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『神になるには、遅すぎた』 ―誰にも求められなかった男の創世記―  作者: 凡夫 成


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12/80

Episode 2-4 「敗残兵」

いつも読んでいただきありがとうございます。

『神になるには、遅すぎた』は、異世界転生・国家運営・ダークファンタジーを軸にしつつ、“人間性の変化”をテーマに描いています。

主人公は決して善人ではありません。

ですが、悪人とも少し違います。

長い時間の中で、人が何を失い、何を残すのか。

そんな物語として楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ。


戦場は、灰色だった。


燃える大地。


折れた旗。


死体。


血の匂い。


ハザム国と西方連合軍、その全面衝突は三日目に入っていた。


空には黒煙。


地上では怒号。


人も魔物も関係なく、命が削られていく。


「前線押されてるぞ!!」


「混血兵を止めろ!!」


「レオン様を前へ!」


叫びが飛び交う中、一人の男だけが静かだった。


レオン。


白銀の鎧は血で汚れている。


それでも彼は立ち続けていた。


剣を振るう。


仲間を守る。


その姿に、兵たちは希望を見る。


「勇者レオン!!」


「押し返せぇぇ!!」


その時だった。


戦場の奥から、重い音が響く。


――ズシン。


――ズシン。


兵士たちの顔色が変わる。


煙の向こうから現れたのは、巨大な影だった。


二メートルを超える身体。


鋼を埋め込まれた肉体。


そして。


右腕を丸ごと覆う、巨大な戦斧。


「……鋼鬼」


誰かが震えた声で呟く。


鋼鬼グラド。


十年間、剣闘士として戦い続けた怪物。


ハザム国最強の戦奴。


観客の歓声の中で、人を殺し続けた男。


だが。


その目は、どこか疲れていた。


グラドは戦場を見渡す。


死体。


悲鳴。


炎。


そして。


レオンを見つけた。


「……久しぶりだな」


レオンの顔が険しくなる。


「グラド」


十年前。


殺さなかった男。


その男が今、戦場の化け物として立っている。


グラドはゆっくり戦斧を持ち上げる。


「安心しろ」


「今日は観客はいねぇ」


その瞬間。


地面が砕けた。


グラドが突っ込む。


速い。


巨体とは思えない速度。


レオンが剣で受ける。


衝撃。


腕が痺れる。


「っ……!」


グラドの斧が地面を砕く。


兵士たちが吹き飛ぶ。


完全に、人間の域を超えていた。


レオンは息を整える。


「まだこんな戦い続けてるのか」


グラドが笑う。


「他に生き方知らねぇんだよ」


再び激突。


火花。


轟音。


だが。


レオンは気づいていた。


グラドの動きが荒い。


捨てている。


防御を。


命を。


「お前……」


レオンが目を細める。


「最初から死ぬ気か」


グラドは答えない。


ただ笑う。


「……疲れたんだよ」


その声は、あまりにも静かだった。


「勝っても」


「殺しても」


「歓声浴びても」


「何も残らねぇ」


戦斧が振り下ろされる。


レオンが避ける。


グラドの身体が大きく揺れる。


限界だった。


十年間。


戦い続けた肉体。


継ぎ接ぎだらけの命。


レオンは剣を構える。


「降伏しろ」


グラドは笑った。


「今さら無理だ」


次の瞬間。


グラドが最後の突撃をする。


レオンも踏み込む。


交差。


静寂。


グラドの身体が止まる。


胸から血が溢れる。


戦斧が地面へ落ちた。


レオンは荒く息を吐く。


グラドはゆっくり崩れ落ちる。


「……終わりか」


レオンは剣を下ろせなかった。


グラドが笑う。


昔よりずっと穏やかな顔だった。


「悪くなかったぜ」


「殺さなかった男に」


「殺されるならな」


レオンの目が揺れる。


グラドは空を見る。


黒煙。


灰。


それでも。


どこか解放された顔だった。


やがて。


静かに動かなくなる。


周囲が静まり返る。


その時だった。


遠くで角笛が鳴る。


黒い軍勢。


統率された混血兵たち。


その先頭に、一人の男がいた。


黒い外套。


黒く変色した片腕。


感情の薄い瞳。


黒騎士カズハ。


兵士たちが恐怖にざわめく。


「黒騎士……!」


「ハザムの側近だ……!」


カズハは、倒れたグラドを見る。


そして。


静かにレオンへ視線を向けた。


その瞬間。


レオンの背筋に、妙な感覚が走る。


どこかで見たような。


懐かしいような。


嫌な感じ。


カズハが口を開く。


「……その目」


ほんの少しだけ笑う。


「昔の俺みたいだ」


レオンの顔が険しくなる。


「何者だ、お前」


カズハは剣を抜く。


黒い刃。


まるで夜そのものみたいな剣。


「ただの敗残兵だよ」


次の瞬間。


二人の勇者が、激突した。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しずつですが、主人公自身も“人間”から変わり始めています。

この作品は、戦いや能力だけではなく、

「世界を作る側になった時、人は何を失うのか」

を描いていけたらと思っています。

よければ感想などいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

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