↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/80

Episode 4-4 「感染都市」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


奈落街は、一夜で変わった。


笑い声は消え。


代わりに響くのは。


悲鳴。


怒号。


爆発音。


《紅宴》。


その薬は、奈落街を確実に侵食していた。


――灰狼連拠点。


机の上へ、地図が広げられる。


赤印だらけだった。


感染区域。


爆砕発生地点。


密売確認場所。


どれも日に日に増えている。


オーガの幹部が低く言う。


「止まらねぇ」


「もう下層区だけじゃねぇぞ」


「中層まで広がってる」


別の男が吐き捨てる。


「クソ薬が」


「売人ども皆殺しにしても追いつかねぇ」


ガロウは黙ったまま煙草を吸っていた。


その横で。


ノリアが負傷者の報告書を読む。


顔色が悪い。


「感染速度が異常です……」


「しかも爆砕個体からの二次感染率が高すぎる」


ガロウが低く言う。


「つまり?」


ノリアは苦しそうに答える。


「奈落街全域が感染源になる可能性があります」


空気が凍る。


誰もが理解した。


このままなら。


街ごと焼かれる。


灰神圏はそういう国だ。


制御不能と判断すれば、切り捨てる。


その時だった。


外で悲鳴。


「感染者だ!!」


全員が飛び出す。


路地。


人だかり。


一人の女が倒れていた。


震えている。


周囲の人間たちが距離を取る。


女は泣きながら叫ぶ。


「違う……!」


「私はまだ……!」


次の瞬間。


腕が膨張する。


ノリアが叫ぶ。


「離れて!!」


爆砕。


肉片。


血。


壁へ叩きつけられた肉が蠢く。


その肉片へ触れた浮浪児が、突然苦しみ始める。


目が充血。


皮膚変色。


牙。


ガロウが舌打ちする。


「チッ!」


ナイフ。


一閃。


浮浪児の首が落ちる。


周囲が静まり返る。


ノリアが目を見開く。


「……子供ですよ」


ガロウは即答する。


「感染者だ」


冷たい声だった。


だが。


拳は少しだけ震えていた。


その時。


屋根の上。


紫衣卿セイゼルが静かに降り立つ。


「感染速度が加速している」


ノリアが振り返る。


「原因は?」


紫衣卿は小さく目を細めた。


「《紅宴》に含まれる胞子性魔菌」


「爆砕と同時に空気感染を起こしている」


ガロウが顔をしかめる。


「つまり?」


「街ごと兵器化している」


沈黙。


最悪だった。


奈落街は人口密集地帯。


感染爆弾としては理想的すぎる。


ノリアが低く言う。


「目的は……灰神圏内部崩壊」


紫衣卿が頷く。


「おそらく」


その時だった。


一人の情報屋が転がり込んでくる。


エルフの女。


血塗れ。


「見つけた……!」


息を切らしながら叫ぶ。


「薬の元締めだ……!」


ガロウの目が変わる。


「どこだ」


女が震える指で地図を指す。


奈落街最下層。


廃棄地下水路区域。


“鐘哭窟”。


奈落街でも最悪の場所だった。


昔の処刑場跡。


今では誰も近づかない。


情報屋が続ける。


「外の連中……《断鐘》……」


「そこを拠点にしてる……」


「薬も……感染者も……全部そこから……」


その瞬間。


遠くでまた爆発音。


窓が震える。


誰かが叫ぶ。


「また爆ぜたぞ!!」


奈落街は、もう限界だった。


ガロウが静かにナイフを抜く。


殺気。


怒り。


「……行くぞ」


ノリアが見る。


「単独突入は危険です」


ガロウは笑う。


獣みたいに。


「危険じゃねぇ仕事なんて、この街にねぇよ」


紫衣卿が静かに二人を見る。


その目は。


どこか昔を思い出すようだった。


理想家。


革命家。


そして。


無茶をする若者。


ほんのわずかに。


胸の奥が痛んだ気がした。


だが。


その理由は、もう思い出せない。


奈落街の奥。


鐘哭窟。


暗闇の中で。


誰かが静かに笑っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。