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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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29/80

Episode 4-6 「神の孤独」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


鐘哭窟最深部。


腐臭。


血。


胞子。


崩れた地下空間の中央で。


ベルク=ラドは、完全な怪物へ変わり果てていた。


膨張した肉塊。


無数の腕。


脈打つ臓器。


もはや人型ですらない。


「腐れぇぇぇぇぇ!!」


咆哮。


肉壁が爆ぜる。


感染胞子が吹き荒れる。


ノリアが即座に法陣を展開。


光の壁。


胞子が焼ける。


だが。


量が多すぎた。


「っ……!」


ノリアの口から血が零れる。


ガロウが舌打ちする。


「無理すんな!」


《断鐘》幹部が笑う。


「法守護者ァ!!」


「神に飼われた犬がァ!!」


巨大な腕が振り下ろされる。


ガロウがノリアを突き飛ばす。


轟音。


石床が砕ける。


ガロウの肩から血が噴き出した。


ノリアが目を見開く。


「何故……!」


ガロウが顔を歪める。


「うるせぇ……!」


「女庇うのに理由いるかよ!」


次の瞬間。


ガロウが飛び込む。


低姿勢。


死角。


完全な路地裏の戦い方。


怪物の脚へナイフを突き立てる。


《断鐘》幹部が咆哮。


だが。


再生する。


ノリアが低く言う。


「核があります」


「どこかに本体が……!」


ガロウが周囲を見る。


脈打つ肉。


胞子。


感染者。


地獄だった。


その時。


白い斬撃が空間を裂く。


白騎士レグオン。


感染者の群れを無言で切り裂いていく。


黒騎士ヴァズもまた、巨大斧で肉塊ごと粉砕していた。


圧倒的。


だが。


それでも終わらない。


怪物が笑う。


「無意味だァァ!!」


「我らは増える!!」


ノリアの顔が曇る。


その時だった。


ガロウが笑った。


獣みたいに。


「だったら」


「元締め殺しゃ終わりだろ」


ノリアが振り返る。


ガロウは、肉壁の奥を見ていた。


脈動。


妙に守られている場所。


「……あそこか」


次の瞬間。


ガロウが突っ込む。


ノリアが叫ぶ。


「待って!」


だが。


ガロウは止まらない。


感染者を蹴り飛ばし。


胞子を浴びながら進む。


完全に狂った突撃だった。


《断鐘》幹部が咆哮する。


「止めろォォォ!!」


肉壁が閉じる。


その瞬間。


白い剣閃。


白騎士が壁を切断。


さらに。


黒騎士の斧が空間ごと砕く。


一本道ができる。


ガロウは笑った。


「いい援護だ」


そして。


肉壁最深部へ飛び込む。


そこにいた。


痩せた男。


栄養剤。


薬液。


大量の紅宴。


《断鐘》マルケス。


男が震える。


「何故だ……!」


「何故灰神圏は壊れない!!」


ガロウがナイフを構える。


「知らねぇよ」


「でもな」


低い声。


「俺の街で好き勝手した」


「それだけで殺す理由になる」


男が叫ぶ。


「神の国はいずれ腐る!!」


「孤独な王は必ず壊れる!!」


その瞬間。


ノリアの動きが止まる。


孤独。


その言葉だけが、妙に刺さった。


マルケスは笑う。


「灰神皇ハザム!」


「神を演じながら!」


「誰より人間を求めている化け物だ!!」


ノリアの瞳が揺れる。


思い出す。


静かな執務室。


感情の薄い目。


誰もいない玉座。


夜。


一人で座るハザム。


そして。


自分へ触れてきた手。


温かかった。


なのに。


酷く空っぽだった。


《断鐘》マルケスが叫ぶ。


「神は孤独だ!!」


「だから世界を支配する!!」


次の瞬間。


ガロウのナイフが喉へ突き刺さる。


血。


男が目を見開く。


ガロウは低く言う。


「……うるせぇよ」


男が崩れ落ちる。


同時に。


地下空間の肉壁が崩壊を始める。


感染者たちが倒れていく。


胞子が止まる。


終わった。


ノリアは静かに立ち尽くしていた。


孤独。


その言葉が、頭から離れない。


ガロウが煙草へ火をつける。


血塗れのまま。


「帰るぞ」


ノリアは小さく呟く。


「……神様じゃ、なかったんですね」


ガロウが煙を吐く。


「最初からそんな立派なモンじゃねぇだろ」


遠くで。


白騎士と黒騎士が、静かにこちらを見ていた。


まるで。


誰かの孤独を知っているみたいに。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

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