10-3 ネコ戦士、泣きながら笑う
自業自得。
確かに、この隣国の王にはそうだっただろう。
もしかしたら、王の周囲の人間たちも、ネコ戦士たちをこき使ったかもしれない。
だったら、その人たちにも自業自得と言えるだろう。
…でも。
他の…普通の国民たちはそうじゃなかったら?
ベリー村の人たちみたいにいい人たちも、王たちへの報復に巻き込まれたんだとしたら?
それは…あまりにもひどい巻き添えだ。
ベリー村のみんなが同じような目に遭ったら…
そう考えると、私はやるせない気分になった。
でも、フリーザードラゴンは、私に言った。
”すべては過ぎ去りし時の彼方の話だ”
…って。
そうだ。
隣国の王の暴挙に対するモンスターの神様からの報復の巻き添えになったかもしれない人々のことを、今の私が思い悩んでも仕方ない。
今、私がすべきこと、したいことは。
四人のネコ戦士たちの子孫がいるなら、それを探すことだ。
私は耳と鼻に神経を集中して、あたりの様子を探りながら歩いた。
馬も、ゆっくりついてきてくれている。
何の音もしない。
何の匂いもしない。
モンスターすらいない。
「誰かいないにゃーっ?!」
思い切り叫んだ私の声は、ただガレキの山に虚しく響いただけだった。
日暮れ近くまでガレキの山の探索をした私は、疲れ切ってしまった。
そろそろ今夜休むところを探さなきゃいけない。
「ゴメンにゃ…私につきあわせて歩かせて…疲れたにゃろ?」
馬に話しかけると、馬は首を横に振った。
でも、きっと馬も疲れてるはずだ。
私は鼻を上に上げて、枯れ草と水の匂いを探した。
すると、高台みたいなとこのすぐ下あたりから、水と枯れ草っぽい匂いがした。
近づいてみると、湧き水みたいなのと、枯れた雑草のかたまりがあった。
「今夜はここで休むにゃ」
と馬に言うと、馬はひひんと鳴いて、うなずいてくれた。
馬が枯れ草の一部を食べていたので、私はリンゴも差し出した。
馬に着けるカバンには、かなりの量の干し肉やリンゴやベリーを入れてたけど、もう半分近く減っていた。
もうこれ以上、先には進まない方がいいかもしれない。
残念だけど、帰りの道のりを考えたら、そろそろ引き返した方が良さそうだ。
私は干し肉とリンゴを食べた後、装備を脱いで丁寧に毛づくろいをして、もう一度装備を着けた。
明日の朝、ここを発ってベリー村に帰ろう。
そう思いながら、枯れ草に布団を敷いて、馬と一緒に眠った。
翌朝目覚めると、馬は枯れ草を食べていた。
私はまたリンゴをひとつ馬にあげて、自分も朝ごはんの干し肉とリンゴを食べた。
そろそろ来た道を戻ろう。
そう思って馬の体にカバンを着けていると、声が聞こえた気がした。
フリーザードラゴン…?
いや、フリーザードラゴンなら頭の中に響いてくる…鈴を転がすようなきれいな声だ。
「…戦士殿!!」
えっ?!
「ネコ戦士殿!!」
高台の上から走りながら私を呼んでいたのは
「…ダナンさんにゃ?!」
観測隊の飛行士、ダナンさんだった。
見ると、高台の上に飛行艇があった。
「あんなとこに降りて大丈夫にゃ?あそこから飛べるにゃ?」
と聞くと、ダナンさんは
「ここには調査のため何度か訪れております!」
と笑って答えた。
そして
「ギルド長も、馬車でこちらに向かっております」
とダナンさんは言った。
え?ギルド長が???
私が混乱していると、
「ネコ戦士殿、国王陛下のご命令により、ネコ戦士殿の支援に参った!!」
ギルド長の大きな声がした。
「ネコ戦士殿が四人のネコ戦士の子孫を探す旅に出た旨、国王陛下に申し上げた所、私にもその旅を支援するようにと陛下は命ぜられたのだ」
ギルド長の言葉に、私の目からは涙があふれてきた。
平気なふりしてたけど、私は心細かったんだ。
馬にも苦労かけてるし、私も疲れ切ってた。
「…だから国王陛下に申し上げると言ったのだ」
泣いてる私を見て、ギルド長はそう言った。
「陛下ならば必ず、ネコ戦士殿の力になるようにと仰ると思っていた。なのに貴殿は旅立ってしまったのだ」
呆れたようにギルド長が言うので、
「そんなら先にそう言ってにゃ!!」
と私は怒った。
怒りながら、泣きながら、笑った。
そして感情の爆発が治まった後、私はダナンさんに尋ねた。
「ダナンさんはどうしてここに来たのにゃ?」
「はっ。ネコ戦士殿のいらっしゃる場所と、ネコ戦士殿の状態を確認し、陛下にご報告申し上げるためです。お元気そうで何よりです!」
ダナンさんはそう言って敬礼した。
そしてダナンさんはまた高台に走って戻り、飛行艇で空高く舞い上がっていった。
相変わらずお見事だ。
飛行艇を見送っていると、ギルド長が私に向かって
「この馬車には充分な食料を積み込んである。さらに遠方まで探索し、ベリー村まで戻るに足るであろう」
と言った。
「…ありがとにゃ…!!」
ただひたすらありがたくて、ひとりで旅立ったのが申し訳なくて、私はまた、泣きながら笑った。
ドラクエⅦリメイクまだやってますが、ネコ系モンスターを倒すと、ネコっぽい鳴き声を残して倒れて行きます。その声を聞くとなんだか辛くなります…




