表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

Episode 1-2 「最初の子供」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


焚き火が、静かに揺れていた。


森の夜は冷える。


二つの月の光が木々の隙間から差し込み、赤い火の粉がゆっくり空へ消えていく。


羽山成智――いや、今はまだ“ハヤマ”としか呼ばれていない男は、火を見つめたまま黙っていた。


向かいには、少女。


銀色の髪。

獣の耳。

淡い金色の瞳。


年齢にすれば十歳前後。


さっき巨大な狼を跪かせた存在には、とても見えない。


少女は串焼きの肉をじっと見ていた。


「……食うか?」


少女は小さく頷く。


ハヤマは肉を差し出した。


少女は少しだけ匂いを嗅ぎ、それから静かに齧る。


「……おいしい」


「そりゃよかった」


普通の会話だった。


それが逆に、不気味だった。


ここはどこなのか。

なぜ自分は若返っているのか。

あの頭の中の声は何なのか。


分からないことだらけなのに、目の前の少女だけが妙に“現実”だった。


少女は肉を食べ終えると、焚き火越しにハヤマを見た。


「怖くないの?」


「……何が?」


「私」


ハヤマは少し考える。


怖い。


正直、怖い。


人間じゃない。


自分が作ったという感覚も、意味が分からない。


でも。


「まだ、整理できてねぇ」


少女は少しだけ笑った。


その笑い方に、胸の奥がざわつく。


まるで昔から知っている誰かを思い出しそうになる。


だが、思い出せない。


「名前は?」


ハヤマが聞くと、少女は少し黙った。


風が吹く。


銀髪が揺れる。


少女は遠くを見るような目をして、ぽつりと言った。


「……ユリア」


ハヤマの呼吸が、一瞬止まる。


聞いたことがあるわけじゃない。


なのに妙に引っかかった。


「ユリア……」


「うん」


「そうか」


少女――ユリアは、今度は逆に聞き返してくる。


「あなたは?」


「羽山成智」


「……長い」


「悪かったな」


ユリアは少し考え込む。


それから。


「じゃあ、“ハヤマ”」


「そのままだろ」


「嫌?」


「……別に」


ユリアは小さく頷いた。


不思議だった。


こんな状況なのに、妙に落ち着く。


その瞬間だった。


頭の奥へ、再び“知識”が流れ込む。


視界が揺れる。


見えない文字列。


> 《第一生成生命体》


《生命安定確認》


《個体名:ユリア》


《感情同期率:12%》


《親和性:極大》




「っ……!」


頭が痛む。


ハヤマは額を押さえた。


ユリアの身体構造。

生命反応。

感情の揺れ。


全部、“分かる”。


いや。


流れ込んでくる。


「なんだよ……これ」


「ハヤマ?」


ユリアが近づく。


その瞬間。


ハヤマは理解した。


この子は、自分から生まれた。


本能的に。


理屈ではなく。


そう理解してしまった。


気味が悪かった。


人間が持っていい感覚じゃない。


「……なぁ」


「ん?」


「お前、なんなんだ?」


ユリアは少し黙る。


焚き火の光が、瞳の奥で揺れている。


「分からない」


「……」


「でも」


ユリアはハヤマを見る。


真っ直ぐに。


「ハヤマが、ずっと一人だったのは分かる」


ハヤマの呼吸が止まる。


「……は?」


「なんとなく」


ユリアはそれ以上説明しない。


まるで“感じている”だけみたいに。


森の風が吹く。


火が揺れる。


その時だった。


遠くから、悲鳴が聞こえた。


続いて。


何かが砕ける音。


ユリアの獣耳がぴくりと動く。


「……人」


「え?」


「誰か、襲われてる」


森の奥。


暗闇の向こうで、何かが動いていた。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ