↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/80

Episode 8-3 「静かな帝都」

前書き

ここまで『神になるには、遅すぎた』を読んでいただき、ありがとうございます。

第八章のテーマは――**「観測」**です。

建国、戦争、思想、自由、愛、信仰、死。

ハザムは多くの答えを得てきました。

そして今回は、今まで誰よりも近くで、誰よりも遠くから彼を見続けてきた男の物語になります。

ゆっくりと、お付き合いいただければ幸いです。


ナギが帰った。


執務室。


静寂が戻る。


ハザムは椅子に深く腰を下ろした。


窓の外では。


今日も帝都が動いている。


商人の声。


子ども達の笑い声。


職人達の槌の音。


誰もが。


当たり前の一日を生きていた。


「……平和だな」


小さく呟く。


建国した頃は。


こんな日々を夢見ていた。


人が笑い。


子どもが走り。


争いを知らずに眠れる国。


それだけで良かった。


だが。


そこへ辿り着くまで。


あまりにも多くを失った。


レオンは。


最後まで正義を貫いた。


カズハは。


最後まで自分らしく生きた。


シエルは。


理想を語り続けた。


ノリアは。


人を信じ続けた。


ユリウスは。


愛を教えてくれた。


マリアは。


誰よりも人を育てた。


ガロウは。


最後まで自由だった。


皆。


それぞれの答えを残していった。


「……俺だけか」


取り残されたような気がした。


違う。


実際には。


白騎士も。


黒騎士も。


今もこの城にいる。


だが。


あの頃のレオンでも。


あの頃のカズハでもない。


ハザム自身が。


そう変えた。


後悔はない。


それが最善だった。


それでも時折。


思い出す。


笑い合っていた日々を。


喧嘩ばかりしていた日々を。


何も持たず。


何者でもなかった頃を。


その全てを。


隣で見ていた男がいる。


ナギ。


あいつだけは。


何百年経っても変わらない。


立場も。


力も。


考え方も。


変わったはずなのに。


笑い方だけは。


昔のままだった。


「……敵わんな」


ハザムは苦笑した。


その時だった。


部屋の空気が止まる。


風が消えた。


鳥の声も。


街の喧騒も。


ほんの一瞬だけ。


世界から音が消える。


ハザムはゆっくり立ち上がる。


窓へ歩く。


空を見上げた。


青空。


その奥。


誰かがいる。


見えない。


姿もない。


だが。


確かに。


見られている。


「始まるか」


恐れはない。


逃げるつもりもない。


ハザムは静かに目を閉じる。


「ナギ」


「お前は知っていたんだな」


返事はない。


あるはずもない。


それでも。


どこか安心していた。


あいつなら。


最後まで笑う。


そんな気がした。


帝都には。


今日も夕日が沈む。


誰も知らない。


世界の外側で。


静かに。


運命の歯車が回り始めていることを。

後書き

第八章が始まりました。

これまでナギは、どこか掴みどころのない旅人として描いてきましたが、この章では彼自身にスポットが当たります。

なぜ彼は何百年もの間、ハザムの隣にいたのか。

何を見て、何を考え、そして何を選ぶのか。

今まで何気なく交わしてきた会話にも、少しずつ意味が生まれていきます。

この章は派手な戦いよりも、「世界を見届ける者」の視点を大切に描いていく予定です。

最後まで見届けていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。