表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

Episode 1-1 「創世」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


――寒い。


それが、最初の感覚だった。


羽山成智は、ゆっくりと目を開ける。


空が見えた。


知らない空だった。


青白い月が、二つ浮かんでいる。


「……は?」


声が漏れる。


身体を起こす。


湿った土の感触。

草の匂い。

冷たい風。


そして。


自分の手。


「若……」


皺が減っていた。


腕も細い。


腹も出ていない。


呼吸が軽い。


四十五歳の身体じゃない。


「なんだこれ……」


混乱する頭の中へ、不意に“声”が響いた。


> 《適合確認》


《固有能力《異種交配》を付与しました》


《生命因子生成権限を解放します》




「……は?」


意味が分からない。


だが奇妙なことに、“理解”だけはできた。


命を、作れる。


頭の奥に、そんな感覚が流れ込んでくる。


人間と魔物。


種と種。


血と血。


混ぜ合わせ、繋ぎ、新しい生命へ変換する力。


「……なんだよ、それ」


気味が悪かった。


夢にしては、生々しすぎる。


その時だった。


ガサ――ッ。


草むらが揺れた。


羽山の身体が硬直する。


現れたのは、狼だった。


いや。


狼より大きい。


肩までの高さが、羽山の胸近くある。


灰色の毛並み。

赤い瞳。

口元から覗く牙。


獣臭。


「お、おい……」


狼が唸る。


低く。


腹に響く音。


本能で理解した。


――死ぬ。


逃げなければ。


だが足が動かない。


狼が地面を蹴る。


飛びかかってくる。


羽山は反射的に腕を前へ出した。


その瞬間。


世界が、軋んだ。


空間に黒い亀裂が走る。


狼が止まった。


羽山の手のひらから、光とも泥ともつかない“何か”が溢れ出す。


そして。


それは、“形”になった。


小さな影。


少女だった。


銀色の髪。


獣の耳。


裸足。


まだ幼い。


だがその瞳だけが異様に静かだった。


少女は狼を見る。


次の瞬間。


狼が、膝をついた。


「……え?」


狼は震えていた。


恐怖している。


少女に。


少女はゆっくりと振り返る。


羽山を見る。


その顔を見た瞬間、羽山の心臓が大きく跳ねた。


似ていた。


誰かに。


記憶の奥に残る、あの女に。


だが、違う。


年齢も。


顔立ちも。


なのに、なぜか。


懐かしい。


少女は小さく首をかしげた。


それから。


静かに言った。


「……遅かったね」


羽山の呼吸が止まる。


その言い方。


その空気。


妙に覚えがあった。


「……お前」


声が掠れる。


少女は答えない。


ただ、羽山を見つめている。


狼は頭を地面へ擦りつけたまま動かない。


風が吹く。


二つの月が揺れる。


その時。


羽山はまだ理解していなかった。


自分が今、“世界を変える最初の命”を生み出したことを。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ