7-10 ネコ戦士、フリーザードラゴンに出会う
バツ村の人たちの話を聞いたので、あとは王都に戻ってケラーさんに報告して、また対策を話し合わなきゃ。
「ギルド長さん、そろそろ王都に戻るにゃ?」
私が言うと、ギルド長は
「うむ。王都に戻り、小休止したのちベリー村まで送ろう」
と、うなずいて言った。
「じゃ、私たちは王都に戻るにゃ」
とバツ村の人たちに言うと、
「お気をつけて…」
と言いかけて、バツ村の村長は動きを止めた。
後ろにいる村人たちの表情も凍り付いている。
その時、ちらちらと雪が…小さな氷の粒が舞い降りてきた。
「ネコ戦士殿っ…」
ギルド長が私の上を見ながら、がたがたと震えだした。
まさか…と思って顔を上げて上を見ると
その美しいドラゴンは
舞い降りようとしていた…
神々しい
まさにその言葉にふさわしい、ホントにきれいなドラゴンだった。
銀色のような、薄水色のような細かいウロコに包まれた、ファンタジー世界の物語に描かれていたような、正真正銘の飛竜。
その背中に生えている大きな翼も銀色のような水色のような色で、まさにファンタジーの世界のドラゴンだ。
あまりの美しさに、私はたっぷりと見とれてしまった。
「…きれいだにゃ…」
私の口からは、自然にその言葉が出ていた。
サンダードラゴンもきれいだったけど、あれより少し大きくて、形も似ている。
でも、背中に広がる大きな翼も相まって、サンダードラゴンよりずっと…ずっと美しかった。
四人のネコ戦士たちはフリーザードラゴンの神々しさに気圧されたそうだけど、今、その気持ちが分かった。
美しすぎるんだ。
美しすぎて、たとえこれがヒトにとっての脅威であっても、傷つけてはならない…と、そう思えるんだ。
私がじっと見つめていると、フリーザードラゴンも私を見つめていることに気づいた。
にらみ合いじゃない。
見つめ合いだ。
フリーザードラゴンと私との距離はおよそ5メートル。
お互い身動きひとつせずに、じっと見つめ合っていた。
そしてしばらくして、フリーザードラゴンは舞い降りてきた時と同じように、ゆっくりと翼を広げて羽ばたいて、ゆっくり…ゆっくりと空に戻って行った。
雪と、小さな氷の粒をまき散らしながら。
やがて雪はやんで、世界は元の静かなバツ村に戻った。
私の後ろから、ふーっという、長く息を吐く音がした。
ギルド長が、よろめきながら何とか立っていた。
その後ろではバツ村の人たちがへたりこんでいた。
「…フリーザードラゴン、きれいだったにゃー…」
と私が言うと、ギルド長は
「…ずいぶんと余裕があったのだな…」
と、まだ青い顔をしたまま呆れたように言った。
なので私は
「余裕っていうか、ホントにきれいだにゃーって見とれてただけにゃよ」
とギルド長に答えた。
「…それを余裕と言うのだ…」
ギルド長はため息をついた。
「でも、見とれてただけだから、立ち去ってくれたにゃよ?」
と私が言うと、ギルド長は首をかしげた。
「どういうことだ?」
ギルド長がそう聞いてきたので
「もし私が焦って攻撃を仕掛けてたら、今頃この村は滅ぼされてたかもしれないにゃよ?」
と私は答えた。
ギルド長とバツ村の人たちは、あっ…という顔をして凍りついた。
「なるほど…それもそうだな…」
ギルド長は、ふーっと息を吐いた。
やっと緊張が解けたみたいだ。
バツ村の人たちも落ち着いたみたいで
「ネコ戦士様がいらしたおかげで助かりました…」
と村長が言った。
助かった?そうかなぁ?
もしかしてフリーザードラゴンが舞い降りてきたのは、私が…ネコ戦士がいたからかもなのに。
そう思ったので
「私がいたからフリーザードラゴン、降りてきたのかもしれないにゃよ」
と村長に言った。
バツ村の人たちは、今度こそマジで凍りついた。
もしホントに…私がいたからフリーザードラゴンが降りてきたんだとしたら…
フリーザードラゴンにはまた、近いうちに会うことになるのかもしれない。
そう思いながら、私はフリーザードラゴンが飛び去った鈍色の空を見上げた。
その後私たちはバツ村を出発し、王都に戻ってケラーさんにバツ村で聞いた話と、フリーザードラゴンに会った話をした。
「フリーザードラゴンと見つめ合ったとは…?フリーザードラゴンはなぜ舞い降りて、何もせずに去ったのか…?」
ケラーさんは首をかしげてたけど、正直な所、私にもフリーザードラゴンの気持ちは分からないので
「また会ったら、フリーザードラゴンに聞くにゃ!」
と言っといた。
ケラーさんはまた首をかしげてたけど、仕方ないじゃん、ホントにわからないんだから。
そして少し馬を休ませた後、ギルド長はベリー村まで私を送り届けてくれて、ベリー村のみんなが
「おかえり!」
「お疲れさん!」
と出迎えてくれた。
「アンナたち、昨日飛行艇に手を振ってくれたにゃ?」
と聞くと、三人娘は
「うん!モモちゃんかなって思ったから!」
「モモちゃんから見えたらいいなって思って、手を振ったの!」
「やっぱりモモちゃん、見えてたんだ!」
と笑って言った。
私は何だかうれしくなって
「見えてたにゃ!ただいまにゃ!」
と満面の笑顔で言った。
ただいま、ベリー村。
私のホーム。
フリーザードラゴン…美しすぎると思って下さい…ネコも大好きだけど、ドラゴンも大好きです…でも、描くのは無謀だったかもしれません…あ、明日から第8章開始です。←




