Episode 4-5 「鐘哭窟」
いつも読んでいただきありがとうございます。
『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。
主人公は決して善人ではありません。
ですが、悪人とも少し違います。
長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。
そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
奈落街最下層。
廃棄地下水路区域――鐘哭窟。
そこは、灰神圏でも最悪の場所だった。
昔の処刑場。
無数の死体を流した地下水路。
今では犯罪者すら近づかない。
だが今。
そこが、《紅宴》の巣になっていた。
腐臭。
血。
胞子。
空気そのものが淀んでいる。
ガロウが顔をしかめる。
「クソみてぇな場所だな」
隣でノリアが法陣を展開していた。
淡い光が周囲を包む。
「胞子濃度が高すぎます」
「長時間は危険です」
その後ろには灰狼連。
オーガ。
獣人。
エルフ。
皆、武装している。
だが。
誰の顔にも緊張が浮かんでいた。
怖いのだ。
感染が。
爆砕が。
死より。
“壊れる”ことが。
その時。
暗闇の奥で、笑い声が響く。
「ようこそォ……」
全員が武器を構える。
現れたのは、痩せた男だった。
黒衣。
鐘の紋章。
《断鐘》幹部。ベルク=ラド
だが。
人間ではなかった。
腕が膨張している。
肉が脈打つ。
背中から骨が飛び出していた。
目だけが異様に爛々と輝いている。
男は笑う。
「灰神圏は……綺麗すぎる」
「だから腐らせる価値がある」
ガロウが舌打ちする。
「薬売人が哲学語ってんじゃねぇよ」
次の瞬間。
男が咆哮した。
周囲の死体袋が破裂する。
中から感染者が這い出す。
数十。
数百。
異常な数だった。
灰狼連が叫ぶ。
「来るぞ!!」
地獄が始まる。
感染者たちが一斉に襲いかかる。
ガロウが飛び込む。
ナイフ。
喉を裂く。
蹴り飛ばす。
だが。
倒しても倒しても数が減らない。
ノリアが法術を展開。
光槍。
複数の感染者を貫く。
だが。
胞子が舞う。
オーガの部下が苦しみ始める。
「が……ぁ……」
皮膚が変色。
爆砕。
血肉が周囲へ飛び散る。
悲鳴。
混乱。
奈落街の荒くれ者たちですら恐怖していた。
《断鐘》ベルク=ラドが笑う。
「いい顔だァ……!」
「壊れていけ!」
ガロウが突っ込む。
だが。
感染者の壁が分厚い。
ナイフが届かない。
ノリアが叫ぶ。
「下がって!!」
法陣展開。
大規模浄化術。
光が地下空間を焼く。
感染者が灰になる。
だが。
ノリアが膝をつく。
消耗が激しい。
《断鐘》幹部が笑う。
「その程度かァ!!」
その瞬間だった。
地下通路の奥。
白い足音が響く。
コツ。
コツ。
空気が変わる。
感染者たちが止まる。
暗闇の中。
純白の甲冑。
白騎士レグオン。
静かに現れる。
次の瞬間。
斬撃。
通路ごと感染者が両断された。
血すら残らない。
灰狼連が凍りつく。
「白騎士……!」
《断鐘》幹部すら顔を歪める。
その直後。
別方向の壁が砕ける。
黒い巨体。
黒騎士ヴァズ。
巨大斧の一撃で感染者群を吹き飛ばす。
爆風。
肉片。
圧倒的だった。
もはや戦争ではない。
災害。
神話。
灰狼連の若者たちが震える。
だが。
ガロウだけは舌打ちした。
「……遅ぇんだよ」
ノリアが目を見開く。
普通なら。
白黒騎士を前に立っているだけで恐怖する。
だがこの男は違う。
ガロウは《断鐘》幹部を睨む。
「雑魚掃除は任せた」
「元締めは俺が殺す」
ノリアが立ち上がる。
息を荒げながら。
「一人じゃ無理です」
ガロウが笑う。
「じゃあ来いよ」
その瞬間。
《断鐘》幹部の身体が膨張する。
肉。
骨。
胞子。
完全に化け物へ変貌していく。
「神の国をォォォ!!」
「腐らせろォォォ!!」
咆哮。
地下空間が揺れる。
ガロウはナイフを握る。
ノリアは剣を構える。
その背後では。
白と黒の騎士が、静かに感染者を蹂躙していた。
まるで。
神話の処刑みたいに。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。
この作品は、戦いや能力だけではなく、
「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」
を描いていけたらと思っています。
よければ感想などいただけると励みになります。
次回もよろしくお願いします。




