11-8 ネコ戦士、フリーザードラゴンを呼ぶ
「俺が…フリーザードラゴンに…謝る…?」
呆然としている傭兵に
「そうにゃ。悪いことをしたのは、あんたにゃ。ツラーオたちを無駄に殺してごめんなさいって、心から謝るにゃ」
と言うと、
「そ…それでも許してくれなかったら…?」
傭兵はそう返してきた。
「許してもらえるまで必死で謝り続けるんにゃ!通訳は私がしてあげるから、とにかく謝り続けるんにゃ!!」
私が怒鳴ったら、ギルド長が
「…そのようなことで凍竜様にお許しいただけるだろうか…」
と不安そうに言った。
「許してもらえるまで謝らせるにゃ。もうこれしか、この国を救う方法はないかもしれないのにゃ…」
私は大きくため息をついた。
そして傭兵の方を向いて
「なんでそんなにお金が必要なのにゃ?お父さんが関係あるのにゃ?」
と尋ねてみた。
すると傭兵は
「…親父は小間物屋なんですが…最近悪い病にかかって、その病に効く薬が高くって…」
と、ぼそぼそと説明し始めた。
「王都の薬屋で買っても、医者から買っても、珍しいキノコ?からできてるとかで…一包五百ジロもするんです…」
ふむふむ、ぼったくられてるわけじゃなくて、通常価格からして高いわけね…一包五千円って…バカ高いわ…
「フリーザードラゴンにはヒトみたいな情があるにゃ。あんたの事情を心を込めて伝えたら、許してくれるかもしれないにゃ。とにかく必死に謝るにゃ!!」
私の言葉に、傭兵は腹をくくったようにうなずいた。
こうなると、どうやってフリーザードラゴンと会うかが問題だ。
この傭兵を連れて、あちこち走り回る?
それとも、またフリーザードラゴンが私のとこに来てくれた時に、この傭兵を呼ぶ?
うーん…と悩んだ結果、私は思いついた。
私がフリーザードラゴンに話を聞きたい時、いつでもフリーザードラゴンは来てくれた。
だったら、私から呼んでも来てくれるんじゃない?
そう思って私がギルドの建物の外に出たら、みんなもぞろぞろとついてきた。
ギルド長が
「ネコ戦士殿、何か考えが…?」
と聞いてきたので、
「フリーザードラゴンを呼ぶにゃ!!」
と私は答えた。
「ここは王都で一番高い場所にゃ。ここならフリーザードラゴンが来ても、王都の人たちには迷惑はかからないと思うにゃ。」
私はそう言ってから、心で呼びかけ始めた。
凍竜さん…凍竜さん…お願いにゃ…私のとこに来てくださいにゃ…あなたに謝りたいヒト族がいるのにゃ…
心の中だったけど、私はネコ戦士らしく、”にゃ”をつけて語りかけ続けた。
すると、少しして
”ネコよ…呼んだか?”
フリーザードラゴンの声がした。
フリーザードラゴンはギルドの建物近く…王宮の敷地内に、ゆっくりと舞い降りてきた。
「これが…いや、この方が…神に最も近い…」
ケラーさんがそうつぶやきながら、フリーザードラゴンを見つめた。
”我に謝罪したい者がいるとは?”
フリーザードラゴンがそう尋ねたので、私は例の傭兵を引っ張って、フリーザードラゴンの前に立たせた。
「早く謝るにゃ。ちゃんと、どうしてあんなことをしたのか、理由も話すにゃ」
私にそう言われても、傭兵はフリーザードラゴンを見つめたまま、怯えて何も言えずにいた。
「凍竜さんは、ちゃんと話聞いてくれるにゃよ。だから、心から謝るんにゃ」
そううながすと、傭兵は土下座してから、口を開いた。
「すみません…すみませんすみませんっ!!俺はっ…殺す必要もなかったツラーオたちを、たくさん殺してしまいました…」
私が通訳すると、フリーザードラゴンは
”つらーお…とは?…ふむ、野を駆けるのみの者たちにも名をつけていたのか”
と言った後、
”…殺す必要もなかった者どもを、なぜ殺したのだ…”
と、怒気を発して、雪と氷の粒をまき散らした。
すっごく寒くなったけど我慢して、私は傭兵に続きをうながした。
「親父が…父が病にかかって…その薬が珍しくって高くって…その薬代のためにツラーオたちをたくさん殺して肉を売りました…っ…すみません!すみません!!自分勝手な理由で、たくさん殺してっ…すみませんっ…!!」
傭兵の言葉を通訳して伝えると、
”クスリ、とは何だ…?”
フリーザードラゴンはちょっと落ち着いて、私にそう聞いてきた。
よかった…寒さ、ちょっとマシになった…
薬というものはモンスターの世界にはないのかな…どう説明したら…と悩んだ末に私は
「ネコは気分悪い時、青草を食べて吐いてすっきりするにゃ。飲んだり食べたりしたら病気が治るのが、薬にゃ」
と苦し紛れにネコ草を例に挙げて説明してみた。
”体の不調を癒す物をクスリと申すのだな”
幸い、それでもフリーザードラゴンは理解してくれた。
「父はその薬がないと、死んでしまうかもしれません…!!自分の親のためだけにっ…たくさんの命を奪ってすみませんでしたっ!!」
傭兵は涙を流しながら、額を地面にこすり付けてフリーザードラゴンに謝った。
傭兵の言葉をちゃんと通訳したんだけど、フリーザードラゴンはしばらく何も言わなかった。
”…弔え”
しばらくの沈黙の後、フリーザードラゴンはそう言った。
そして
”その者に伝えよ。己が命を奪った者どもを、心底悔いて弔え…と”
と言ったので、私はそれを傭兵に伝えた。
「…弔います!!ごめんって…すみませんって謝りながら!!必ず弔います!!」
涙を流しながら謝る傭兵の言葉を伝えると、フリーザードラゴンはうなずいた。
”ならば此度は許そう…だがもしもまた、このようなことをすれば…この集落は氷漬けにする”
この集落って…王都のことか…
ちょっとぞっとしながらフリーザードラゴンの言葉を伝えたら、ギルド長が頭を下げた。
「凍竜様のご温情、ありがたく存じます!!二度と…二度とこのような不埒者は出しませぬ!!」
ギルド長の言葉を伝えると、フリーザードラゴンは、またうなずいて、そして翼を広げた。
雲の上に飛んで行くフリーザードラゴンに向かって、私たちは頭を下げ続けた。
だんだんあったかくなってきたので、そろそろ半袖かな~と思います。ちなみに私の半袖Tシャツはすべてネコ柄です。




