示さない。


次の相手へ向かう。


ハザムの瞳に。


灰色の炎が灯る。


「俺の民を」


「真似したのか」


「対象の構造を再現した」


「生命ではない」


「戦闘機能である」


ハザムの周囲から。


音が消えた。


灰色の炎が。


静かに黒く染まる。


ナギが横目で見る。


「ハザム」


「分かってる」


「怒るなとは言わねぇ」


「ただ」


「飲まれるなよ」


ハザムは。


ゆっくり息を吐いた。


「大丈夫だ」


その声は。


恐ろしいほど静かだった。


「もう」


「昔の俺じゃない」


白いベヒモスが突進する。


本物のベヒモスを押し倒し。


巨大な牙を突き立てようとする。


その間に。


ハザムが立っていた。


片手で。


白い牙を受け止める。


大地が砕ける。


だが。


ハザムは一歩も動かない。


「形を真似て」


白いベヒモスの頭を掴む。


「力を真似て」


指に力を込める。


「それで」


頭部が軋む。


「命まで作ったつもりか」


握り潰す。


白い巨体が。


粉々に砕けた。


破片は。


すぐに集まり始める。


再生。


だが。


ハザムは見ていた。


白い粒子が戻っていく先。


玉座。


世界意思。


その足元。


全ての模倣兵が。


世界意思と繋がっている。


「なるほど」


ハザムが笑った。


「お前を壊せば」


「全部消える」


世界意思は。


初めて。


ハザムから視線を逸らした。


ほんの一瞬。


それだけで。


ナギは気付いた。


「当たりらしいな」


ハザムは歩き出す。


その前へ。


白い騎士が二人。


降り立った。


純白の鎧。


漆黒に見えるほど濃い白の鎧。


白騎士と。


黒騎士を模倣した存在。


本物の二人が。


静かに前へ出る。


四人の騎士が。


向かい合う。


偽物が剣を構える。


本物も。


無言で剣を構えた。


世界意思が告げる。


「最高戦力を再現」


「個体名」


「レオン」


「カズハ」


ハザムが止まる。


「その名を」


灰色の炎が燃え上がる。


「お前が呼ぶな」


白騎士と黒騎士が。


同時に踏み込んだ。


本物と偽物。


死者と記録。


魂と模倣。


四本の剣が激突する。


衝撃が。


白い世界を真っ二つに裂いた。

後書き

第九章が始まりました。

タイトルは「神殺し」。

ですが、この章は単純な「神を倒す物語」ではありません。

神とは何か。

勇者とは何か。

そして、人はなぜ誰かを救おうとするのか。

これまで積み重ねてきた全ての章が、この章へと繋がっています。

次章はいよいよ最終章です。

長い旅も、あと少し。

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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