7-9 ネコ戦士、バツ村の状況を聞く
ギルド長が咳払いをして
「…ネコ戦士殿、はしょりすぎだ」
と私の後ろから言った。
ちょっと笑ってるっぽい。
「にゃあ…昨日王都の飛行艇に乗せてもらって、この村の上を飛んだのにゃ」
慌てて私がそう付け足すと
「そうだったのですか…」
と村長はほっとした顔になった。
「あの時、村の人たちみんな家の中に走って戻ったのが見えたにゃ。飛行艇をフリーザードラゴンだと思ったから家に入ったにゃ?」
と聞いてみると、村長はうなずいて
「そうです。またフリーザードラゴンが空を飛んでいるのかと…」
少し身震いをしながら言った。
なので私は
「フリーザードラゴンはこのあたりを良く飛ぶのにゃ?何か悪いことでもするにゃ?」
と村長に尋ねた。
村長は
「…何も」
と答えた。
え?何も???
そして村長は続けた。
「フリーザードラゴンは、この村に恵みをもたらしてくれるのです」
フリーザードラゴンが、バツ村に恵みをもたらしてる???
「それはどういうことにゃ?」
訳が分からなくなって私が聞くと、村長は
「バツ村はルーン王国の北にあり、この寒さのため作物はあまり育たないのです。この村の唯一の収入源となるのが、バツ池の氷なのです」
と言った。
氷…そういえば焼き肉屋台のジンさんちには氷室があったっけ…あれ、買った氷を入れてたんだ…
「池から氷を切り出して売ってるのにゃ?」
私が尋ねると、村長はうなずいた。
「その通りです。バツ池から切り出した氷を、池の周辺の草を干したもので包み、木箱に入れて王都に卸すことで、この村は生計を立てているのです」
…おかしい。
村長の話はおかしい。
「村に恵みをもたらしてくれてるフリーザードラゴンから救ってくれって、どういうことにゃ?フリーザードラゴンは、バツ村にとっては恵みの神様にゃろ?」
私の問いに対する村長の返事は
「今までは恵みをもたらすのみの存在でしたが、いつか気が変わって…この村を凍らせるかもしれません。なので、フリーザードラゴンは村にとって、ありがたくも恐ろしい存在なのです…」
…だった。
気まぐれ。
気まぐれで飛んでった火山から、ファイアドラゴンをベリー村まで追い詰めたフリーザードラゴン。
もしこの村の人が、フリーザードラゴンの気に入らないことをしたら…
雪と氷をまき散らすフリーザードラゴンがこの村の上空にずっといたり、最悪、その口から冷たいブレスでも吐き出したりしたら、この村はきっと…
「…ネコ戦士殿」
ギルド長の声で、私は思考の海から我に返った。
「…あるかもしれないにゃ。フリーザードラゴンの機嫌を損ねたら、バツ村がひどい目に遭う可能性は、おおいにあるのにゃ」
そう言うと、村長はうなずいた。
「…でもにゃあ…フリーザードラゴンのおかげで氷が売れて助かってるにゃろ?フリーザードラゴンがいなくなったら、どうするにゃ?」
と聞いてみると、
「この地は夏以外は寒く、海から山地に吹き付ける北風でバツ池は村よりさらに寒いのです。そのためフリーザードラゴンがいなくても、夏以外は氷ができるでしょう」
と村長は言った。
「夏の収入源がなくなってもやっていけるのにゃ?」
また私が聞くと、村長は
「生活は苦しくなるかもしれません…ですが、村が滅ぼされるよりはましです…!」
と辛そうに答えた。
命さえあれば…ということだ…
「…わかったにゃ」
私は村長に向かってうなずいた。
「今までは害はなくても、いつ気が変わるかわからないフリーザードラゴンにいなくなってほしいって、バツ村の人たちが思ってるなら、私たちが何とかするにゃ」
私の言葉に、バツ村の人たちは
「おお…!!」
と少し明るい表情になって声を上げた。
…でも…大昔に四人のネコ戦士たちに倒されたはずのフリーザードラゴンが、どうして今もいるの?
何度でもよみがえる?
それとも、フリーザードラゴンは子孫を遺してたってこと…?
私が考え込み始めたので、バツ村の人たちは戸惑っているようだった。
…考えたって仕方ない。
実際、フリーザードラゴンは今この世界に存在してるはずだから。
そして、フリーザードラゴンに対抗できるのは、多分、私しかいないはずだから。
「…頑張るにゃ!!」
と右前脚を上げると、バツ村の人たちはほっとした顔になって
「お願いします…!!」
と頭を下げた。
頑張るしかないんだ。
そう思って私は、上に上げた自分の右前脚を見上げた。
寒いです。めっちゃ寒いのでネコが離れません。膝の上だけあったかいのは、あったかいと言えるんでしょうか…




