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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 6-1 「聖女と神妃」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

5章はかなり重めの話になりましたが、 6章は少し視点を変えて、

「神の国で生きる人々」

に焦点を当てていきます。

久しぶりに観測者ナギも登場します。

個人的にも好きなキャラクターなので、 楽しんでいただけたら嬉しいです。

それでは第6章、 よろしくお願いいたします!


ユリウスとリノアが消えてから。


二十年。



---


灰神圏はさらに巨大になっていた。


属州は増え。


人口は増え。


街は広がり。


文明は発展した。



---


かつて国家だったものは。


今や世界そのものだった。



---


そして。


神は神になった。



---


王都中央。


灰神大聖堂。


数万人の民衆。


巨大な灰神像。


黄金の祭壇。


響き渡る聖歌。


香の煙。



---


その中央。


純白の法衣を纏う女がいた。



---


神妃ジュリア。



---


法を司り。


教典を編み。


信仰を導く女。



---


美しい女だった。


知的で。


穏やかで。


誰よりも信仰深い。



---


ジュリアが両手を広げる。


民衆が頭を垂れる。



---


「灰神の御加護がありますように」



---


歓声。


祈り。


涙。



---


ジュリアは続ける。



---


「灰神は我らを導かれた」



---


「飢えを終わらせ」



---


「戦乱を鎮め」



---


「文明を築かれた」



---


「我らは神の時代に生きているのです」



---


歓声が響く。


人々は熱狂する。



---


もはや宗教だった。



---



---


王城。


玉座の間。



---


だが。


その熱狂の中心にいる男は。


相変わらず興味が無かった。



---


灰神皇ハザム・ヴェル。



---


巨大な玉座。



---


その後ろ。



---


白騎士レオン。



---


黒騎士カズハ。



---


左右に立つ。



---


動かない。



---


喋らない。



---


ただ存在する。



---


数百年前から。


変わらず。



---


神話そのものだった。



---


さらに少し後ろ。



---


紫衣卿セイゼル。



---


そして。



---


白銀の詩唱卿リオ。



---


白銀の髪。


白銀の法衣。


白銀の羽ペン。



---


優しい微笑み。



---


誰もが愛する側近。



---


玉座を囲む五人。



---


人々は彼らを見て。


神話を見る。



---


ハザムだけが書類へ目を落としていた。



---


「人口増加率が予測を超えています」



---


紫衣卿が報告する。



---


「属州間の水資源争いも増加」



---


「移民問題も各地で発生しています」



---


ハザムは静かにページをめくる。



---


「そうか」



---


それだけだった。



---


ジュリアがどれだけ神格化しようと。


ハザム自身は変わらない。



---


だからこそ。



---


人々はさらに神だと思った。



---



---


その頃。


王都外縁区。



---


人が溢れていた。



---


移民。


労働者。


孤児。


病人。



---


帝国は豊かだ。



---


だが。


豊かさから零れる者もいる。



---


その中心。


簡素な教会。



---


そこで一人の女が働いていた。



---


長い栗色の髪。



---


簡素な修道服。



---


柔らかな笑顔。



---


マリア。



---


後に聖女と呼ばれる女。



---


まだ誰も知らない。



---


彼女は傷ついた少年の膝へ薬を塗る。



---


少年が泣き止む。



---


マリアが笑う。



---


「もう大丈夫」



---


「ちゃんと治るから」



---


少年が聞く。



---


「神官様なの?」



---


マリアは首を振る。



---


「違うよ」



---


「ただのお節介」



---


周囲の人々が笑う。



---


その時。



---


外から怒鳴り声。



---


移民の男と地元民。



---


最近増えていた。



---


仕事。


住居。


水。


食料。



---


小さな争い。



---


だが確実に増えている。



---


マリアは飛び出した。



---


「待って!」



---


二人の間へ割り込む。



---


男達が睨む。



---


だが。


マリアは逃げない。



---


「殴っても解決しない」



---


「話を聞いて」



---


ただそれだけ。



---


不思議と。



---


男達は拳を下ろした。



---


後ろで見ていた老人が呟く。



---


「変な娘だ」



---


別の老人が笑う。



---


「昔もいたな」



---


「こういう奴」



---


誰の事かは語らない。



---


だが。


時代が変わっても。



---


人を信じる者は現れる。



---



---


その夜。



---


教会。



---


マリアは一人で祈っていた。



---


神へではない。



---


人々の幸せへ。



---


争いの終わりへ。



---


ただそれだけ。



---


その時。



---


ギィ。



---


教会の扉が開く。



---


黒い外套。



---


長い黒髪。



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年齢不詳。



---


男にも女にも見える。



---


不思議な人物。



---


マリアが振り返る。



---


「どちら様ですか?」



---


その人物は笑った。



---


「初めまして」



---


「いや」



---


「お前には初めましてか」



---


勝手に椅子へ座る。



---


マリアが困惑する。



---


「えっと……」



---


その人物は肩をすくめた。



---


「ナギだ」



---


「観測者をやってる」



---


マリアは首を傾げる。



---


「観測者?」



---


ナギは笑う。



---


「そう」



---


「勇者を見て」



---


「神を見て」



---


「世界が壊れるのを見る仕事」



---


マリアはますます分からない。



---


だが。


ナギは知っていた。



---


レオンを。



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セイジを。



---


ガロウを。



---


ユリウスを。



---


そして。



---


ハザムを。



---


誰よりも長く見続けてきた。



---


ナギは窓の外を見る。



---


王都中央。



---


巨大な灰神大聖堂。



---


夜空へ伸びる神像。



---


そして。



---


小さく笑った。



---


「さて」



---


「今回はどんな結末になるかな」



---


遠く。



---


玉座の間では。



---


灰神皇ハザム・ヴェルが静かに書類へ目を通していた。



---


まだ誰も知らない。



---


神の時代が。



---


再び揺らぎ始める事を。

読んでいただきありがとうございます!

最近は戦闘シーンよりも、

「会話で殴り合う」

場面の方が増えてきました。

レオン。 セイジ。 ガロウ。 ユリウス。

それぞれ違う形でハザムへ挑みました。

そして今回のマリアは、 また違う方向からハザムへ向き合う人物になります。

どんな結末になるのか、 作者自身も楽しみながら書いています。

次回もよろしくお願いします!

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