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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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24/80

Episode 4-1 「奈落街」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


灰神圏王都外縁。


混血街区――奈落街。


そこには、帝国の“裏側”が集まっていた。


違法闘技場。


密輸。


娼館。


賭博。


傭兵。


戸籍を持たない混血種。


国に適応できなかった者たち。


表の灰神圏が“光”なら。


ここは“影”だった。


だが。


人は生きている。


笑い。


怒鳴り。


酒を飲み。


殴り合い。


欲望を剥き出しにして。


泥みたいに。


必死に。


「――ガロウ!!」


怒号が響く。


地下闘技場。


観客席では、オーガもエルフも獣人も入り混じって熱狂していた。


血の匂い。


酒。


歓声。


リング中央では、一人の少年が男を殴り倒している。


灰色の髪。


鋭い目。


十六歳。


ガロウ。


相手は大柄な獣人だった。


だが。


ガロウは躊躇なく顔面へ膝を叩き込む。


骨が砕ける音。


男が沈む。


歓声が爆発した。


「やりやがった!!」


「また勝ったぞ灰狼!!」


「若頭補佐!!」


ガロウは倒れた相手を見下ろす。


そして。


唾を吐いた。


「弱ぇ」


観客たちが笑う。


だが。


その目は鋭い。


この街では、“舐められたら終わり”だ。


その時だった。


闘技場の奥で騒ぎが起こる。


「法守護者だ!!」


空気が変わる。


入口から、白銀の外套を纏った女が現れる。


長い黒髪。


冷たい目。


腰には細身の剣。


シリア法守護者。


ノリア。


灰神圏治安維持局直属。


国家公認の執行者。


観客たちがざわつく。


「なんでこんな所に……」


「やべぇぞ」


「今日は摘発か?」


だが。


ノリアの視線は最初から一人へ向いていた。


ガロウ。


二人の目がぶつかる。


ガロウは鼻で笑う。


「国家の犬が、裏街見学か?」


周囲が凍る。


普通なら。


その場で斬られてもおかしくない。


だが。


ノリアは静かだった。


「灰狼連若頭補佐、ガロウ」


「違法闘技運営」


「密輸支援」


「暴行傷害」


「その他多数」


淡々と読み上げる。


ガロウは肩を鳴らす。


「へぇ」


「ちゃんと調べてんじゃん」


ノリアは続ける。


「ですが今回は逮捕ではありません」


観客たちがざわつく。


ガロウが眉をひそめる。


「……あ?」


ノリアは真っ直ぐ言った。


「取引です」


空気が変わる。


裏社会で。


“取引”という言葉は重い。


ガロウはゆっくりリングを降りる。


近づく。


かなり近くまで。


ノリアも動かない。


「誰の命令だ?」


ノリアは少しだけ沈黙した。


それから。


静かに答える。


「紫衣卿」


その名前が出た瞬間。


奈落街の空気が変わった。


紫衣卿セイゼル。


灰神皇側近。


知略と統治を司る怪物。


裏社会ですら恐れられる存在。


ガロウは目を細める。


「……神の側近が」


「俺に何の用だ」


ノリアは静かに言った。


「奈落街をまとめてください」


観客たちが息を呑む。


ガロウは数秒黙る。


それから。


腹を抱えて笑った。


「ははっ……!」


「おもしれぇこと言うな」


だが。


ノリアは笑わない。


「最近、“外”から流れてきた連中が増えている」


「武器」


「薬物」


「違法奴隷」


「灰神圏外の勢力も確認されています」


ガロウの笑みが少し消える。


それはつまり。


この街が荒れる。


自分たちの縄張りが壊れるということだった。


ノリアが静かに言う。


「あなたは、この街で最も人望がある」


「だから頼みます」


その言葉に。


ガロウは少しだけ違和感を覚えた。


“命令”じゃない。


“頼む”。


国家側の人間が。


そんな言葉を使うのは珍しかった。


ガロウは煙草へ火をつける。


そして。


煙を吐きながら言った。


「断ったら?」


ノリアは即答する。


「私があなたを潰します」


沈黙。


そして。


ガロウはニヤリと笑った。


「……いい目してんな、姉ちゃん」


ノリアの眉がわずかに動く。


その時だった。


観客席奥。


暗闇の中。


紫色の衣が揺れる。


紫衣卿セイゼル。


誰にも気づかれず。


静かに立っていた。


その目は。


ただ一人。


ガロウだけを見ている。


どこか。


懐かしむみたいに

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

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