Episode 4-6 「神の孤独」
いつも読んでいただきありがとうございます。
『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。
主人公は決して善人ではありません。
ですが、悪人とも少し違います。
長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。
そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
鐘哭窟最深部。
腐臭。
血。
胞子。
崩れた地下空間の中央で。
ベルク=ラドは、完全な怪物へ変わり果てていた。
膨張した肉塊。
無数の腕。
脈打つ臓器。
もはや人型ですらない。
「腐れぇぇぇぇぇ!!」
咆哮。
肉壁が爆ぜる。
感染胞子が吹き荒れる。
ノリアが即座に法陣を展開。
光の壁。
胞子が焼ける。
だが。
量が多すぎた。
「っ……!」
ノリアの口から血が零れる。
ガロウが舌打ちする。
「無理すんな!」
《断鐘》幹部が笑う。
「法守護者ァ!!」
「神に飼われた犬がァ!!」
巨大な腕が振り下ろされる。
ガロウがノリアを突き飛ばす。
轟音。
石床が砕ける。
ガロウの肩から血が噴き出した。
ノリアが目を見開く。
「何故……!」
ガロウが顔を歪める。
「うるせぇ……!」
「女庇うのに理由いるかよ!」
次の瞬間。
ガロウが飛び込む。
低姿勢。
死角。
完全な路地裏の戦い方。
怪物の脚へナイフを突き立てる。
《断鐘》幹部が咆哮。
だが。
再生する。
ノリアが低く言う。
「核があります」
「どこかに本体が……!」
ガロウが周囲を見る。
脈打つ肉。
胞子。
感染者。
地獄だった。
その時。
白い斬撃が空間を裂く。
白騎士レグオン。
感染者の群れを無言で切り裂いていく。
黒騎士ヴァズもまた、巨大斧で肉塊ごと粉砕していた。
圧倒的。
だが。
それでも終わらない。
怪物が笑う。
「無意味だァァ!!」
「我らは増える!!」
ノリアの顔が曇る。
その時だった。
ガロウが笑った。
獣みたいに。
「だったら」
「元締め殺しゃ終わりだろ」
ノリアが振り返る。
ガロウは、肉壁の奥を見ていた。
脈動。
妙に守られている場所。
「……あそこか」
次の瞬間。
ガロウが突っ込む。
ノリアが叫ぶ。
「待って!」
だが。
ガロウは止まらない。
感染者を蹴り飛ばし。
胞子を浴びながら進む。
完全に狂った突撃だった。
《断鐘》幹部が咆哮する。
「止めろォォォ!!」
肉壁が閉じる。
その瞬間。
白い剣閃。
白騎士が壁を切断。
さらに。
黒騎士の斧が空間ごと砕く。
一本道ができる。
ガロウは笑った。
「いい援護だ」
そして。
肉壁最深部へ飛び込む。
そこにいた。
痩せた男。
栄養剤。
薬液。
大量の紅宴。
《断鐘》マルケス。
男が震える。
「何故だ……!」
「何故灰神圏は壊れない!!」
ガロウがナイフを構える。
「知らねぇよ」
「でもな」
低い声。
「俺の街で好き勝手した」
「それだけで殺す理由になる」
男が叫ぶ。
「神の国はいずれ腐る!!」
「孤独な王は必ず壊れる!!」
その瞬間。
ノリアの動きが止まる。
孤独。
その言葉だけが、妙に刺さった。
マルケスは笑う。
「灰神皇ハザム!」
「神を演じながら!」
「誰より人間を求めている化け物だ!!」
ノリアの瞳が揺れる。
思い出す。
静かな執務室。
感情の薄い目。
誰もいない玉座。
夜。
一人で座るハザム。
そして。
自分へ触れてきた手。
温かかった。
なのに。
酷く空っぽだった。
《断鐘》マルケスが叫ぶ。
「神は孤独だ!!」
「だから世界を支配する!!」
次の瞬間。
ガロウのナイフが喉へ突き刺さる。
血。
男が目を見開く。
ガロウは低く言う。
「……うるせぇよ」
男が崩れ落ちる。
同時に。
地下空間の肉壁が崩壊を始める。
感染者たちが倒れていく。
胞子が止まる。
終わった。
ノリアは静かに立ち尽くしていた。
孤独。
その言葉が、頭から離れない。
ガロウが煙草へ火をつける。
血塗れのまま。
「帰るぞ」
ノリアは小さく呟く。
「……神様じゃ、なかったんですね」
ガロウが煙を吐く。
「最初からそんな立派なモンじゃねぇだろ」
遠くで。
白騎士と黒騎士が、静かにこちらを見ていた。
まるで。
誰かの孤独を知っているみたいに。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。
この作品は、戦いや能力だけではなく、
「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」
を描いていけたらと思っています。
よければ感想などいただけると励みになります。
次回もよろしくお願いします。




