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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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1/8

Episode 0 「遅すぎた男」

はじめまして。

『神になるには、遅すぎた』を読んでいただきありがとうございます。

この作品は、

「誰にも求められなかった男が、世界を創る側になったらどうなるのか」

をテーマにしたダークファンタジーです。

異世界転生、国家運営、戦争、種族問題などの要素がありますが、根底にあるのは“孤独”や“欲望”だったりします。

主人公は決して綺麗な人間ではありません。

ですが、だからこそ、人間臭く書ければと思っています。

ゆっくりですが、最後まで書き切りたいと思っていますので、お付き合いいただければ嬉しいです。

それでは、エピソード0をお楽しみください。


雨だった。


春も終わりかけた夜の歌舞伎町は、湿ったネオンで光っていた。


羽山成智、四十五歳。


コンビニで買った安いビニール傘を片手に、雑居ビルの前でスマホを見ている。


予約時間、二十二時。


「……早く来すぎたな」


昔からそうだった。


待たせるのが嫌だった。

いや、本当は違う。


待たされるのが怖かった。


誰にも必要とされない時間が、嫌いだった。


ビルのガラス扉に映る自分を見る。


疲れた顔。

くたびれたスーツ。

腹も少し出ている。


若い頃、特別モテなかったわけじゃない。


ただ、何も言えなかった。


強引にもなれず、

器用にもなれず、

気づけば“タイミングを逃し続けた男”になっていた。


恋愛は、遅かった。


出世も、遅かった。


人生そのものが、少しずつ遅かった。


やがて彼は、“金を払えば会える関係”へ逃げ込むようになった。


その方が楽だった。


傷つかなくて済むから。


「羽山さん?」


声がした。


顔を上げる。


エレベーター前。

柔らかい色のカーディガンを羽織った女が、小さく手を振っていた。


「こんばんは」


「……おう」


その女は、よく喋るタイプではなかった。


営業トークも少ない。


だが、不思議と居心地が良かった。


多分、気を遣わなくてよかったからだ。


部屋に入る。


シャワー。


世間話。


笑い。


触れ合い。


いつもと同じ流れ。


……のはずだった。


だが、違った。


時間が経つにつれ、女の呼吸が乱れ始める。


「あ、ちょ……待っ……」


「大丈夫か?」


「はぁ……っ、いや……羽山さん、本当に……っ」


女は途中から笑っていた。


困ったように。


呆れたように。


そして最後には、ぐったりとベッドへ沈んだ。


「……水」


「ああ」


羽山は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、ストローを差す。


背中を支え、ゆっくり飲ませる。


「……なんで羽山さんって、最後いつも介抱モードなの」


「いや……しんどそうだから」


「普通、帰るよ?」


「そういうもんなのか?」


「そういうもん」


女は笑った。


少しだけ。


静かな部屋だった。


エアコンの音だけが響いている。


「ねえ」


「ん?」


「羽山さんってさ」


「優しいよね」


羽山は少し黙る。


それから苦笑した。


「遅いんだよ、俺」


「何が?」


「全部」


女は少し考えてから、小さく笑う。


「でもさ」


「遅い人って、ちゃんと見てる人多いよ」


その言葉が、妙に残った。


帰る時間になる。


服を着て、財布をしまい、エレベーター前へ向かう。


扉が開く。


乗り込む。


閉まる直前。


女が言った。


「また来てね」


羽山は少しだけ笑う。


「……もう来れないかもしれない」


「え?」


「なんとなく」


扉が閉まり始める。


女が少し困った顔をした。


その顔を見た瞬間だった。


――ドクン。


胸が、潰れるように痛んだ。


視界が揺れる。


息が吸えない。


スマホが床へ落ちる。


「……は?」


エレベーターが下降する。


数字が減っていく。


7。


6。


5。


冷たい汗が流れる。


その時、不意に思った。


ああ。


俺。


もっと普通に、誰かと生きたかったな。


4。


3。


最後に浮かんだのは、女の顔だった。


笑顔ではなく。


少しだけ、寂しそうな顔。


2。


1。


そして。


世界が、白く弾けた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

まずは“転生前の男”を書いてみました。

羽山成智という人間が、

何を求め、何を諦め、どこかで止まってしまったのか。

そして、なぜ“神”になっていくのか。

この作品は、異世界で無双する話でもありますが、同時に「人間性が少しずつ変質していく物語」でもあります。

あと、風俗描写があるので誤解されそうですが、単なるエロ作品にはしない予定です。

欲望や孤独、承認欲求みたいなものを、ファンタジーとして描ければと思っています。

感想などいただけると励みになります。

次回から、いよいよ異世界編です。

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