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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 7-1 「変わらない者達」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


建国から始まったこの物語も、気付けば随分と長い時間が流れました。


正義。 思想。 自由。 愛。 信仰。


様々な勇者達が現れ、 それぞれの答えをハザムへぶつけてきました。


そして第7章のテーマは――


「死」


です。


どれだけ文明が発展しても。 どれだけ世界が平和になっても。


人は死にます。


大切な人も。 愛した人も。 いつか必ず。


それは神であっても変えられないのかもしれません。


今回の勇者アベルは、 これまでの勇者達とは少し違います。


世界を変えたい訳でも、 神を倒したい訳でもありません。


ただ、 人の最期を見届け続ける男です。


ハザムの家族とも言える存在、 エリスも登場します。


神になった男が、 死をどう受け入れるのか。


楽しんでいただければ幸いです。


それでは第7章、 「死の勇者編」 始まります。


第一次信仰戦争から。


五十年。



---


灰神圏は続いていた。



---


戦争は無い。



---


飢餓も少ない。



---


人々は学び。


働き。


祈る。



---


平和な時代。



---


だが。



---


時間だけは流れる。



---


人だけが入れ替わる。



---


神だけは変わらない。



---


王城最深部。



---


再構築の間。



---


巨大な魔法陣。



---


数百年前。



---


レオンを再構築した場所。



---


セイジを再構築した場所。



---


リオを生み出した場所。



---


ハザムが立っていた。



---


白騎士レオン。



---


黒騎士カズハ。



---


紫衣卿セイゼル。



---


白銀の詩唱卿リオ。



---


四人も並ぶ。



---


魔法陣が輝く。



---


ハザムが手を伸ばす。



---


静かな光。



---


レオンの白鎧へ新しい紋様が刻まれる。



---


カズハの黒鎧も変化する。



---


セイゼルの魔力が増す。



---


リオの羽ペンが銀色に輝く。



---


帝国は大きくなった。



---


側近達も。



---


進化し続ける。



---


沈黙。



---


やがて。



---


リオが呟く。



---


「相変わらずですね」



---


ハザム。



---


「何がだ」



---


リオ。



---


「強化です」



---


「数百年経っても」



---


「皆様を鍛え続けている」



---


少し笑う。



---


「親みたいです」



---


セイゼルが珍しく頷いた。



---


ハザムは答えない。



---


その時。



---


扉が勢いよく開いた。



---


バンッ!



---


「おじいさまー!」



---


神官達なら卒倒している。



---


だが。



---


誰も驚かない。



---


長い金髪。



---


青い瞳。



---


白い神官服。



---


エリス。



---


神妃ジュリアの孫。



---


そして。



---


ハザムの孫娘。



---


本人はそう思っている。



---


ハザムを見る。



---


魔法陣を見る。



---


レオンを見る。



---


カズハを見る。



---


そして一言。



---


「また改造してる!」



---


リオが吹き出した。



---


セイゼルは額を押さえる。



---


レオン。



---


無反応。



---


カズハ。



---


無反応。



---


ハザム。



---


「強化だ」



---


エリス。



---


「同じです」



---


即答。



---



---


エリスはレオンを見上げる。



---


「白騎士様」



---


レオン。



---


沈黙。



---


「無視されました」



---


リオ。



---


「いつもの事ですよ」



---



---


エリスは今度はカズハを見る。



---


「黒騎士様」



---


沈黙。



---


「こっちもです」



---


セイゼルが呟く。



---


「当たり前です」



---



---


エリスは笑う。



---


昔から変わらない。



---


白騎士。



---


黒騎士。



---


帝国最強。



---


だが。



---


彼女にとっては。



---


幼い頃から知っている家族みたいな存在だった。



---



---


ふと。



---


エリスの表情が曇る。



---


ハザムが気付く。



---


「どうした」



---


珍しく。



---


先に聞いた。



---


エリスは少し考える。



---


そして言った。



---


「今日」



---


「お母様の命日なんです」



---


沈黙。



---


部屋が静まる。



---


リオの笑顔も消える。



---


セイゼルも黙る。



---


ハザムだけが動かない。



---


だが。



---


覚えていた。



---


もちろん。



---


忘れる訳がない。



---


本来三百年以上生きるはずだった。



---


ジュリアの娘。



---


エリスの母。



---


事故死。



---


突然だった。



---


助けられなかった。



---


いや。



---


助けられたかもしれない。



---


今でも分からない。



---



---


エリスは無理に笑った。



---


「だから今日は病院へ行きます」



---


「看取り当番なんです」



---


ハザムが頷く。



---


「そうか」



---


短い返事。



---


だが。



---


エリスは少し嬉しそうだった。



---



---


去り際。



---


扉の前で振り返る。



---


そして笑う。



---


「おじいさま」



---


ハザム。



---


「何だ」



---


エリス。



---


「ほどほどにしてくださいね」



---


「そのうち白騎士様達が壊れますよ」



---


沈黙。



---


リオが吹き出した。



---


セイゼルが天を仰ぐ。



---


レオン。



---


無反応。



---


カズハ。



---


無反応。



---


ハザム。



---


「壊れん」



---


即答。



---


エリスは笑う。



---


「そういうところです」



---


扉が閉まる。



---


静寂。



---



---


しばらくして。



---


リオが小さく呟く。



---


「良い子ですね」



---


ハザムは答えない。



---


窓の外を見る。



---


帝都。



---


平和な街。



---


だが。



---


遠く。



---


王立病院。



---


そこでは。



---


今日も誰かが生き。



---


誰かが死ぬ。



---


まだ。



---


ハザムは知らない。



---


その場所で。



---


自分が最も苦手な勇者と出会う事を。



---


死を見る勇者。



---


アベルと。

第7章を読んでいただきありがとうございました。


この作品は長い間、


「生きるとは何か」


をテーマに書いてきました。


ですが、その答えを考えるなら、


どうしても避けられないものがあります。


それが――


死です。


ハザムはこれまで多くの人を失いました。


レオン。


シエル。


ノリア。


そして数え切れない人々。


その度に前へ進みながらも、 どこかで受け入れる事を避けてきたのかもしれません。


今回登場するアベルは、 誰かを倒すための勇者ではありません。


誰かの最期を見届ける勇者です。


そしてエリスもまた、 命と死に向き合い続ける人物になります。


派手な戦争や国家運営とは少し違う章になりますが、 この物語の核心へ近付く章になると思っています。


神は死を超えられるのか。


それとも。


死を受け入れる事こそが人間らしさなのか。


そんな事を考えながら読んでいただけたら嬉しいです。


次回もよろしくお願いいたします。

『神になるには、遅すぎた』作者より。

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