23-8 ネコ戦士、雷竜の成長の速さに不安を抱く
「にゃっ?!サンちゃん、どうしたにゃ?!」
もしや雷を出したくて仕方なくなってるとか?!
私が慌てて家に戻ると、クロたちがサンちゃんに噛みついていた。
「にゃにゃっ、にゃにしてるにゃ?!」
えっ?!兄弟ゲンカ?!と焦っていると、クロが
「ニャー!!ニャニャ!!」
サンちゃんが皮から出られなくて困ってるって、そう言った。
「…脱皮するのにゃ?!」
そういえばトカゲとかヘビとかって、脱皮して大きくなるとか聞いたことが…
見ると、クロたちはサンちゃんの浮きかけた皮に噛みついて、一生懸命引っ張っていた。
「みんな、ありがとにゃ!!後は私にまかせてにゃ!!」
と言うと、クロたちはサンちゃんから離れて、ちょっとぜえぜえ言ってた。
サンちゃんに助けを求められて、必死に皮を剥がそうとしてくれてたんだろう。
私は、クロたちが噛んで引っ張って浮いた皮に右前脚の人さし指の爪を差し込んで、切り目を入れた。
そして両前脚で切り目の両側を持って、外側に向かって引っ張ったら、サンちゃんの皮はきれいに…セミの抜け殻みたいに剥けて、サンちゃんはほっとした様子で
”まま、みんな、ありがと”
と言って、翼を広げた。
脱皮前は頭からしっぽの先まで30センチぐらいで、翼は10センチぐらいしかなかったのに、脱皮後のサンちゃんは全長50センチ以上…翼は20センチ以上になった。
…成長、すごくない…?!
サンちゃんが生まれてからまだ二日しか経ってないのに?!
竜族ってみんな、こんなに成長速いの?!
そう思った私は、脱皮を終えたサンちゃんを連れて、フリーザードラゴンのところに向かった。
すると
”おお、脱皮したか”
とフリーザードラゴンがこともなげに言ったので、
「凍竜さんも二日ぐらいで脱皮したのにゃ?」
私はフリーザードラゴンに聞いてみた。
”うむ…もう遥か遠い昔のことゆえ明確には覚えておらぬが…確かに、我が神に祝福され、仔竜となった日より二度、日が昇った程度であったと思う”
フリーザードラゴンの答えにびっくりして
「凍竜さんは、今ぐらいの大きさになるのに何日ぐらいかかったのにゃ?」
と私がまた尋ねると、フリーザードラゴンは
”そちらも正確には覚えておらぬが…三十回は日が昇ったであろう頃であったか…”
と言った。
…ってことは、一ヶ月ぐらいで今の大きさになったってこと…?!
「…じゃあサンちゃんも、そのぐらいの速さで大きくなるのにゃ…?」
このままいけば、サンちゃんは一ヶ月も経たないうちにもっと大きくなって、ベリー村で住み続けることができなくなるってことなの?!
そんなにも早く、サンちゃんとお別れしなきゃならなくなるの?!
私は、愕然とする他なかった。
「…どうしてそんなに早く大きくなっちゃうのにゃ…」
私は、サンちゃんとの別れを想像すると、悲しくて淋しくて…下を向いてつぶやくように言った。
するとフリーザードラゴンが言った。
”竜族は、我らただ存在するのみの者の中においては、最も強く大きい。頂点と言っても過言ではない。だが、そのサンを見てわかったであろう?竜族であっても、生まれたばかりの頃は小さく弱い。先の雷竜が卵を遺したのがこの近辺であれば…我が見つけていなかったならば、卵から孵ったばかりのサンは、つらーおに食われていたかもしれぬ”
私は、顔を上げてフリーザードラゴンを見た。
「…ツラーオにすら、食べられちゃうかもしれないのにゃ…?!」
フリーザードラゴンはうなずいて、
”そうだ。今のサンでも恐らく、つらーおに見つかれば食らわれるであろう”
と言った。
「…だから、凍竜さんは私に卵を預けたのにゃ?この辺があったかいからってだけじゃなくて、生まれてくる子を守るためにも、私に卵を預けたのにゃ…?」
私の言葉に、フリーザードラゴンは
”それだけではない。そなたなら…狂うた我を殺さず見放さず、その身を賭して救ってくれたそなたならば、きっと卵から生まれる子を優しく導いてくれると思うたからだ。そしてその期待通りに、サンは育っている。サンもそなたと同じく、我らとヒト族との架け橋となってくれると、我は思う”
と言ったけど…
「でも…でもにゃ、私はまだまだサンちゃんと離れたくないのにゃ…!!」
私は声を上げて泣き叫んだ。
「モモちゃんっ!!」
カールさんが走ってきて、膝をついて私を抱きしめた。
「サンちゃんと離れたくないのは、俺だって、みんなだって同じだよ。サンちゃんだって、そうだ。だからサンちゃんは卵から出たばっかりの頃から、一生懸命飛ぼうとしてるんだろ?」
カールさんがそう言ったら、サンちゃんが地面からふわりと…私の目の高さまで浮き上がって
”サンちゃん、とうりゅうさんみたいにとぶ。そしたら、とうりゅうさんみたいに、ままがよんだらすぐとんでこられるって、ままもいったでしょ?”
丸い金色の目を細めて、サンちゃんは笑った。
まだ泣き続ける私の涙を、宙に浮かんだままサンちゃんがなめてくれていると、フリーザードラゴンがため息をついて
”モモよ。そなたらの命は短い。だが、我ら竜族は百歳の幾重にも渡り、生きるのだ。そなたら亡き後、サンは永い永い悠久の時を、ひとりで生きてゆかねばならぬのだ…そして、それは我も同じ。見送る者には見送る者の辛さ悲しみがあるのだと、そなたは知っているであろう?”
と、そう言った。
私は、父を亡くした時のこと、村長を亡くした時のことを思い出した。
「…わかってるにゃ…死んだひとを見送る側だって辛いんにゃって…わかってるにゃよ…でも、だからこそにゃ!だからこそ、少しでも長くサンちゃんと一緒にいたいのにゃ…!!一ヶ月なんて、短すぎるにゃ…!!」
私がまた泣き叫ぶと、サンちゃんが咳払いみたいなことをした。
そしてサンちゃんは、口を開いて、はっきりと言った。
「サンちゃん、ひとりにならない」
と、ヒトの言葉で。
1メートル以上の高さも軽々と飛び上がっていたうちのネコも、最近はそれほど高く飛べなくなってきました。老化というには早すぎないかと思うんですが…見た目は可愛いまま、ネコはあっという間に年を取るんですよね…それでもネコと暮らしたいと思うのが、ネコバカですw




