10-4 ネコ戦士、ギルド長と旅をする
ギルド長が引いてきてくれた馬車は、前に村の子供達を積んで行ってくれたのより、一回り大きい荷馬車だった。
前世の軽トラの荷台より広くて、屋根もちゃんとついていたので、荷台で眠れそうだった。
その中にはたくさんの干し肉やモロコシパンや野菜や果物の他に、馬のための馬草も積んであった。
「馬さん、ちゃんとしたごはん食べられるようになるにゃよ!」
と馬に話しかけると、馬は首を縦に振った。
すると
「今まで馬に何を食べさせていたのだ?」
とギルド長が尋ねてきた。
「馬さんがそこらの枯れ草を自分で食べてくれてたにゃ。あと、リンゴもあげてたにゃ」
私が答えると、ギルド長はほっとした顔をした。
「うむ。痩せている様子もないし、健康上にはほぼ問題はなさそうだ」
そう言って、ギルド長は馬の横にしゃがんで、ひづめの手入れをし始めた。
あっ…
「ご、ごめんにゃ…いつもギルド長さん、ひづめの手入れしてあげてたのに私、忘れてたにゃ…」
馬に謝ったら、馬は首を横に振った。
そしてひづめの手入れを終えるとギルド長は
「石なども食い込んでおらぬ。もし何かあれば、馬からネコ戦士殿に訴えたはずだろう」
と言った。
なるほど、痛い所でもあったら、馬は私に知らせてくれただろうな。
「痛いとこなくて良かったにゃ!」
馬にそう言うと、馬はひひんといなないた。
「この先は荷馬車を引いてきた馬と共に荷馬車を引いてもらう」
ギルド長はそう言って、私と旅をしてきた馬を荷馬車につないだ。
そして馬の両脇のカバンを外して、それを荷台に入れた。
前に見た時も不思議だったんだけど、この荷馬車には御者台がない。
ということは、ギルド長はギルド長が連れてきた馬に、私は私と一緒に来てくれた馬に乗って、荷馬車を引くってこと?
私が色々考えていると、ギルド長は新しい馬を馬車から外して、湧き水を飲ませ始めた。
「王都よりここまで三日で来たのだ。間で休みは取らせたが、ここでも少し休ませたい」
ギルド長はそう言った。
出会ったころのギルド長は、馬を休ませるってことを考えてなかった。
馬を休ませてって私が言い始めてから、ギルド長は馬を休ませてくれるようになったんだ。
私はなんだかうれしくなって、
「もちろんにゃ!馬さん、ちゃんと休んでにゃ~」
と新しい馬に言った。
新しい馬は、ぶるるっと鼻を鳴らして、うなずくように首を振った。
私と一緒に来てくれた馬と、新しい馬。
ややこしい。
「馬さんたちに名前はないのにゃ?」
ギルド長に聞いてみると、
「いつもの私の馬がガイで、今日新たに連れてきた馬がエリンだ。この二頭は夫婦だ」
と答えた。
私はギルド長の言葉を聞いて、馬に申し訳なくなった。
「ごめんにゃあ…いつも奥さんと離ればなれにさせてたのにゃ…」
ギルド長のいつもの馬…ガイに話しかけると、ガイは首を横に振った。
気にするなって感じかな?
「エリンさんもごめんにゃ…」
新しい馬…ガイの奥さんのエリンにも謝ったけど、エリンも首を横に振った。
するとギルド長が言った。
「ガイもエリンも我らの仲間だ。いつも我らの頼みを聞き入れてくれるが、気に入らなければ態度で示す」
え?
「厩舎でガイとエリンを隣りあわせから離そうとした時、ガイもエリンも暴れて、馬草桶を蹴り飛ばしたのだ。それで二頭が夫婦だとわかったのだ」
「そうなのにゃ?イヤならイヤって言ってくれるのにゃ?」
ガイとエリンは、私の問いに対して、息ぴったりにうなずいてくれた。
「にゃっ…だからエリンを連れてきてくれたのにゃ?」
ギルド長に尋ねると、ギルド長はうなずいた。
「二頭立てで長旅をするなら、馬同士の仲は良い方が良い。夫婦ならばそれ以上の相性はあるまい」
なるほどなぁ…と思った私は、ふと思いついたことをギルド長に言ってみた。
「ギルド長さんも奥さんいるにゃろ?ギルド長さんの奥さんも、夫が留守ばっかりで淋しいにゃ?」
「私は独り身だ」
え?!ギルド長、独身なの?!
目を見開いた私に、ギルド長は
「何か問題はあるか?」
と言った。
「んにゃ…ベリー村にも仕事一筋で独身の人もいるにゃ…」
私は鍛冶屋のケンさんのことを思い浮かべた。
エリンも充分休んだので、私たちは隣国の跡地を発つことにした。
「このトーネ王国と隣のゲナン王国の間にも、両国をつなぐ街道があった。今では雑草が生い茂っているが、馬車で通るにはさして問題はなかろう」
ギルド長の言葉にうなずいて、私はガイに乗せてもらった。
「ガイさん、エリンさん、よろしくお願いしますにゃ!」
私が声をかけると、ガイとエリンはまた、息ぴったりにひひんといなないた。
その後、ややゆっくりと進んで行くと、旧街道をふさぐように大きな木が倒れていた。
「むっ…どうしたものか…」
とギルド長が言ったので、
「まかせてにゃ!」
と言って、私はベリーの実をポーチから取り出して食べた。
そしてガイから飛び降りて、倒木を頭の上に持ち上げて道のわきに放り投げた。
倒木は腐りかけていたから見た目よりずっと軽くて、思ったより遠くに飛んで行った。
「か…かたじけない…」
ギルド長はちょっと引きながら私にお礼を言った。
ネコ戦士のバカ力は知ってるだろうに、今さら引くなよ…
今日も寒いので手がかじかんでキーボードが打ちにくいです。そんな私のそばで、あったかい西日を浴びながらネコが寝てます…ネコになりたい…←




