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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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Episode 2-6 「神へ届いた男」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


雨は止んでいた。


空は灰色のまま。


戦場には、死だけが残っている。


倒れた兵士。


燃える荷車。


折れた旗。


そして。


黒騎士カズハの亡骸。


西方連合軍は、沈黙していた。


誰もが理解している。


終わりが近いと。


その時だった。


空気が、沈んだ。


兵士たちの呼吸が止まる。


本能が理解する。


“上位の存在”が来たと。


丘の上。


黒い衣を纏った男が立っていた。


ハザム。


灰神。


建国王。


変わらない姿。


変わらない瞳。


人の時間から外れた存在。


その姿を見た瞬間。


何人もの兵士が膝をついた。


恐怖だった。


理屈ではない。


生物としての恐怖。


レオンだけが、立っていた。


血塗れのまま。


折れかけた剣を握り。


真っ直ぐハザムを見る。


ハザムは静かに戦場を見渡す。


死体。


悲鳴。


絶望。


全部を眺めたあと。


ぽつりと呟いた。


「……増えたな」


その声は、あまりにも静かだった。


まるで。


嵐の後に、散らかった部屋でも見ているみたいに。


レオンが前へ出る。


「ハザム」


その名を呼べる者は、もうほとんどいない。


だがハザムは少しだけ目を細めた。


「……レオン」


二人の間に風が吹く。


兵士たちは動けない。


割って入れる空気ではなかった。


レオンは剣を構える。


「ここで終わらせる」


ハザムは答えない。


ただ。


静かに見ている。


その視線に、レオンは気づく。


この男は。


本気で、自分を敵として見ていない。


それが腹立たしかった。


「っ!!」


レオンが踏み込む。


限界を超えた速度。


地面が砕ける。


剣が閃く。


だが。


届かない。


ハザムは動かない。


いや。


必要がない。


レオンの剣撃が、見えない何かに弾かれていく。


兵士たちが絶望する。


強すぎる。


存在そのものが違う。


レオンは止まらない。


斬る。


斬る。


斬る。


血を吐きながら。


腕が軋みながら。


それでも前へ出る。


その姿を見ながら。


ハザムの脳裏に、昔の記憶が一瞬だけ蘇る。


――立ち向かえなかった自分。


何も言えなかった自分。


遅かった男。


レオンは違う。


痛くても。


怖くても。


前へ出る。


その時だった。


視界の端に文字が浮かぶ。


> 《観測対象:レオン》


《生命出力 限界突破》




レオンが叫ぶ。


「うおおおおおおおッ!!」


最後の一撃。


全てを乗せた剣。


ハザムは避けなかった。


見たかった。


どこまで届くのか。


次の瞬間。


斬撃が走る。


戦場が静まり返った。


ハザムの右腕が、宙を舞っていた。


兵士たちが息を呑む。


神を。


斬った。


レオンも信じられない顔をしていた。


だが。


次の瞬間。


落ちた腕が、黒い粒子になって崩れる。


そして。


ハザムの肩から、新しい腕が静かに再生していく。


骨。


筋肉。


皮膚。


何事もなかったみたいに。


絶望だった。


兵士たちの顔から色が消える。


レオンだけが、まだ立っていた。


息を切らしながら。


それでも笑う。


「……届いたか?」


ハザムは、少しだけ沈黙する。


それから。


静かに答えた。


「ああ」


その瞬間。


レオンの身体が、ぐらりと揺れた。


限界だった。


心臓が止まる。


それでも。


レオンは倒れなかった。


剣を支えに、立ったまま空を見ている。


まるで。


最後まで、諦めていないみたいに。


風が吹く。


誰も声を出せない。


ハザムは、その姿を静かに見つめていた。


そして。


ほんの少しだけ。


胸の奥が痛む。


何を思い出しかけたのか。


もう分からない。


その時。


背後から足音がした。


振り返る。


黒い鎧の男。


再構築されたカズハだった。


傷一つない。


だが。


もう何も喋らない。


ハザムの前で、静かに膝をつく。


返事もない。


感情もない。


ただ命令を待つ兵器。


その姿を見て。


ハザムは一瞬だけ、目を閉じた。


「ああ……」


小さく呟く。


「そうなるのか」


その声を。


ナギだけが聞いていた。


遠くで。


誰かが震える声で呟く。


「……神だ」


その言葉は。


静かに、戦場へ広がっていった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

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