11-1 ネコ戦士、ネコの秘密を知る
クロを王都に連れて行って、ケラーさんや王様に紹介したけど、結局何もわからなかった。
クロは、四人のネコ戦士たちの子孫なのか。
それとも、たまたま生き残ってた大昔のネコの子孫なのか。
そんなの、ホントはどうでもいいんだけど。
前世で一緒に暮らしてたのと同じようなかわいいネコと暮らせて、私は幸せなんだから。
クロは前世で言えば生後半年足らずぐらいの大きさなので、まだ仔ネコだと思うけど…ホントに親兄弟はどうしたんだろう。
クロは虫を食べてたみたいだし、食べ物がなくて親や兄弟は死んじゃったのかも…
だったら私が、クロを幸せにしたい。
この先もずっと…この世界で生きていけるなら。
でも、この世界に召喚された私の先のことはわからない。
「できるだけ長く、一緒にいようにゃ…」
ベッドで眠るクロに話しかけると、クロはベッドに埋もれて口元とヒゲをぴくぴく動かしたけど、ぐっすり眠ってた。
この世界でできるだけ長く生きていきたい。
そう思いながら、私はクロを抱きかかえるように丸くなって眠った。
”ネコよ…”
鈴を転がすようなきれいな声で、私は目を覚ました。
まだ暗いけど、多分もう朝だろう。
私は前脚で軽く顔を洗ってから、装備を身に着けて家を出た。
思った通り、バーサさんはもう起きていた。
「おはようモモちゃん、早いねぇ」
「おはようにゃ」
挨拶すると、バーサさんはぴんときたように
「フリーザードラゴンさんかい?」
と言ってきた。
いつの間にか”さん”づけになっている。
私は笑って
「そうにゃ。クロはまだ寝てるから、そっとしといてにゃ」
と答えた。
そしてフリーザードラゴンの声に導かれるまま、私は北門に向かった。
北門を開けると、やっぱりすごく寒くて、雪と氷がちらちらと舞っていた。
「凍竜さん、おはようございますにゃ」
と挨拶すると、フリーザードラゴンは
”久しいな、ネコよ”
と挨拶を返してくれた。
その時、北門の方から
「ニャーッ!ニャーッ!!」
とクロの声がした。
私は慌てて
「クロ、寒いから来ちゃダメにゃ!」
と声をかけたんだけど、クロの鳴き声は止まらなかった。
仕方ないので北門を少し開けると、クロが私に向かって走ってきて飛びついた。
するとフリーザードラゴンが言った。
”…獣人族の子孫か…”
「なっ、なんでわかるにゃ?!」
クロが獣人族の子孫だと言われて驚いた私に
”神々の匂いがわずかではあるが残っている”
とフリーザードラゴンはこともなげに答えた。
”我らが同胞であったネコの中には、人里に入り込みヒト族と仲良く暮らす者もいた”
おお、バーサさんが言ってた通りだ。
”神々はそれに目を留め、人里に住んでいなかったネコたちを祝福し、力が強く足も速い獣人族として生まれ変わらせた”
あっ…だからヒトと住んでたネコはヒトに知られてて、獣人族はネコ戦士って言われたんだ。
”そのため、獣人族には神々より祝福された痕跡…匂いがあったのだ”
クロからはその匂いがするってことか…
クロはホントにネコ戦士たちの子孫なんだ…
「昔人里にいたネコたちはどうしたにゃ?今は全然いないにゃ」
私の問いに対するフリーザードラゴンの答えは
”人里に住まっていたネコたちは数が少なかったため、繁殖の機会も少なかったのか、ここ百年は、我は姿も見ぬ”
…ということだった。
野生のネコはもういないかも…ってことなんだ…
「クロが獣人族の子孫だって言ったけどにゃ、クロはネコにゃよ?獣人族の子供は獣人族じゃないにゃ?」
そう尋ねると、フリーザードラゴンは衝撃的な答えを返してきた。
”獣人族は神々に祝福された個の存在だ。獣人族同士が繁殖しても、生まれるのは獣人族ではなく、ネコだ”
待って待って待って。
じゃあ獣人族同士が子供を作っても、その子たちはみんなただのネコだったってこと?!
”獣人族は情深かったので、産まれた我が子が獣人族でなくとも愛しんで育てたであろう…だが…そのネコはいずこに暮らしていた?”
フリーザードラゴンの問いに、私は答えた。
「神様に滅ぼされた隣国の、さらに隣の国の…ガレキの中にゃ…」
私の答えを聞いて、フリーザードラゴンは辛そうに顔をゆがめたように見えた。
”…それではネコには厳しい環境だったであろうに…よくぞ何百代も細々と生き続けてきたものだ…”
もっと緑豊かなとこなら、きっと鳥とかトカゲみたいなのとか…エサも豊富だっただろう。
でもあんな荒れ果てたとこじゃ、エサを探すのも大変だっただろうな…虫食べてたもん。
”よくぞ…生きていてくれた…”
フリーザードラゴンは、クロに向かって少し頭を下げた。
”ヒトとの共存のための架け橋にするため、ネコを獣人族に変えたために…そなたらが辛酸をなめることになったのだ…神々に代わり、我が詫びる。すまなかった…”
フリーザードラゴンがそう言うと、クロは
「ニャー!」
と言った。
気にすんな…かな?
クロよ…神様に最も近い存在に対して、それは失礼だよ…
本日から第11章開始です。ネコが膝に乗るって言いますが、実は太ももに乗ってます。でもたまに、伸ばした脚の膝の上に乗られると、曲がっちゃいけない方に膝が曲がってめっちゃ痛いです…




