9-5 ネコ戦士、ヒヨコを育てる
王都でケラーさん達にフリーザードラゴンから聞いた話を伝えて、私はベリー村に戻った。
そしていつもの平和な…時々モールやツラーオを倒しつつ、ニワトリたちの世話をする日々に戻った。
「まだヒナは生まれないのかな」
カールさんが、卵を抱くメスを見ながら言った。
「多分もうしばらくしたら生まれるから、もうちょっと待つにゃ!」
ヒヨコを楽しみにしてた私は、うきうきして笑って答えた。
モロコシと野菜クズと骨粉を混ぜたエサをあげて、フンを掃除して、メスが抱いてない卵はありがたくみんなで食べさせてもらって。
そんな日々を繰り返していると、思った通り卵から三羽のヒナが孵った。
前世で見たことのある黄色いふわふわのヒヨコに、私は飛び上がって喜んだ。
「かわいいにゃ!かわいいにゃ!」
と私が小躍りして喜んでると、カールさんも
「ホントだ。かわいいなぁ」
と、にこにこ笑ってヒヨコたちを眺めてた。
ヒヨコたちは親鶏たちにならって、エサをついばんだり水を飲んだりし始めた。
ヒヨコたちを触りたかったけど、私はネコだ。
うっかり爪を出したりしたら、ヒヨコたちにケガをさせてしまうだろう。
ヒヨコをつかんで頬ずりしたい気持ちを抑えて、私はヒヨコたちの世話をした。
「かわいいにゃあ~」
とヒヨコたちを見つめてつぶやくと、
「モモちゃんの方がかわいいよ」
と、カールさんが私の方を見て言った。
…ネコとヒヨコってやっぱりヒト的には同じ類のかわいさなのかな…
私はカールさんと一緒に、毎日ヒヨコのお世話をし続けた。
すると、あっという間にヒヨコたちは、ニワトリの小型みたいな姿になった。
「ヒヨコ…大人になっちゃったにゃ…」
私はちょっと残念に思って、そう言ったけど
「ヒヨコが大人になったら、また卵を産んでくれるだろ?成長を喜ぼうよ」
とカールさんが言った。
そうだ。
村のみんなで卵を食べられるように、ニワトリを増やしたかったんだ。
だったらヒヨコの成長は喜ばしいことなんだ。
「…そうにゃあ…」
私は喜び半分、残念半分でカールさんにそう答えた。
それでも元ヒヨコたちは私になついてくれてたので、私が小屋に入るとついて歩いてくれた。
ヒヨコを脱しかけてても、やっぱりかわいい。
かわいい元ヒヨコの若鶏たちのお世話をしてると、ある日産卵箱に小さな卵があるのを見つけた。
これって…若鶏が産んだ卵…?!
私は興奮した。
「にゃっ…!!ヒヨコの卵にゃ!!」
「えっ?!もう卵を産んだのかい?!」
カールさんはびっくりしてたけど、私は前世の経験で知ってた。
小学校で飼ってたニワトリのヒヨコたちも、ちょっと育ったら卵を産み始めたから。
ヒヨコたちを我が子のように育ててた私は、思わず言ってしまった。
「この卵は、私の孫にゃー!!」
カールさんはドン引きしてた。
「ま…孫って…」
カールさんのつっこみに私は我に返った。
この卵は多分、若鶏に抱かれることはない。
ということは、この卵は食べなきゃいけないんだ。
「孫を…孫を食べなきゃなのにゃ…」
私はすっごく悲しかったけど、このままほっといたら、この卵は腐っちゃうだろう。
「…みんなでありがたく食べさせてもらうにゃ…」
私はそう言って、若鶏の卵を拾い上げた。
「じゃ、ちょっと焼いてみるかい?」
とバーサさんがフライパンに若鶏の卵を割って入れた。
いつもの親鶏の卵よりちょっと薄い黄色の黄身だった。
みんなでちょっとずつ、その目玉焼きをつついて食べたけど、私は食べられなかった。
「…私の孫にゃ…」
しつこくそう言う私に、カールさんが言った。
「孫なら、俺と作ればいいだろ」
どうやらカールさんは、獣人族がモンスターとヒトのハーフ?らしいことを知って、私とも結婚できると思い始めたらしかった。
私はほぼネコだから、多分ムリだと思うけどなぁ…と呆れたけど、そんな私の気持ちに気づいたのか、村長が
「モモよ、カールが妙なことを言ってすまん…」
と私に謝ってきた。
私は慌てて
「村長さんが謝ることじゃないにゃよ!」
と答えたんだけど、村長は違うことを心配してたみたいだ。
「モンスターの神とヒトの神の子…神の産みし子と、たかがヒトの子が結ばれるなど、カールのやつめ、思い上がりも甚だしい…」
村長の言葉に、私はずっこけそうになったけど、そう思ってカールさんを説得してくれれば都合は良さそうだ。
村長はそのセンでカールさんを叱ってくれたらしく、カールさんの妙な発言はなくなった。
その代わりカールさんは
「そうだよな…俺ごときが神の子と結婚なんて…望んじゃいけないことだったんだな…」
と妙に卑屈になってしまった。
…めんどくさいな、この人…
私は心の中で、大きくため息をついた。
昨日はもりもり食べてたフードを、昨日と同じぐらい元気いっぱいな今日はあまり食べない…ネコって気まぐれ。




