11-6 ネコ戦士、ツラーオの死体を発見する
ネネを連れて帰ると、ネネは元々ヒトと暮らしていたせいか、すぐにベリー村のみんなにもなじんでくれた。
クロとネネは私について歩いたり、二匹で追いかけっこをしたりして、楽しく過ごすようになった。
いずれはクロとネネの間に仔ネコが生まれて、ベリー村はさらににぎやかになるだろう。
私がどのぐらい生きられるかは分からないけど、フリーザードラゴンと約束したように、ヒトはモンスターとの共存の道を歩み始めたから、もうこの国が隣国のようにモンスターの神様に滅ぼされることはない。
時々村の生活のためにモールやツラーオを倒すけど、その素材は余すことなく大切にいただいてるし。
ニワトリも順調に増えて、村のみんなで卵を食べられるようになったし、ベリー村はホントに豊かになった。
そんなある朝村長が
「モモよ、そろそろツラーオを一頭倒してきてくれんかのぉ?ジンの店の氷室のツラーオの肉がなくなってきたそうじゃ」
と言ってきた。
「わかったにゃ!カールさん、行くにゃ!」
「はいよっ!!」
いつも通り、私はカールさんと一緒に村の東門を開けて外に出た。
村の東門を出たあたりは広めの草原で、モールの群れは大体そのあたりにいる。
その奥の長い坂を登るとツラーオたちがいるけど、坂の手前の左は林になってて、そこはツラーオから逃げるモールの避難場所っぽくなってるみたいだった。
今日はモールには用がないので、私はカールさんに東門を出たとこで待っててもらって、坂を登った。
高台にツラーオの気配がなかったので、私はさらに先に進んだ。
東門から高台を通っていくと、王都に続く旧街道みたいなのがあったけど、ツラーオたちが出没するせいで、こっちの道は使われなくなったとのことだった。
さらにその道を進むと、何かが腐ったような匂いがしてきた。
見ると、野ざらしになったツラーオの死体があった。
一頭だけじゃない。
旧街道沿いのあちこちに、ツラーオの死体が転がっていた。
…おかしい。
私は四つ足で走ってカールさんのもとに戻って
「カールさん!おかしいにゃ!ツラーオがあっちこっちで死んでるにゃ!!」
とカールさんに向かって叫んだ。
「なんだって?!」
カールさんも驚いてそう叫び、私たちは走って丘を登った。
「…これは…ひどいな…」
カールさんはツラーオたちの死体を見て、そう言った。
「俺らが解体する時にはまず血抜きして皮をきれいに剥いで、骨だけになるように肉も内臓も残さず頂くのに…骨だってスープのダシに使えるのに、勿体ない…こんなの、ただ殺しただけじゃないか…」
カールさんは眉間にしわを寄せた。
このツラーオたちは、皮剥きもめちゃくちゃだし、肉だけを…そぎ取りやすそうなとこだけをそぎ取られてて、内臓はそのまま放置されている。
「共食い…か…?」
カールさんが言うので、
「ツラーオはまず柔らかいお腹を食い破って内臓から食べるにゃ。共食いなら、内臓はなくなってるはずにゃ」
私はそう返した。
すると、カールさんが何かに気づいて
「ん?これは…?」
と言った。
「何にゃ?何か変わったとこ、他にもあるにゃ?」
と聞くと、カールさんは
「…骨に、ナイフで削ったような跡がある。それに、頭に小さな穴があるぞ」
と、ツラーオの死体をあちこち触りながらそう答えた。
私は頭の小さな穴っていうのが気になって、ツラーオの頭をじっくり見てみた。
これは…
「…矢の跡にゃ…」
私の言葉に、カールさんは
「矢?」
と返してきた。
これは、矢の跡だ。
私はツラーオの頭をひっくり返して、反対側の穴を見てみた。
無理に引っ張って皮が破れたような穴。
これは、カエシのついた矢を引き抜いた跡だ。
「…カールさん!!村に戻って村長さんに伝書鳩飛ばしてもらうにゃ!!」
私はカールさんと一緒に走って東門まで戻って、門から村に入りながら
「村長さん!!王都に伝書鳩飛ばして下さいにゃ!!」
と叫んだ。
村長が慌ててよたよたと走ってきて
「ど、どうしたんじゃ?!」
と言った。
「虐殺にゃ!!ツラーオが殺されまくってたのにゃ!!」
私がそう叫ぶと、
「ぎゃ、虐殺となっ?!」
村長はびっくりした顔をした。
「モンスターとの共存は、フリーザードラゴンとの大切な約束にゃ!!ベリー村では時々モールやツラーオを倒すけど、その素材を大切にいただくから許されるのにゃ。でも、さっき見つけたツラーオたちはちょっと肉を剥ぎ取っただけで、ただ無残に殺されて放っとかれてたのにゃ!!フリーザードラゴンが知ったら怒って…この国は滅ぼされるかもしれないにゃ!!」
と、私がことの重大さを訴えると、
「なっ、なんとっ…?!」
村長はそう言って慌てて手紙を書き、伝書鳩につけて飛ばした。
三時間ほどして、ギルド長が馬に乗って村に駆け込んできた。
「ネコ戦士殿!!迎えに参った!!」
手紙の内容が内容だっただけに、ギルド長も必死の形相だった。
今回ばかりは、馬をゆっくり休ませてあげられない。
「ガイさん!!ごめんにゃ!!苦しいだろうけど、すぐに王都に向かってにゃ!!」
必死に馬に謝りながらお願いすると、ガイは、ひひーん!!といなないた。
”乗れ!!”ってカンジだ。
かっこよすぎるガイに飛び乗り、
「クロとネネは頼んだにゃ!!」
と言い残して、村のみんなの見送りも待たず、私たちは王都へと走り出した。
なんでこんなことに…
私は心の中でずっと、なんで?なんで?と、誰にともなく問い続けた。
うちのネコはご飯をちょっと食べるとおやつを要求します。そしておやつを食べ終わると、ご飯皿の所に戻って、ご飯をもりもりと食べ始めます。おやつがさらなる食欲の起爆剤…???




