↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/80

Episode 7-4 「死者達」

第7章 前書き


ここまで読んでいただきありがとうございます。


建国から始まったこの物語も、気付けば随分と長い時間が流れました。


正義。 思想。 自由。 愛。 信仰。


様々な勇者達が現れ、 それぞれの答えをハザムへぶつけてきました。


そして第7章のテーマは――


「死」


です。


どれだけ文明が発展しても。 どれだけ世界が平和になっても。


人は死にます。


大切な人も。 愛した人も。 いつか必ず。


それは神であっても変えられないのかもしれません。


今回の勇者アベルは、 これまでの勇者達とは少し違います。


世界を変えたい訳でも、 神を倒したい訳でもありません。


ただ、 人の最期を見届け続ける男です。


そして久しぶりに、 ハザムの家族とも言える存在、 エリスも登場します。


神になった男が、 死をどう受け入れるのか。


楽しんでいただければ幸いです。


それでは第7章、 「死の勇者編」 始まります。


建国祭から三日後。



---


王立病院。



---


最上階。



---


看取り病棟。



---


静かだった。



---


窓から帝都が見える。



---


平和な街。



---


豊かな街。



---


人々が笑っている。



---


その景色を。



---


アベルは黙って見ていた。



---


建国祭の日から。



---


ずっと考えている。



---


灰神皇。



---


白騎士。



---


黒騎士。



---


紫衣卿。



---


白銀の詩唱卿。



---


全員。



---


空白だった。



---



---


「ありえない」



---


小さく呟く。



---


寿命視。



---


生まれてから二十年以上。



---


一度も外れた事はない。



---


竜族も見た。



---


長命種も見た。



---


精霊も見た。



---


寿命∞も見た。



---


だが。



---


空白だけは違う。



---



---


∞ではない。



---


見えないでもない。



---


存在しない。



---



---


死が無い。



---


いや。



---


違う。



---


アベルは首を振る。



---


「違う……」



---



---


その時。



---


老人が笑った。



---


病室のベッド。



---


余命三日。



---


アベルには見えている。



---


『3日』



---


頭上の数字。



---


老人が聞く。



---


「何か悩み事か」



---


アベルは苦笑する。



---


「顔に出てましたか」



---


「出てる」



---


即答だった。



---



---


老人は窓を見る。



---


「死ぬのが怖いか?」



---


アベルは少し驚く。



---


そして首を振る。



---


「いえ」



---


「死ぬ事は怖くありません」



---


本心だった。



---



---


老人が笑う。



---


「変な奴だな」



---



---


アベルは静かに言う。



---


「人は死にます」



---


「だから生きるんです」



---



---


老人は黙る。



---


しばらくして。



---


小さく笑った。



---


「神官らしくねぇな」



---



---


アベルも笑った。



---


「よく言われます」



---



---


老人は再び窓を見る。



---


帝都。



---


人々。



---


空。



---


そして。



---


静かに言う。



---


「羨ましいよ」



---



---


アベル。



---


「何がですか」



---



---


老人。



---


「終われるからだ」



---



---


沈黙。



---


アベルは言葉を失う。



---


老人は続ける。



---


「若い頃はな」



---


「死ぬのが怖かった」



---


「でも今は違う」



---



---


「もう十分だ」



---



---


その顔は穏やかだった。



---


アベルは何も言えない。



---



---


やがて。



---


老人は眠る。



---


静かに。



---


穏やかに。



---



---


頭上。



---


『2日』



---


数字が減る。



---



---


アベルは見慣れていた。



---


それでも。



---


毎回思う。



---


死は残酷だ。



---


だが。



---


死は終わりでもある。



---



---


その時。



---


病室の扉が開く。



---


エリスだった。



---


白い神官服。



---


いつもの笑顔。



---



---


「また難しい顔してますね」



---



---


アベル。



---


「そんな事ありません」



---



---


「あります」



---


即答。



---



---


エリスは隣へ座る。



---


窓を見る。



---


帝都を見る。



---



---


しばらく沈黙。



---


やがて。



---


アベルが聞く。



---


「エリス様」



---



---


「はい?」



---



---


「貴方は死が怖いですか」



---



---


エリスは少し驚く。



---


考える。



---


そして。



---


首を振った。



---



---


「怖いですよ」



---



---


アベル。



---


「え?」



---



---


エリスは笑う。



---



---


「怖くない人なんているんですか?」



---



---


静かな声。



---



---


「お母様が死んだ時」



---


「怖かったです」



---


「悲しかったです」



---



---


母親。



---


事故死。



---


本来三百年生きるはずだった人。



---



---


「今でも悲しいです」



---



---


エリスは笑う。



---


少しだけ寂しそうに。



---



---


「でも」



---



---


「だから大切なんです」



---



---


アベルは黙る。



---



---


「終わるから」



---


「今を大事にするんです」



---



---


風が吹く。



---


病室のカーテンが揺れる。



---



---


アベルは彼女を見る。



---



---


不思議だった。



---



---


自分は死を見てきた。



---


彼女は死を経験してきた。



---



---


似ている。



---


でも違う。



---



---


その時。



---


ふと。



---


能力が発動する。



---



---


エリスを見る。



---



---


数字。



---


『217年』



---



---


アベルは視線を逸らした。



---



---


長い。



---


あまりにも長い。



---



---


自分は違う。



---


人間だ。



---



---


その差が。



---


急に現実になる。



---



---


エリスは気付かない。



---


笑っている。



---



---


アベルも笑う。



---



---


だが。



---


その笑顔は少しだけ苦かった。



---



---


遠く。



---


王城。



---



---


ハザムは静かに書類を読んでいた。



---


その後ろ。



---


白騎士。



---


黒騎士。



---


紫衣卿。



---


リオ。



---



---


アベルの脳裏に蘇る。



---


空白。



---



---


寿命が無い者達。



---



---


生きているのか。



---


死んでいるのか。



---



---


そして。



---


初めて思う。



---



---


「彼らは幸せなのだろうか」



---



---


それは。



---


死を見続けてきた勇者が。



---


初めて神へ抱いた疑問だった。

第7章 後書き


第7章を読んでいただきありがとうございました。


この作品は長い間、


「生きるとは何か」


をテーマに書いてきました。


ですが、その答えを考えるなら、


どうしても避けられないものがあります。


それが――


死です。


ハザムはこれまで多くの人を失いました。


レオン。


シエル。


ノリア。


そして数え切れない人々。


その度に前へ進みながらも、 どこかで受け入れる事を避けてきたのかもしれません。


今回登場するアベルは、 誰かを倒すための勇者ではありません。


誰かの最期を見届ける勇者です。


そしてエリスもまた、 命と死に向き合い続ける人物になります。


派手な戦争や国家運営とは少し違う章になりますが、 この物語の核心へ近付く章になると思っています。


神は死を超えられるのか。


それとも。


死を受け入れる事こそが人間らしさなのか。


そんな事を考えながら読んでいただけたら嬉しいです。


次回もよろしくお願いいたします。

『神になるには、遅すぎた』作者より。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。