11-7 ネコ戦士、ヒトの愚行を知る
私たちが焦ってたせいか、ガイは私も乗ってるのに最速で走ってくれた。
そして二時間で王都に着いた時、ガイの息がものすごく荒かったので
「ごめんにゃ、ごめんにゃ…ありがとにゃ…」
私はガイの首に頭をこすりつけて謝って、お礼を言った。
ギルド長がガイを休ませるために、すぐに厩舎に連れて行ってくれたので、その間に私は走ってギルドの建物に入り、
「ツラーオを殺したのは誰にゃ?!」
と大声で言った。
大机の周りに座っていた傭兵たちは驚いていた。
「えっ…ツラーオを殺したって…?」
と傭兵たちがお互い顔を見合わせている中、ひとりの傭兵だけが、うつむいて震えていた。
私は速足で歩いて行って、座ったままうつむいているその傭兵の顎を右前脚でつかんだ。
「あんただにゃ?!」
私は殺気を放ってたようで、傭兵はがたがた震えて何も言えなくなった。
「ネコ戦士殿、これは一体…?!」
ケラーさんが奥から走り出してきたので、私はケラーさんに向かって怒鳴った。
「こいつは、アクアドラゴン対策に改良した矢でツラーオたちをめちゃくちゃ殺したのにゃ!!」
私の殺気に、ケラーさんは腰を抜かした。
「な…なんと…?!」
ケラーさんも震えてたけど、そんなの構ってられなかった。
「こいつのせいで、国が滅ぼされるかもしれないのにゃ!!」
私の叫びに、ギルド内は凍りついた。
「ツラーオが大量発生した時は私もたくさん倒したけど、ベリー村のみんなで丁寧に解体して、ありがたくいただいたのにゃ」
ケラーさん達は、凍ったまま私の話を聞いていた。
「なのにこいつは、たくさんのツラーオたちを、ただ殺しまくったにゃ!!」
私が叫ぶと、みんなはびくっとした。
「ベリー村ではモールもツラーオも…皮も骨も全部大切に使わせてもらってるにゃ。何一つ無駄にしないのにゃ」
そこまで言って私は、犯人の傭兵をにらみつけた。
「…こいつは、ロクに血抜きもしないで皮もめちゃくちゃにして、そぎ取りやすい肉だけをテキトーにそぎ取って、ツラーオを放置してたのにゃ…一頭だけじゃないにゃ!!たくさんのツラーオを、ただ、殺したのにゃ!!」
私が怒鳴りつけると、傭兵は反論した。
「ただ殺したわけじゃない!!肉を…肉を取って売りたかったんだっ!!」
するとギルド長が怒鳴った。
「傭兵としての給金だけでは足りぬと申すか!!国民の血税を何と心得る!!この痴れ者がっ!!」
「金がいるんだよ!!大金が!!」
傭兵が怒鳴り返したので、私は大きくため息をついてから、傭兵に言った。
「…あんな肉、売れなかったにゃろ?」
傭兵は、やっと私の顔を見た。
「売れるわけないにゃろ?売れても二束三文にゃろ?」
傭兵は、震えた。
ギルド長が不思議そうな顔で私に聞いてきた。
「あんな肉…とは?売れても二束三文とは?ツラーオの肉は高く売れるのではないのか…?」
私は首を横に振って
「ベリー村ではツラーオは、倒したらすぐ血抜きして丁寧に皮を剥いで骨から肉を剥がして、それをまたきれいに小さく切って、ジンさんが上手に焼くのにゃ。その状態で売るから、高く売れるのにゃ」
と答えた。
「血抜きしないと肉は生臭いってカールさんが言ってたにゃ。生臭くって、乱暴に剥ぎ取っただけの見た目も汚い生肉が、高く売れると思うにゃ?思ったより安かったから、ツラーオ乱獲したんにゃろ?」
私がそう続けると、みんなは”あっ”という顔をして、犯人の傭兵は泣き出した。
「ネコ戦士殿が長旅に出てる間っ…ベリー村でツラーオを倒してくれって言われて…アクアドラゴン用の矢を使ったら…遠くからでもあっさり倒せたんだ…だからっ…」
傭兵の言葉を聞いて、ギルド長がまた怒鳴った。
「ネコ戦士殿やベリー村に責任をなすりつけるな!!公的なモンスター討伐以外には持ち出し禁止の矢を勝手に持ち出し、ツラーオを乱獲するなどっ…恥を知れ!!」
傭兵がまた泣き出したので、私は言った。
「あんたのせいで、この国は滅ぼされるかもしれないにゃ」
傭兵は、へたり込んで泣きながら首を横に振った。
「俺…俺…そんなつもりじゃ…」
「そんなつもりもどんなつもりもないにゃ!!あんたのせいで、みんな死んじゃうかもしれないのにゃ!!」
私が怒鳴ると、傭兵は声を上げて泣いて、他のみんなは呆然として立ち尽くした。
「ネ…ネコ戦士殿…この件により、この国が隣国のごとく…滅ぼされる…と…?」
ケラーさんが、やっとという感じで声を絞り出した。
「…フリーザードラゴンがこのことを知ったら、ヒト族が約束を破ったって思って、怒るかもってことにゃよ」
私の言葉に、ケラーさんは震えた。
「フリーザードラゴンの力だけでも…この国は滅ぶ可能性があるのだったな…」
私はため息をついた。
「…起こしたことはもう取り返しがつかないにゃ。あとは…フリーザードラゴンに必死に謝るしかないにゃ」
そう言うと、犯人の傭兵は顔を上げて
「そっそうですね!!ネコ戦士殿が謝って下されば…!!」
と言ってきた。
「貴様っ!!」
ギルド長が怒鳴るのと同時に、私は右前脚で傭兵の顔を叩いた。
傭兵は部屋の隅っこまで吹っ飛んで、壁に激突した。
「私が本気で殴ったら、あんたは今頃死んでるにゃよ」
傭兵のとこに歩いて行きながら私がそう言うと、
「死ぬわけにはいかないんだ!!親父のために俺はっ…!!」
傭兵は体を起こしながら叫んだ。
「この国が滅ぼされたら、あんたもあんたの父親も死ぬんにゃ。あんたがやらかしたことの結果にゃ」
傭兵を見つめながらそう言うと、傭兵はもう言葉もなく、へたり込んだ。
私は傭兵に言った。
「フリーザードラゴンに謝るのは、あんたにゃ」
下書きではモモは、「あんた」ではなく「お前」と傭兵のことを言ってました。でも、人間だった頃のネネコなら「お前」なんて言わないよな~と思ったので、「あんた」にしました。私なら迷わず「お前」と言いますw←




