11-9 ネコ戦士、ツラーオたちを弔う
その後私たちは、シャベルやスコップみたいなものをたくさん積んだ小さな荷車を引く馬と共に、ベリー村と王都をつなぐ旧街道に向かった。
ツラーオたちが出没するので使われなくなっていたこの道は、傭兵が密猟をするには都合が良かったんだろう。
「これはっ…」
ギルド長が声を上げた。
ツラーオの無残な死体があちこちに転がっている…というのは、ギルド長にとっても初めて見る光景だったんだろう。
ツラーオたちは雑に一部の皮を破られ、肉を半分ぐらい削がれた姿で横たわっていた。
「ベリー村なら皮はきれいに剥いでバッグ作るし、骨はスープのダシにしたり、砕いてニワトリのエサにしたりしてるから、こんな状態で野ざらしにすることはないにゃよ」
私がそう言うと、ケラーさんは
「うむ…ひどい有様だな…」
と眉間にしわを寄せた。
ツラーオの死体は、全部で十二頭分。
私は一番大きいシャベルを持って、ベリーの実を食べた。
「さあ!穴掘って埋めてあげるにゃ!!」
と声をかけると、傭兵たちは応とこたえて、それぞれシャベルやスコップを持って穴を掘り始めた。
ツラーオの体の横に穴を掘っては私が死体を入れて、傭兵たちが土をかぶせて埋めて…
しばらくしてベリーの実の効果が薄れてきたら、またベリーを食べて。
二時間ぐらいで、十二個の土の山のお墓ができあがった。
私たちはその土の山のお墓をひとつずつ全員で拝んで、心の中で…声に出して、謝り続けた。
「もう二度と、こんなことはさせないにゃ…」
私が前脚を合わせて拝みながらつぶやくと、
「すみません…!!」
例の傭兵が、また涙を流して謝った。
「ネコ戦士殿、本当にすまなかった…!!」
ギルド長とケラーさんが私に頭を下げた。
「我らが弓矢の管理をもっと徹底していれば、このようなことは起こらなかった…本当に申し訳ない…」
ギルド長が、また私に謝ってきた。
なので私は
「もう弓矢、処分しちゃうにゃ。だってもうモンスターたちとの共存は約束してるし、傭兵たちがモンスターと戦う必要もなくなったにゃろ?」
とギルド長に言った。
ギルド長は目を見開いた後、ケラーさんと顔を見合わせてからうなずいた。
「その通りだ。アクアドラゴン対策にと使うようになった弓矢だが、もう必要ないのなら処分すべきだろう」
ギルド長の言葉に、傭兵たちもうなずいた。
私たちはツラーオたちを弔った後、急いでギルドに戻り、弓矢を処分し始めた。
王都の鍛冶師のとこに行って、矢じりを矢から外してもらって、溶かしてもらうように頼み、
「作るのにも手間をかけさせたのにすまぬが…矢じりを溶かす手間賃は支払うので、頼む」
ギルド長がそう言うと、鍛冶師は首を横に振って笑った。
「この鉄でまた何でも作れます。それを売れば、私には儲けになりますよ」
鍛冶師の言葉に、私たちはほっとして、またギルドに戻った。
「…残る問題は、この者の処分である」
ギルド長が例の傭兵をにらみつけた。
「うむ。危うく国が滅ぶところであったのだからな。処分は免れぬであろう」
ケラーさんもそう言って、傭兵をじろりと見た。
傭兵はもう何も言えず、青い顔をして立ち尽くすだけだった。
私も、これ以上は口出しできなかった。
これは、ギルド内の問題だ。
ホントのとこ、私はモンスターの討伐で小金持ちぐらいにはお金があったから、それをあの傭兵にあげても良かったけど、それじゃ何の解決にもならない。
何とかこの国が滅ぼされずに済んだから良かったようなものの、フリーザードラゴンが許してくれなかった可能性もゼロじゃないんだから。
…ってか、私はお腹が空いていた。
大急ぎで王都に来てから五時間以上経ってて、もうとうにお昼は過ぎてたからだ。
私は話の流れをぶった切って
「お腹すいたにゃ!!」
とギルド長に訴えた。
「お…おお、そうか、もう昼を回っていたか…そうだな、昼休憩を取るか…」
ギルド長は私のためにお昼ご飯を買いに行ってくれて、傭兵たちもそれぞれお昼ご飯を買いに行った。
そんな中、例の傭兵だけは、まだ立ち尽くしていた。
「あんたもお昼ご飯食べるにゃ!!」
私がそう言うと、傭兵は戸惑っていた。
「い、いえ…俺は…」
と言う傭兵に
「お腹が空いてたら、いい考えも浮かばないにゃ。まずは食べてから、みんなで話そうにゃ」
と言うと、傭兵はうなずいてから
「…では、俺は自宅に戻り、父に昼メシを食べさせてきます」
と言ってギルドを出て行った。
…そっか、お父さん病気なんだった…
あの傭兵は働きながら、お父さんのお世話してるのかな…お母さん、いないのかな…
私の父は病気で、急死だった。
ある日いきなり倒れてそのまま亡くなったから、ホントに突然で…呆然としたんだ。
…何とか、あの傭兵のお父さんの病気、治せないかな…
色々と考えていると、ギルド長が自分の分と私の分と、二人分のお昼ご飯を買って戻ってきた。
モロコシパンにキャベツと焼いた肉と目玉焼きが挟んであるサンドイッチだ。
「ありがとにゃ!いただきますにゃ!」
お礼を言ってから、私はギルド長と並んで大机の席について、サンドイッチを食べ始めた。
そして
「あの傭兵のお父さん、助けられないかにゃ…?」
とギルド長に言ってみると、ギルド長は目を見開いてから、はーっとため息をついた。
「…人のいいことだな…」
ギルド長がそう言ったので
「ヒトじゃないにゃ。ネコにゃ」
と返すと、ギルド長はふっと笑って
「そうか…そうだな」
と言った。
ギルド長の優しいレアな笑顔はやっぱりいいなぁ…と私は思った。
仔ネコの頃に使ってた鈴の入ったプラスチックのボールでいまだに遊ぶうちのネコですが、なんであんな小さなボールを抱きかかえて後ろ足で蹴りまくるんだろう…と不思議に思います。まあ本人が満足してるなら、それでいいか… あ、明日から第12章開始です~←




