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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 9-4 「灰神皇」

前書き

第九章「神殺し」。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

建国、戦争、思想、自由、愛、信仰、死、観測。

ハザムは七人の勇者と一人の観測者から、多くの答えを受け取りました。

そして物語は、いよいよ最終局面へ入ります。

この章では、これまで語られなかった「世界の真実」と、「神」と「勇者」の本当の意味が明らかになります。

ここから先は、ハザムだけでなく、この物語そのものの答えへ向かう旅です。

最後まで見届けていただければ幸いです。


パリン――。


白い世界に。


一本の亀裂が走る。


静寂だけの世界へ。


灰色の炎が流れ込んだ。


世界意思が顔を上げる。


「異物侵入を確認」


観測者達も振り向く。


亀裂は。


ゆっくりと広がる。


その向こうに見えたのは。


王城。


巨大な城壁。


どこまでも続く街並み。


そして。


灰色の空。


ナギは笑った。


「やっぱ来たか」


一人の男が歩いてくる。


黒い軍服。


灰色の外套。


何百年も王であり続けた男。


灰神皇。


ハザム・ヴェル。


「迎えに来た」


ナギは肩をすくめる。


「来るなって言ったろ」


「友達の頼みだからな」


「最後まで見届けた」


「だから今度は」


ハザムは笑う。


「俺の番だ」


世界意思が告げる。


「灰神皇」


「世界外への侵入を確認」


「排除する」


観測者達が動く。


白い衣が。


一斉に襲い掛かった。


ナギは剣を構える。


しかし。


ハザムは右手を上げた。


「待て」


ナギが見る。


「……ん?」


ハザムは観測者達を見渡す。


そして。


静かに呟いた。


「数が足りんな」


指を鳴らす。


カチン――。


その音だけで。


世界が変わった。


白い大地に。


黒い亀裂が無数に走る。


観測者達が止まる。


亀裂は。


どこまでも広がり。


白い世界を飲み込んでいく。


世界意思。


「世界侵食を確認」


「侵食率一%」


ナギは笑う。


「あーあ」


「始まった」


地面が隆起する。


墓標。


枯れ森。


火山。


雪山。


砂漠。


湖。


王都。


迷宮。


三百年間。


ハザムが築き。


守り。


壊し。


作り直してきた世界。


その全てが。


白い世界へ流れ込んでくる。


世界意思。


「侵食率十五%」


「停止命令」


止まらない。


「侵食率三十%」


観測者達が後退する。


白だけだった世界へ。


色が生まれる。


命が生まれる。


歴史が生まれる。


ハザムは静かに言う。


「俺は王だ」


「国を連れて戦う」


墓が割れる。


ガシャン。


最初に現れたのは。


骸骨兵。


一体。


十体。


百体。


千体。


万体。


数え切れない。


続いて。


ゾンビ。


ゴブリン。


オーク。


コボルト。


スライム。


序盤。


何度も戦った魔物達。


それらが。


黒い波となって押し寄せる。


観測者へ。


襲い掛かった。


「グォォォォッ!!」


白い世界に。


初めて。


獣の咆哮が響く。


観測者達が迎え撃つ。


しかし。


倒しても。


倒しても。


次が来る。


ナギは吹き出した。


「懐かしい顔ぶれだな」


ハザムは笑う。


「まだまだだ」


空が暗くなる。


ワイバーン。


グリフォン。


マンティコア。


ヒュドラ。


巨大な翼が。


白い空を覆う。


さらに。


大地が震える。


巨人。


地竜。


ベヒモス。


フェンリル。


神話級の魔獣達が。


悠然と歩き出す。


観測者達の陣形が。


初めて崩れた。


世界意思。


「侵食率六十二%」


「異常」


「異常」


「異常」


ハザムは首を振る。


「違う」


静かな声だった。


「これが」


「俺の世界だ」


その瞬間。


最後の門が開く。


重厚な足音。


一歩。


また一歩。


現れたのは。


純白の鎧。


漆黒の鎧。


二人の騎士。


白騎士。


黒騎士。


言葉はない。


ただ。


静かに剣を抜く。


ナギは目を細めた。


「……レオン」


「カズハ」


二人は答えない。


それでも。


ハザムの前へ進む。


王を守るように。


剣を構えた。


ハザムは魔物の軍勢を見渡し。


静かに微笑む。


「さあ」


「世界を守るぞ」


その号令とともに。


数十万の魔物達が。


一斉に咆哮した。


「オオオオオオオオオォォォッ!!」


白い世界と。


灰神皇の世界。


二つの世界が。


ついに。


正面から激突した。

後書き

第九章が始まりました。

タイトルは「神殺し」。

ですが、この章は単純な「神を倒す物語」ではありません。

神とは何か。

勇者とは何か。

そして、人はなぜ誰かを救おうとするのか。

これまで積み重ねてきた全ての章が、この章へと繋がっています。

次章はいよいよ最終章です。

長い旅も、あと少し。

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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